《無視してください》の敬語
「無視してください」の敬語表現
「放念」という二字熟語に「ください」をつけて丁寧にした「ご放念ください(ごほうねんください)」は、相手に対して「無視してください・気にしないでください・忘れてください」という意図を伝えるための日本語表現です。通常ビジネスのメールや文書内で使われる表現です。放念を「放」と「念」の漢字一文字ごとに分解して考えるとその意味が分かりやすく、「放」は訓読みにすると「放つ」つまり何かから何かがはなれていく様子を表しており、「念」は心の中で思われている物事や思いを表しています。つまり、心の中で考えられている考えや思いから解き放たれ、それらを気にかけることをやめる様子を表す熟語であると分かります。
「無視してください」の敬語の最上級の表現
「無視してください」を最上級の敬語表現にしたい場合も、「ご放念ください」と表記すれば問題はなく、更に上位の表現方法はありません。ただ、より丁寧・硬派な印象を与えたい場合は「御放念下さい」と表記するなどの方法はあります。「御」は基本的に相手の動作に対して尊敬・丁寧の意図を表現したものなので、ここでは相手の「無視する・気にしない」行為に対して尊敬・丁寧の意図を示しています。
「無視してください」の敬語のビジネスメール・手紙での例文
・先のメールは東京事業所に在籍している従業員のみが対象ですので、それ以外の方はご放念ください。・先ほど送信したメールについてですが、3件の内見積もりに関するデータに誤りがありました。誠に申し訳ございませんが、いずれのデータについても放念いただくよう何卒お願いいたします。
・田中は先日退職いたしましたので、先月のお打ち合わせの内容につきましては一切ご放念いただくようお願いいたします。
・前回の月例ミーティングでは結構なお中元の品を頂き、誠にありがとうございました。来月はお気遣いなく、どうぞご放念ください。
・弊社は前任の鈴木共々、健康に過ごしておりますので、ご放念ください。
・新人にミスはつきものです。我々営業グループ全体でカバーしていくので、ご放念下さい。
・来週からサマータイムが始まるのを失念しておりました。別途候補の時間を記載しましたので、先のものについては何卒ご放念くださいませ。
・お見舞い品についてはどうぞご放念ください。
「無視してください」を上司に伝える際の敬語表現
「無視してください(=忘れて欲しい・気にしないで欲しい意図)」を上司に伝える場合は、ビジネスシーンのメールと同様、「ご放念ください」を使用します。一方「無視してほしい」という意図だけを伝えてしまうと自分勝手な印象を与えかねないため、そこに至った経緯に対する謝罪や感謝の気持ちを記載することも重要です。(例文)
「先ほど送信したメールの添付データに誤りがあることが判明しました。大変申し訳ございませんが、正しいものを本日中に送信いたしますので先のデータについてはご放念ください。」
「日報でご相談した第二営業部の売り上げデータ作成の件ですが、田中課長よりい頂いたアドバイスをもとに完了させることが出来ましたので、ご放念ください。」
「議事録に添付するデータは私の方で昨日修正いたしましたので何卒ご放念くださいますようお願いいたします。」
「無視してください」の敬語での誤用表現・注意事項
「放念」と類似した言葉として、「失念」がありますが、代替して使用することはできません。失念は失敗の「失」と同じ漢字が使用されており、「放念」と比べて誤り・間違いのニュアンスが強く含まれる類似表現です。「失念」は、自身の忘れてしまった内容に対して使うのが正しい使用方法であり、例えばあなたが本来やるべきことの期限がうっかり過ぎてしまい、それを上司に問われた際に「失念しておりました。」というのが正しい表現です。一方自身の言動に対して「放念しておりました」や、取引先に対して「失念ください」と表現するのは誤りとなります。放念はメールや文書では使用される表現であり、口語で使用されることはほとんどありません。
使用する際の注意事項として、次々に状況が移り変わり、納期と売り上げに追われながら連絡を取り合うビジネスのメールでは、日本語表現や敬語の使用方法よりもそのメールで伝えるべき内容の方が重要なことが多いです。誤ってデータを送ってしまったり、本来伝えるべきでない情報を取引先や上司に連絡してしまったりした際は、「放念」と「失念」で迷ったり文章表現を細かく精査したりするよりも間違いの少ない「お忘れください」と記載し、その前後で丁寧に謝罪をすることを優先すべきです。
「無視してください」の敬語での言い換え表現
・お忘れください「ご放念ください」と比べると少しカジュアルな印象を相手に与える。「お忘れいただくようお願いいたします」と記載すると、固い敬語表現を使わずに、丁寧な印象を与えることが出来る。相手と比較的カジュアルな関係性が構築されている場合は、「お忘れください」や「無視していただくようお願いいたします」が適切なケースもある。
・ご休心ください
「安心してください」と同義である。ただ「ご放念ください」が「忘れて欲しい・無視してほしい」という気持ちが強いとすると、「ご休心ください」は「気にしないで欲しい・心配しないでほしい」という気持ちのほうが強い。そのため、「今のところ母子ともに健康ですのでご休心ください」というような表現も可能。
(例)
「弊社営業グループは全員変わりなく過ごしておりますので、他事ながらご休心ください。」
「来週からはひとまず在宅でのテレワークから始めさせていただく事となりましたので、ご休心ください。」
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