ガンバレル・シークエンス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/09 18:58 UTC 版)
「モーリス・ビンダー」の記事における「ガンバレル・シークエンス」の解説
映画『007シリーズ』において、よく知られる冒頭の映像。スクリーンの中を歩いて横切るジェームズ・ボンドが、こちらに向かって銃を撃つと、上方から血が流れ落ちる。ライフルの刻まれたガンバレル(銃身)の中から写した形の映像になっているため、こう呼ばれる。 戯れに銃口の中を覗き込んでみたビンダーが、銃身の内側の造形に感心して使ってみたといわれる。発表の当時から現在に至るまで、初めてその映像を見た者は「目のシンボルか?」「カメラの絞りではないか?」と不思議がる印象的なモチーフである。本来は『007 ドクター・ノオ』のオープニングの冒頭部分に過ぎなかったが、第2作として『007 ロシアより愛をこめて』が製作された際、編集のピーター・ハントの発案で使用されることになったといわれる。以後、第20作『007 ダイ・アナザー・デイ』まで使用され、007シリーズの冒頭を飾る映像として広く親しまれ、多くのパロディを生んでいる。当のビンダーは、一回きりの作品と思って制作費のみを手にしたが、「ライセンス制にしておけば、シリーズごとに収入が入ったのに」と、本気で落胆したと言われる。 ボブ・シモンズ版…長らくジェームズ・ボンドのスタントを担当したシモンズが初代ガンバレルのボンドである。シモンズの構えは軽くジャンプして正面を向き、着地と同時に発砲する。『ドクター・ノオ』ではオープニングの冒頭にあたり、耳慣れた「ジェームズ・ボンドのテーマ」は発砲後に流れ始める。ドットが左から右に流れる間はピコピコという電子音、ガンバレルが開いてからボンドのテーマがかかるまではグロッケンシュピールの単音をバックにしている。ドットは途中で停止し、左にハリー・サルツマン、右にアルバート・R・ブロッコリのクレジットを当てる。発砲して銃声が鳴った後に右下へ縮小した銃口の周囲には無数のドットが集まり、タイトルの「Dr.NO」に変化するが、銃口は「O」となる。『007 ロシアより愛をこめて』と『007 ゴールドフィンガー』でも使用されたが、「ボンドのテーマ」はドットから流れている。サルツマン&ブロッコリのクレジットはカットされ、ドットは定位置まで進む。すぐにプレタイトル・シークエンスに進むため、銃口跡は右下に縮小後、消滅する。 ショーン・コネリー版…『007 サンダーボール作戦』でボンド役のコネリーに交代し、以後コネリーが出演した3作で使用した。コネリーの構えは前傾して脇の高さに構えた馴染み深いポーズ。ドットの内側にアバン・タイトルを配し、ワイプしてアバン・タイトルに入る現在のスタイルに変化した。『サンダーボール作戦』ではコネリーはカラーで映っていたが、『007は二度死ぬ』以降はモノクロになっている。復帰作の『007 ダイヤモンドは永遠に』では、ライフル面に若干の鏡面処理が施されている。 ジョージ・レーゼンビー版…『女王陛下の007』のみに出演したレーゼンビーによる唯一のガンバレル。『ドクター・ノオ』と同じく、冒頭のドット部分でサルツマンandブロッコリのクレジットが入る。レーゼンビーの構えは片膝を突いたもの。『ダイヤモンドは永遠に』ほどではないが鏡面処理されている。また、このバージョンのみ、血が画面下へ流れきる前に銃口がフェード・アウトする、血でボンドが消えてしまうという違いがある。 ロジャー・ムーア・ビスタ版…ビスタ・サイズ作品の『死ぬのは奴らだ』と『黄金銃を持つ男』で使用された。ムーアの構えは左手を右腕に添えるもの。歴代ボンドでは唯一の両手撃ち。銃口の振れ幅が左右で大きく異なっている。従来のガンバレルは開いてからボンドを追っていたが、ムーア版では開きながらボンドを追う。このバージョンからボンドが帽子をかぶらなくなった。 ロジャー・ムーア・ワイドスクリーン版…ワイドスクリーン作品の私を愛したスパイ以降の作品で使用された。構えは左手を右手に添えたもの。このバージョンからボンドがタキシードを着るようになり、ブロスナン版まで一貫していた。また「ジェームズ・ボンドのテーマ」も、お馴染みのジャズ・アレンジのみならずロックやクラシックなど作品によって様々なアレンジが使用された。 ティモシー・ダルトン版…『007 リビング・デイライツ』と『007 消されたライセンス』で使用。ダルトンの構えは抜き身の状態から中腰で正面を向いて撃つスタイル。タキシードはムーア版と異なり、カマーバンドを着けている。また、未使用に終わったが初代のボブ・シモンズ版を意識したジャンプをして正面を撃つバージョンも存在する。 ピアース・ブロスナン版…『007 ゴールデンアイ』以後で使用。顔の真正面に銃を構えているスタイル。ライフル面に鏡面処理が施され、銃身の動きに合わせて光の模様が変化しているが、最終的にはおなじみの形になるように計算された物になっている。また、ボンドを追い始める段階では銃口は大きく、中央に寄るにつれて縮小されている。シリーズ40周年記念兼通算20作記念というダブルアニバーサリー作品となった『007 ダイ・アナザー・デイ』では、ボンドの撃った弾丸がガンバレル内に飛び込んでくるさまがCGで加筆されている。また、『007 ゴールデンアイ』から『007 ワールド・イズ・ノット・イナフ』までは発砲後における「ボンドのテーマ」の使用ヶ所が、長年親しまれたギター・リフのメロディーではなくなり、そのうち『007 トゥモロー・ネバー・ダイ』からの2作は曲のラスト部分のメロディーになっている。『ダイ・アナザー・デイ』では再びギター・リフの部分が使用されている。 ダニエル・クレイグ版…ここからガンバレル・シークエンスのお決まりがかなり払拭される。初登場の『007 カジノ・ロワイヤル』ではオープニング前、ボンドが殺害したと思えた敵が起き上がり、床に転がっていた銃でボンドを撃とうとした瞬間、ボンドが振り返り持っていた銃を発砲。その瞬間がガンバレル・シークエンスの構図になり、そのままオープニングに突入する。『007 慰めの報酬』では本来のスタイルのガンバレル・シークエンスが登場するようになったが、オープニングではなく最後に映された。またビジュアルが大幅に変更されており、歩く速さも歴代最速だった。次の『007 スカイフォール』でも最後に映されたが、歩く速度は落ちている。『007 スペクター』ではガンバレルは冒頭に戻り、ライフリングの鏡面処理がなくなり、ダルトン版以前の往年のスタイルに近い物になっている。『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』でも引き続き冒頭で流されたが、ビジュアルが変更され再び鏡面処理がされるようになり、血が流れる描写がなく銃口が移動せずにクロスフェードでそのまま本編に突入する。
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