クリスタルエクスプレス_トマム_&_サホロとは? わかりやすく解説

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クリスタルエクスプレス トマム & サホロ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/01/20 00:54 UTC 版)

国鉄キハ183系気動車 > クリスタルエクスプレス トマム & サホロ
クリスタルエクスプレス トマム & サホロ(1992年)

クリスタルエクスプレス トマム & サホロ[1] (Crystal Express TOMAMU & SAHORO) は、北海道旅客鉄道(JR北海道)が1989年平成元年)12月[2]から2019年令和元年)9月まで運用していた鉄道車両気動車)で、ジョイフルトレインと呼ばれる車両の一種である。機能的にはキハ183系に属し、5100番台を称する。

概要

JR北海道が団体臨時列車用として企画した「リゾート列車」のひとつで、石勝線方面への観光輸送を主目的として、自社の苗穂工場で設計、製作された[3]。同社保有の気動車ジョイフルトレインとしては5番目の編成である。愛称はきらめくパウダースノーの中を輝きながら走る様子をイメージしたものとした[4]

走行装置は「ニセコエクスプレス」と同様の仕様で、最高速度は 120 km/h である[3]。走行用機関(DMF13HZ・330 PS/2,000 rpm)をキハ183形に2基、キハ182形に走行用機関1基と電源用機関(DMF13HS-G・180 kVA)1基を搭載する。液体式変速機はDW14改。台車も同様のボルスタレス式で、動力台車は一軸駆動のDT53、付随台車はTR239である。ブレーキ装置は自動空気ブレーキであるが、運転席が2階に移ったことにより空気配管を省略するため、ブレーキハンドルは縦軸式の設定器となっている。

1990年度の通商産業省グッドデザイン商品(現・日本産業デザイン振興会グッドデザイン賞)に選定されている。

老朽化のため2019年に引退した。車両は解体されたが、札幌市東区苗穂にある北海道鉄道技術館において側面マークと3号車個室のドアのみ保存されている。

車両詳説

3両時代(1990年9月 新得駅付近)

「全面展望」を設計コンセプトの主軸とし、内装はハイデッカー構造や展望車が中心となっている。座席はバケットタイプのリクライニングシートで、シートピッチは960 mmである。

当初は3両編成で登場したが、翌1990年(平成2年)12月にダブルデッカー車両キサロハ182-5101を増結し、4両編成となった。

  • キハ182形 (5101)
    2号車として使用される中間車。定員は56人。
    車体断面はキハ183形よりさらに大きくとり、屋根肩部に天窓を設けるとともに妻部にも窓を設けた「ドームカー」として360度の展望を確保している。各席にシート液晶モニターが設置されていたが、2003年(平成15年)に撤去され、その後は各車車端部と展望室ならびにグリーン個室に大型液晶モニターが設置されている。
  • キサロハ182形 (5101)
    3号車として使用される2階建て車両で、1990年12月に増備された。気動車列車では日本初の2階建て車両である。台車間に1階部分を落とし込む構造で、走行用機関を搭載しない付随車となっている。
    台車は廃車発生品の電車TR69D形を装着する。これはJR北海道が日本国有鉄道(国鉄)から継承しながら、一度も営業運転に就かずに廃車になったサハネ581-15から流用したものであり、以下の改造が実施された[6]
  • 冬期での走行中に車体下部に氷雪が当たらないように、車端側に雪かき装置を装備。レール面上から145 mmの位置に設置しており、台車枠に溶接で取り付けられているが、その際にひずみや熱が台車枠に加わるため、その処理技術を持つ車両製造メーカーの日立製作所委託契約して取り付けが実施された。
  • ブレーキシリンダとブレーキテコを785系と同じタイプに取替え。
  • ブレーキ管装置と空気ばねの取替え。
  • 踏面清掃装置の取り付けと同配管の設置、781系を参考にしている。
  • 車軸速度発電機の取り付け。
  • その他の付属機器の改造
2階客席は4人用のボックスシート(普通席)を7組配置し、1階には4人用のグリーン個室を3室設置する。シートはソファタイプである。2階部分と平屋部分車端部の2か所にラウンジを設け、平屋部に設けられたラウンジには、妻面にかかる曲面ガラスを設けて斜め方向の展望を確保している。
なお、2010年時点ではグリーン個室は普通個室扱いとなっており、山陽新幹線700系E編成「ひかりレールスター」で運行される列車と同様な利用制度になっているが、形式はキサロハのままで個室はフルムーン夫婦グリーンパスでも利用可能である。
登場当時の車内にはオーディオサービス・TVモニター・大型テーブル・デラックスソファーなどを備えていた。

