グルーブドタイヤ
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グルーブドタイヤ (grooved tyre)とは、1998年から2008年までフォーミュラ1 (F1) で用いられていた、円周方向に4本[1]の平行な溝を持つタイヤ。grooveとは英語で「溝を掘る」の意味。
1997年、グッドイヤー1社だったF1のタイヤ供給にブリヂストンが参入すると、「タイヤ戦争」と形容される開発競争によりタイヤ性能は著しく向上し、ラップタイムも短縮された[2][3][4]。国際自動車連盟 (FIA) は車両速度を抑制し安全性を向上させるために1998年よりスリックタイヤに代わりグルーブドタイヤを導入した[2][3][4]。グルーブドタイヤは、トレッドの円周方向に溝を配することで接地面積を減らし、グリップ力を低減してコーナリング速度を低下させる[3][2][4]。溝は深さ2.5 mm、幅はトレッド表面で14 mm、50 mmの間隔を空けて前輪に3本、後輪に4本設けられた[5]。翌1999年にはなおも向上する車両性能に対応して前輪の溝を1本増やした[2][4]。2009年、性能抑制を空力面の大幅な制限により行い、代わってオーバーテイクを容易にする目的でスリックタイヤは復活した[4]。
スリック | グルーブド | |
---|---|---|
ブレーキング性能 | 100% | 90% |
コーナリングフォース | 80% | |
摩耗ライフ | 50% | |
(浜島裕英 2000, p. 57) |
グルーブドタイヤの溝は複数の面でタイヤ性能を低下させた。
- 接地面積減少によりグリップ力が低下した[6][7][8]。
- トレッドの見かけ剛性の低下により、アンダーステアの発生や、コーナリング中の挙動、操縦安定性に悪影響を及ぼした[6][7][8]。
- コーナリング中の接地圧分布が悪化し、溝のエッジ部分の負担が非常に大きくなり急速に摩耗する「メクレ摩耗」により、摩耗寿命が大幅に悪化した[9][10][8]。
グルーブドタイヤの導入によってラップタイムをおよそ3秒低下させたと見込まれている[8]。
脚注
参考文献
- ブリヂストン 編「2.3 レース用タイヤ」『自動車用タイヤの基礎と実際』山海堂、2006年。ISBN 9784381088567。
- 浜島裕英「レーシングタイヤの要求特性」『自動車技術』第54巻第2号、自動車技術会、2000年、53-57頁。
- 浜島裕英「モータースポーツ用タイヤの開発」『自動車技術』第63巻第10号、自動車技術会、2009年、73-78頁。
外部リンク
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グルーブドタイヤ
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「レーシングタイヤ」の記事における「グルーブドタイヤ」の解説
規則で定められている最低限の溝を表面に配した、乾燥舗装路面で使用するためのタイヤ。この溝は一般の自動車用タイヤのように排水を目的としたものではなく、タイヤの接地面積を減らしグリップ力を低下させてF1マシンの速度を低下させる目的でつけられている。F1の速度上昇に危険を感じたFIAによるスピード抑制策の一環として、1998年からレギュレーションでの規定により使用された。2009年からは再びスリックタイヤに変更されている。
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