「風の万里 黎明の空」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 08:32 UTC 版)
陽子が景王となって1年。朝廷は冢宰の靖共ら長年の官吏に牛耳られ、反靖共派の官吏も陽子の味方ではなく、陽子は玉座にありながら官吏の顔色をうかがう自らの姿に苦悩を感じていた。特に皆がいつも自分に対して平伏する事については、自分が通りかかる度に相手の仕事の手が止まる不合理さに悩み、相手の顔が見えない事に不信と恐怖を感じていた。そんな中、太師に謀反の疑いが掛かり、陽子は靖共の言うがまま、黒幕として名が挙がった麦州侯・浩瀚らを処罰する。だがそれに加えて、監督責任を怠ったとして靖共を太宰に降格することで、靖共派・反靖共派から共に権力を削ぐ。そして政治の実権を握らせるべきではないとされる景麒に、「自分よりこの国のことが分かっているから」と次の冢宰が決まるまでの間として実権を握らせる。 陽子はこの世界の理も国情も知らない自分に憤りを感じ、自ら市井に降りることを決意する。景麒の勧めにより固継という村の里家に逗留し、遠甫という老人の教授や蘭玉・桂桂の姉弟との触れ合いの中で、陽子は蓬莱とは常識から異なるこの地の風習を学んでいく。和州で暴政が行われているという噂を聞き、実情を確かめに和州を訪れた陽子は、重税が課され疲弊し、にも拘らず声を上げることもできない民の姿を目の当たりにする。固継に戻ると、不在の間に里家が何者かに襲われ、蘭玉が殺害され桂桂も重傷を負い、遠甫は拉致されていた。遠甫の足跡を追ううち、和州止水郷の郷長・昇紘を討とうとしている侠客の虎嘯らと出会い、これが和州の乱へと繋がっていく。 大木鈴は陽子の100年ほど前に蓬莱から流されてきた海客である。長く才国の飛仙・梨耀から執拗な虐めを受け続けていたが、決死の覚悟で采王に申し立て自由の身となった。女性・海客でありながら王となった景王に興味を持ち、慶国を目指す道中で出会った清秀という少年から、鈴は自分を憐れむばかりで周囲を見ていなかったと指摘される。妖魔から受けた怪我が元で衰弱していく清秀を支えて慶国にたどり着くが、清秀は和州止水郷で郷長・昇紘の馬車に轢殺されてしまう。激高した鈴は、昇紘を庇う者の最上位にある景王を暗殺しようと、才国の遣いを装い王宮に入るが、景王不在の為その機会さえなく王宮を去る。虎嘯らと出会い宥められた鈴は、打倒昇紘の郎党に加わる。 祥瓊は先の峯王の公主であったが、謀反によりその地位を失い、素性を伏せて里家に預けられていた。里家での貧しい暮らしや、預け替えられた恭国での屈辱的な仕打ちが耐えられず、自分と同じ年頃で王になった景王の噂を聞いて出奔する。景王を妬み、逆恨みし、簒奪してやろうと慶国を目指していたが、道中で楽俊と出会ったことで公主としての務めを果たしていなかった自分に思い至り、景王の為人を聞いて改めて興味を持つ。辿り着いた慶国和州の州都・明郭で芳国のような残虐な刑罰が行われているのに行き会い、思わず投石して追われる身になった祥瓊は、和州侯・呀峰に叛旗を翻そうとしていた侠客の桓魋に助けられ、和州の乱に身を投じる。 陽子・虎嘯・鈴らは打倒昇紘を掲げ郷城へと乗り込む。郷城の制圧と昇紘の捕縛には成功するが、捕らわれていた筈の遠甫は明郭に移されており、しかも呀峰は昇紘諸共に反民を屠るため州師を派遣してくる。州師相手では圧倒的に勢力の劣る虎嘯らであったが、桓魋・祥瓊らの加勢により戦況は一転し、桓魋の仲間による明郭の乱が成功するまで州師を引き付けることになる。しかし、続いて派遣されたのは王直属の禁軍であった。呀峰もまた靖共に庇われていたのである。陽子は鈴と祥瓊の話を聞き、王としての責任を確信すると共に、王として行動する決意を固める。禁軍を目の当たりにして動揺する人々に対し、鈴と祥瓊は自分の素性を明かして、景王を信じるよう説得する。陽子は景麒の背に跨って禁軍の前に姿を現し、反乱が王の意思である事を知らしめ、将軍に遠甫の救助と呀峰・靖共の逮捕を命じる。 王宮に戻った陽子は、遠甫を三公の筆頭・太師に、桓魋を禁軍左将軍に、桓魋の主だった元麦州侯・浩瀚を冢宰に任じ、靖共派だろうが反靖共派だろうが関係なく個人だけをみる、と大規模な人事改革を宣言。そして初勅として平時の伏礼を廃し、民のすべてに己という領土を治める王になって欲しいと告げる。
※この「「風の万里 黎明の空」」の解説は、「十二国記」の解説の一部です。
「「風の万里 黎明の空」」を含む「十二国記」の記事については、「十二国記」の概要を参照ください。
- 「風の万里 黎明の空」のページへのリンク