車内の設備

登場当時、車内には荷物室、スキー室、インフォメーションボード、マルチチャンネルAV(25インチ液晶モニター)などの設備を備えていた。

運用の変遷

運行開始時より季節ごとの臨時列車に使用されていた。臨時特急「トマムサホロスキーエクスプレス」(札幌 - 新得間)の運用を主とし、2000年代以降は「フラノラベンダーエクスプレス」(札幌 - 富良野間)、その他多客期の臨時特急「とかち」(札幌 - 帯広間)などにも用いられた。2013年(平成25年)冬から2014年(平成26年)7月末まで、エンジントラブルにより「北斗」のキハ183系が長期に運休となっていたため代替車両として運転された。

しかし2019年時点で運用開始から30年が経過し車両の老朽化が目立ってきたことから[7]、同年9月29日の札幌駅 - 富良野駅函館本線根室本線経由)間の往復運行をもって引退[2][7]。同年11月30日付で廃車された[8]。翌2020年5月からは苗穂工場と五稜郭車両所で車両の解体が開始された[9]

商標

クリスタルエクスプレス」は、北海道旅客鉄道が商標として登録している[10]

登録項目等 内容等
商標 クリスタルエクスプレス
称呼 クリスタルエクスプレス
出願番号 商願平04-270864
出願日 1992年(平成4年)9月29日
登録番号 第3021049号
登録日 1995年(平成7年)1月31日
権利者 北海道旅客鉄道株式会社
役務等区分 39類(旅客車による輸送)

脚注

  1. ^ 弘済出版社鉄道ダイヤ情報」1990年5月号 No.73 p.76
  2. ^ a b “リゾート列車・クリスタルエクスプレスがラストラン JR北海道”. 産経ニュース. 産業経済新聞社. (2019年9月29日). https://www.sankei.com/life/news/190929/lif1909290043-n1.html 2019年9月30日閲覧。 
  3. ^ a b 鉄道ダイヤ情報』第73号、弘済出版社、1990年5月、78頁。 
  4. ^ リゾート列車第五弾の愛称決定 - 鉄道ジャーナル1990年1月号 124頁
  5. ^ 鉄道ジャーナル』第526号、2010年8月、147頁。 
  6. ^ 鉄道ファン』第666号、交友社、2016年10月、43頁。 
  7. ^ a b “クリスタルエクスプレスが最終運行 多くのファン見送る”. どうしん電子版. 北海道新聞社. (2019年9月29日). オリジナルの2019年12月14日時点におけるアーカイブ。. https://archive.is/ebsrf 2020年11月7日閲覧。 
  8. ^ 「JR旅客会社の車両配置表」『鉄道ファン』、交友社、2020年7月。 
  9. ^ “JR北海道 クリスタルエクスプレス 一部解体が始まる”. 鉄道チャンネル. 株式会社エキスプレス. (2020年5月19日). https://tetsudo-ch.com/10365277.html 2020年5月19日閲覧。 
  10. ^ 商標「クリスタルエクスプレス」の詳細情報”. Toreru商標検索. 株式会社Toreru. 2022年8月2日閲覧。

参考文献

  • 交友社鉄道ファン
    • 柿沼博彦・中村和弘「新車ガイド・JR北海道リゾートトレイン Part5」1990年2月号 No.346 pp.10 - 14
  • 電気車研究会鉄道ピクトリアル
    • 佐藤 巌 「キサロハ182形 (5101) クリスタルエクスプレス増備車」1991年10月号臨時増刊『新車年鑑』 No.550 p.26

関連項目

外部リンク


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