シューマンとゲーテ『ファウスト』とは? わかりやすく解説

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シューマンとゲーテ『ファウスト』

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/20 06:31 UTC 版)

ゲーテのファウストからの情景」の記事における「シューマンとゲーテ『ファウスト』」の解説

ゲーテの『ファウスト』は、ドイツ・ロマン派の熱狂動揺のすべてを体現する作品として、シューマン以前にもE.T.A.ホフマンウェーバーメンデルスゾーンらがこの作品の音楽化を試みている。しかし、この作品が持つ無限の多様性音楽化できたものはいなかった。 シューマンと『ファウスト』の出会いは、彼のギムナジウム時代にまでさかのぼる。シューマン1820年10歳のときから8年間、出身地ツヴィッカウギムナジウム学んだ書店経営していた父親似て読書好きだったシューマンは、ギムナジウムで「ドイツ文学サークル入りリーダーとなった。『ファウスト』はこのころにほとんど暗記するほど読みシューマン友人たちから「ファウスト」または「メフィスト」などと呼ばれたブリオンによると、シューマン幼年時代からゲーテ尊敬していたが、青年期傾倒したジャン・パウルへの親近感とは異なりゲーテに対して畏怖の念抱いていたという。シューマン21歳のときの日記には、「お前の中から警句的な、機知的なものを取り除け―それはお前の本性にはない。単純に自然に書けゲーテはつねに良いお手本だ。正確と簡潔に慣れよ表現連続性にも。意味をぴたりと射当てる言葉見出すまで、探しつづけること。」(1831年10月17日付)という記述がある。シューマン四女オイゲーニエの回想では、シューマンゲーテの詩から人生の師となるような銘を選び出して心に刻んでいた。 本作は、シューマンの「ライプツィヒ時代」に当たる1844年に『ファウスト第2部終末場面(この曲の第3部)を作曲して以来最後序曲完成まで10年がかりの構想となったこの間シューマンライプツィヒからドレスデンへ、ドレスデンからデュッセルドルフへと移り住んでおり、彼の主な創作期間がこの中入り込んでいる。オペラゲノフェーファ』、劇付随音楽マンフレッド』、交響曲第2番、同第3番ライン」などの創作背後で、『ファウスト作曲努力続けられ、深い影のように添っていた。前田は、シューマンにとってこの課題との対決は、自分芸術家として実存賭けた根源的な行為となったとする。1850年第2部の第2曲および第3曲に取り組み始めたが、そのもっとも悲劇的な場面でシューマン音楽と物語ただなか自己投影する方法を採り、シューマン自身ファウストなりきっていた。このため、「ファウストの死」の部分では亡霊つきまとわれ自分墓穴掘られるような錯覚襲われたという。 完成まで要した時間のために、1844年作曲され最後の場面1849年1850年作曲されその他の部分との間には不均衡目立っている。このこともあり、この作品一晩全曲上演することについて、シューマン自身が「ときには物珍しさから、あってもよいことだろうが」として困難であることを認めている。シューマンのこの言葉には、晩年至って世の音楽界背を向けたことへのアイロニー諦念聞き取ることができる。しかしそれだけでなく、音楽としての世界深さ内面性によって、この作品演奏会における効果超えたものとなっていることも事実であり、これは原作の『ファウスト』とも共通する点である。 前田は、「こうしてゲーテ世界文学大きさ深さとに、おそらく音楽芸術からしてもっとも真摯な高貴な魂の接近がなされ、かけがえのない実を結ぶことになった。」とする。さらに前田は、シューマン中後期作品理解、とくに大作への理解遅れており、判断評価適正な基盤はまだ整っていないとしつつ、「ドイツ19世紀芸術偉大な遺産ひとつとして、この作品真価時代超えた永遠貢献認められるのも遠いことではあるまい。」と述べている。

※この「シューマンとゲーテ『ファウスト』」の解説は、「ゲーテのファウストからの情景」の解説の一部です。
「シューマンとゲーテ『ファウスト』」を含む「ゲーテのファウストからの情景」の記事については、「ゲーテのファウストからの情景」の概要を参照ください。

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