昇山
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/27 01:31 UTC 版)
昇山(しょうざん)とは、王に選定されることを望む人々が、自力で蓬山に登ってその国の麒麟に面会することである。昇山によって麒麟に面会できるのはその国に籍がある者に限られ、一生に一度しか昇山できない。選定の機会は主人に付き添う従者であっても等しく与えられる。昇山者の中には、端から玉座は諦めて、これを機会に麒麟や王と誼を結ぼうとする者もいる。 前王と共に麒麟が亡くなった場合、次の麒麟が生まれ王の選定が可能になるまでの約5〜10年の歳月を待たなければならない。麒麟の準備が整うと生国の里祠に麒麟旗(黄旗)が掲げられ、王の選定(昇山)の開始を告げる。麒麟旗を揚げる命令は蓬山から麒麟の生国の全ての祠廟に同時に行われるが、実際に旗が揚げられるのは各祠廟によって数日のずれがある。いち早く昇山を試みようとする者は、時期が近付くと麒麟旗が揚る前にそれぞれ年に決められた日のみ開く四令門を巡り始める。 昇山するには「四令門」のいずれかを通って蓬山に赴く。門と蓬山の間には黄海が広がり、これを横断する約半月から一月の間、生死を賭けた旅程を経ることになる。麒麟と面会した結果、王気を認められなければ「至日(中日)までご無事で」と麒麟に言われるのが慣例であるが、至日(しじつ)とは夏至および冬至、中日(ちゅうじつ)とは彼岸のちょうど中日(春分および秋分)であり、次に「門」に開く日を指す。王であれば帰路は雲海の上を安全に帰ることになるので、王ではない=危険の伴う黄海を戻ることを暗に伝えていることになる。 一般的に昇山者は、初期ほど自負心の強い軍人や官が多く、後になるほど周囲の者に押されて昇山を決意した者や商人が増える傾向にある。特に最初の昇山者の中から王が出たときは、その王を「疾風のように王になった者」の意味で瓢風(ひょうふう)の王と呼ぶ。瓢風の王は昇山前から自他共に「王に相応しい」と評された者が多く、傑物であり名君になる可能性が高いとされる一方で、早期に斃れることも多いとされ、「瓢風の王は朝を終えず」という故事も存在する。瓢風の王の例としては、驍宗(泰王)や砥尚(先代の采王)が挙げられる。 王となるべき人物が昇山者の中にいた場合、妖魔の襲撃が少なくなるなど、通常よりも格段に困難が軽減される。剛氏はその人物を鵬もしくは鵬雛と呼び、その旅を「鵬翼に乗る」と表現するが、その人物が途中で死ぬと、それまでの幸運のツケが一気に回ってくる。 籍を失う、卵果が蝕で流される、昇山する意欲がない等の理由により、必ずしも王となる人物が昇山するとは限らないため、麒麟が自ら自国や他国、蓬莱・崑崙に赴き王を探す場合もある。現在の十二国の王のうち昇山して麒麟に選ばれたしたことが作中で描かれているのは、供王・珠晶と泰王・驍宗の2人である。延王・尚隆と景王・赤子は麒麟が蓬莱に赴いており、宗王・櫨先新は経営する旅館に宗麟が訪れている。利広によると劉王・助露峰も昇山はしていない。
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