ウニ漁と資源管理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/04 05:33 UTC 版)
日本では、漁師が小舟に乗り、覗き眼鏡で海底を視認すると同時に櫂を操り(現在は操船のしやすい小型の船外機もある)、ウニを探す。ウニを見付けると玉網(タモ)と呼ばれる柄付きの網、あるいはウニ漁用の鈎で捕獲するが、水深に合わせ柄を接ぎ足さねばならない。単純にして非常に熟練を要する漁法である。国内生産量のうち約半分を占める北海道では、こうした漁が日本海側では5月〜8月、オホーツク海方面では羅臼が2月〜5月、雄武では4月〜6月、枝幸では5月〜7月、襟裳では1月〜3月に行われる。礼文島のウニ類の水揚げ量は北海道全体の約20%近くを占めており、礼文島の水揚げが市場価格を大きく左右する。北海道では、漁は生殖巣の身の発育状況に合わせて行うとともに、産卵の保護のために「北海道海面漁業調整規則」により禁漁期間を定め資源管理を行われる。また、近年では水産試験場や水産指導所の地道な調査によりウニの年齢をはじめ稚ウニ、海藻などの実態が把握されている他、漁師の記した操業日誌などにより漁業実態も掌握されるようになった。こうしたデータより資源管理手法ができ上がりつつある。一方、納沙布岬近海では放流していたウニが大量にラッコに食べられ、深刻かつ壊滅的な被害を受ける例も報告されている。 ウニは漁獲しやすいため、資源の減少率が大きく、1漁期に70〜90%にも達することがある。このため、上記の禁漁期間の設定のほか、漁獲サイズの規制、漁場や漁獲量の規制・管理、また密漁対策の他、人工的な種苗生産と放流、移殖、ならびに漁場造成、汚染防止、害敵駆除といった総合的な対策がとられている。ウニの養殖は、親ウニから精子と卵子をピンセットで取り出し、二つを受精させる。精子が多すぎても少なすぎても成功しない難しい作業である。精子が多すぎると異常卵が増え、少なすぎると受精率が低下する。受精した卵子は約20時間をかけ浮遊幼生となり、48時間後(2日後)に飼育槽に移される。最終的に海に放流されるまで極めて厳重に、近代的な環境のもとで24時間管理される。 一方で磯焼けを起こすほどウニが増加し、藻場を回復するためにウニを除去することもある。増えすぎたウニは餌不足のため生殖巣が発達せず、そのままで食用に出荷することはできない。このような除去回収されたウニに野菜残渣などを与えて出荷可能な状態まで肥育する研究が行われており、キャベツやブロッコリーの葉などを飼料としてムラサキウニを肥育できることが分かっている。キャベツで肥育したウニは甘味が強くなるというが、コストが嵩み商業ベースにはなっていない。イカナゴを飼料として肥育した例もあるが、この場合は苦みを帯びるとされる。 「キャベツウニ」も参照 2021年9月以降、北海道の太平洋沿岸では赤潮が発生。ウニの大量死が発生し、稚ウニを海域に「地まき」して育てる漁業者に大きな被害が出た。数年かけて育てる漁のため、被害の回復には4年の時間と費用がかかる見込み。 日本のほか、最近では中国でも渤海湾周辺の遼寧省、山東省と南シナ海の広東省でウニの養殖に力を入れており、2010年の養殖出荷量は6,169トンであった。
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