天綱・地綱
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/27 01:31 UTC 版)
天綱(てんこう) 天帝が定めたとされる、王を含めた十二国世界全体が守らなければならない法のこと。太綱(たいこう)や施予綱(せよこう)とも呼ばれる。人を贄にすることや人身売買も天綱で禁じられている。その内容は創世神話とともに、蓬山において王が登極するときに王と麒麟の頭の中にすり込まれるものであり、「東の海神 西の滄海」には"王や宰輔が心得ておくべきことが「太綱の天の巻」に書いてある"、また「風の万里 黎明の空」には"井田法のことが「太綱の地の巻」に書いてある"といった記述もある。天綱の第一は「天下は仁道をもって治めなければならないこと」であるとされる。この天綱に背いた場合には、罰則が王や麒麟に下されることになるとされる。 天綱の記述は極めて簡潔であり、実際の事象が天綱に反するか否かの判断が難しい場合もあり、その際は玉葉が相談窓口になる。たとえば、『月の影 影の海』で偽王を倒すため正当な景王である陽子を立てて雁国の王師が慶に攻め入る際、この行為が覿面の罪に触れないことを六太は知っていたが、これは以前に似たような出来事があった時に、玉葉に確認をとってあった故(「黄昏の岸 暁の天」で六太は「陽子が初めてではない」とコメントしている)である。 作中にはこの世界の決まり事のいくつかについて「これは天の意思である」といった表現をとっていることがある。 天網に定められた法・条理には他に以下の物が含まれる。王が国になければ九侯の全て、王があっても九侯のうち余州八侯の半数以上が在らねばならぬ。 伯以上の位の官職は王の近親者、冢宰、三公諸侯に限る。 三公はその国に戸籍がなければならない。 地綱(ちこう) 王が発布する法のこと。天綱に対してこう呼ばれる。国によって違う制度、王によって違う(変えられた)制度などは地綱によって定められていることになる。浮民・半獣・海客・山客などをどう扱うか、民にどれだけの税を課すかといったことは地綱で定められている。地綱は天綱に違反した内容をもつことは出来ない。例えば、かつて、ある国の王はその国に戸籍のない男女同士でも結婚し子供を作ってよいと定めたが、「同じ国に戸籍のある男女同士でないと結婚できない」という天綱の定めに反していたために帯を里木に結ぼうとしても解けてしまい、誰も里木に帯を結ぶことが出来なかった。 全ての法は王の名の下に発布されるが、通常は官が提案した案を関係する諸官に諮り、それから三公六官の賛同を受け、その上で王の裁可を得る、という手順を踏む。 王が法令を発布するには御璽が捺印された文章が必要である。御璽は呪力がある神器であり、王や宰輔(さいほ)の許可がある場合など特別な場合を除いて王以外の者が使用しようとすると印影が消えて使えないようになる。御璽は普段は宰輔が保管の任にあり、宰輔がいない時は三公が代わってその責を負う。王が斃れた後から次王が登極するまでの間は御璽の印影が消えて使えなくなるため、落ちた白雉の足を切り取って御璽の代わりとする。 行政組織の法 州候も自分の治める州に適用される法令を定めることが出来るが、その内容は天綱にも地綱にも反することが出来ない。州より下の行政組織も法を作る事ができるが、上の単位の行政組織が定めた法に反する法は作れない。ただし地綱に反した場合は天綱に反した場合と異なり無効とはならず、独断で地綱の定めより遥かに高い税を取り立てたり、国法に無い厳しい刑罰を処している州候や郷長も存在した。
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