「風の海 迷宮の岸」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 08:32 UTC 版)
蓬山の捨身木に戴極国の麒麟の卵果が実り、母親代わりとなる女怪が生まれ、蓬山は麒麟の誕生を待っていた。しかし、突如襲来した蝕に巻き込まれ、麒麟の卵果は流され行方不明になってしまった。 それから10年後、泰麒は蓬莱で発見され、無事に連れ戻される。普通の人間として育った泰麒は、身の回りの世話をする女仙から「麒麟は人ではなく獣であり、獣の姿に転変する」「麒麟は天啓を受けて自らの主である王を選定する」と知らされるが、何の力も振るうことができず、麒麟としての自覚も持てなかった。女仙の長・碧霞玄君は景麒を招き、麒麟の何たるかを泰麒へ教えさせるが、泰麒は生まれたときから人間の姿で今も転変できない自分は「麒麟の出来そこない」ではないかと思い悩む。泰麒を泣かせたことで女仙から責められた景麒は、その後泰麒に麒麟の能力や役割を伝授し、妖魔の折伏を実践してみせるが、結局泰麒には折伏することができなかった。しかも自然に出来るようになる転変の仕方については、教えることもできなかった。 慕っていた景麒が慶国に戻り、泰麒は麒麟としての自覚を持てないままであったが、戴国に麒麟旗が掲げられ、王になることを望む者(昇山者)たちが泰麒に会うために続々と蓬山に集って来る。王を選ぶ天啓がどんなものか判らないまま、昇山者と対面する泰麒は、騎獣をきっかけとして承州師将軍の李斎と知り合う。また、昇山者同士の喧嘩で出会った禁軍左軍将軍の驍宗には、恐怖に似たものを感じる。泰麒はその後も度々李斎の下を訪れ、驍宗とも会話を交わすようになり、彼らが蓬山を去る間際には一緒に騎獣狩りに行くほどの仲になる。女仙の反対を押し切って同行した狩りの最中、李斎が見つけた洞窟に入った3人は、内部に潜んでいた伝説級の妖魔・饕餮に襲われ、泰麒はひとりで対峙することになる。傷ついた驍宗と李斎を守るという強い思いから、泰麒は初めて折伏に成功し、饕餮を使令に下すという前例のないことをやってのける。 驍宗が蓬山を去る日が訪れる。驍宗から王になれなかったら禁軍を辞め黄海に入ると聞き、女仙からは蓬山に昇山できるのは一生に一度だけと聞き、二度と驍宗に会えないと思った泰麒は、離れたくないと思う感情が抑えきれずに走り出し、いつの間にか初めて麒麟の姿に転じていた。驍宗を王に選び誓約した泰麒だったが、「天啓が無いのに偽者の王を選んでしまった」と思い悩み後悔し続ける。女仙たちから驍宗が王として扱われることに過ちを感じ、天勅を受ける儀式で罰を受けると思っていたが何事も無く余計に不安になり、戴国へ下って王と宰輔の座に就くと国そのものが偽りでできているように思えた。泰麒の様子を伺いに載国の王宮を訪ねた景麒と再会し、不安げな様子を指摘された泰麒は、「偽者の王を選んでしまった」事を打ち明ける。 泰王即位の慶賀のため、驍宗と誼のある延王が戴国へやってくる。延王と面会した泰麒は、延麒と景麒もいる前で、延王に対し叩頭礼をするよう驍宗から命じられる。言われるまま叩頭しようとするが、地に手をついたところでそれ以上体が動かず、強引に押し付けられてすら叩頭することはできなかった。「麒麟は自らの主以外に叩頭できない」という事を身を以って知った泰麒は、自分が驍宗に感じた畏怖が王を示す天啓であったことを理解する。
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