オーバーテイク促進策
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/10 04:38 UTC 版)
「2009年のF1世界選手権」の記事における「オーバーテイク促進策」の解説
近年のF1マシンはエアロダイナミクスの追求がシビアになった結果、車両後方に発生する乱流によって前走車に接近できず、オーバーテイクを仕掛けることが難しくなった。順位変動によってレースを活性化するため、FIAはチャーリー・ホワイティングとテクニカルディレクター数名からなる作業部会オーバーテイク・ワーキング・グループ (OWG) を編成。風洞実験の結果から ダウンフォースを50%削減し、相対的にサスペンションとタイヤによるメカニカルグリップを増加させる。 後方乱流の影響を受けにくくするため空力的な感度を下げ、また、後方乱流を発生するエアロパーツを規制する。 オーバーテイクの機会を増すアシスト装置の搭載を認める。 という趣旨の新レギュレーションを導入した。 フロントウィングウィングの効率を上げるため、幅を1,400mmから車体幅と同じ1,800mmまで広げる。また、翼端部分の最低地上高を150mmから75mmへと引き下げる。中央400mm部分は後方乱流の影響を受けないよう、ウイング形状ではなく平らな板とする。 また、フラップを可変式とし、ドライバーのコクピットからの操作で角度を1周あたり2回まで6度の範囲内で調整できる。 リアウィング後方乱流を発生しないよう幅を1,000mmから750mmへと25%短縮し、高さは150mm引き上げて950mmまでとする。2008年までに比べて縦長になった印象を受ける。 エアロパーツ前車軸線より450mm前から後車軸線まではウィングの装着を禁止。フロントタイヤ周辺はボディワーク禁止エリアとする。バージボード、ポッドフィン、ホーンウィング、チムニーダクトといった細かな整流パーツは撤廃される。ただし、エンジンカバーのシャークフィンは許可される。 サイドポンツーンにルーバーを刻むことは禁止。エキゾーストパイプは上方から見えてはならない。 ディフューザーディフューザーの能力を削減するため形状を単純化する。開始点は後輪前端から後車軸線へ後退。後端部の高さは125mmから175mmへと変更する。 スリックタイヤ接地面積を増やすため、溝付きのグルーブドタイヤから溝無しのスリックタイヤに変更される。スリックタイヤの使用は1997年以来となる。供給メーカーのブリヂストンは前後のバランスを取るためフロントの幅を狭めることを提案したが、チーム側の要請により2008年のグルーブドタイヤと同サイズにした。その結果、フロントのグリップが強く、オーバーステア傾向が生じた。 また、観客とマスコミに対する透明性を高めるため、ウェットタイヤ(浅溝)はインターミディエイト、エクストリーム・ウェザータイヤ(深溝)はウェットと改名された。 2008年には、タイヤスペックを容易に見分けられるように、各グランプリでのソフト側のドライタイヤの内側から2本目の溝と、エクストリーム・ウェザータイヤの中心の溝には白線が1本引かれていた。2009年も同様にソフト側とウェットタイヤに線が引かれるが、色が白ではなく緑になった。スリックタイヤの場合、タイヤ接地面の縁に線が引かれることとなる。ウェットタイヤの場合は従来と同様にタイヤ中心の溝に引かれる。 運動エネルギー回生システム (Kinetic Energy Recovery System,KERS)一般車のハイブリッドカーや電気自動車で使用されている回生ブレーキの搭載が選択式で認められる(非搭載でも可)。回生・放出は後輪のみ。1周あたり400kJまで放出することができ、最大60kW(約80馬力)では1周あたり約6.7秒使用可能。ラップタイムでは0.3〜0.5秒の短縮につながり、オーバーテイク時のエクストラパワーとして利用できる。
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