大阪市 経済

大阪市

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/19 19:47 UTC 版)

経済

淀屋橋中之島地区(大阪市北区)

大阪市は、大阪都市圏および京阪神大都市圏における都市中枢地区として、神戸とともに経済の中心地の一つを成す。大阪市の市内総生産は約20兆円[63]、京阪神大都市圏のGRP(域内総生産)は約80兆円に及び、トルコサウジアラビアといった地域大国と呼ばれる国家のGDP(国内総生産)に匹敵する。また、都市圏経済規模としては世界7位の規模を有する[64]

大阪は長い歴史の中で、主に商人町人による民間資本で発展してきた、日本では珍しい大都市である。日本では他に博多が該当し、海外ではニューヨークアムステルダムシンガポールなどがこれに該当する。このような経済における歴史的背景は、自由闊達・自主独立・進取果敢・反骨精神といった、大阪の豊かな都市精神や商人町人文化を形成する一因となった。

大阪市は、課税総面積に占める商業地区の割合が約13%で全国の大都市の中で首位であり(2位の東京区部の約6%を大きく上回る)、歴史的にも商いが盛んであったことから、日本の商都と呼ばれている。大阪で生まれた住友三菱などの財閥系企業や銀行が、日本政府の要請に応じる形で本社を東京に移すにつれ、経済の中心地としての影響力は低下したものの、日本第二の都市としての地位は健在である。

明治大正期には「東洋のマンチェスター」と呼ばれるほどの工業都市であったが、高度経済成長期以後は工場の郊外・海外への移転が相次ぎ、現在では大阪市の総生産額における製造業の割合は1割程度である。此花区住之江区西淀川区などの西部臨海区には大規模工場が多く立地する一方、東成区城東区生野区などの東部内陸区には中小企業の工場が多く立地する。これら中小企業には、高度な技術力を有している企業も数多く存在し、日本経済の影の主役ともいわれている。

現在の経済活動で大きな割合を占めるのは、伝統的に盛んな分野である卸売小売りであり、市内総生産の約4分の1を創出している。その他には科学技術サービス情報通信などの分野が盛んである[65]

近年では国際観光産業が大きく興隆し、2019年度には都市別外国人訪問者数で世界25位、都市渡航先者数で世界12位を記録するなど、世界的な競争力を有している。また、この分野におけるさらなる競争力強化のため、市は大阪府と共同で、カジノを含む統合型リゾート (IR) の誘致を行っている。

大阪市は世界47位、アジア太平洋地域15位の金融センター(2024年3月/Z/YenG社調査)との評価を受ける[16]一方、国際化の遅れが課題である。市は都市政策として国際金融都市構想を掲げ、国際金融の育成を目指している。

不動産業も大阪の重要な産業の一つであり、商業用不動産投資額において世界31位(2020年/JLL社調査)の規模を有する。また同社の2019年の調査において、商業用不動産モメンタム(不動産市場の成長)において世界1位の都市と評価された[66]。これら不動産投資をはじめ、不動産開発などの多くは大阪都心6区および9区に集中している。

また、iPS細胞に代表されるような医療産業も世界的な競争力を有しており、再生医療医薬品医療ツーリズムなどを含めたライフサイエンス産業の興隆が今後期待されている。

大阪の利用空港である関西三空港関西国際空港大阪国際空港神戸空港)の総旅客数は約5177万人(2019年)、海港である阪神港湾のコンテナ取扱量は約532万TEU(2019年)である。いずれも世界上位に位置するが、首位級の都市と比較すると依然開きがある。

フォーチュン・グローバル500における、世界的大企業の本社数(2020年/フォーチュン誌調査)において、大阪からは7社がランクインしており、これは都市別で世界11位である。以下には大阪に本社を置く主な企業を挙げる。

大阪市内に登記上本店・本社を置く主な企業

公益社団法人




注釈

  1. ^ 1910年、1933年、1968年に観測地移転または観測装置変更または観測の時間間隔を変更しているため、その前後のデータが均質ではない。
  2. ^ 難波高津宮は単に高津宮とも呼ばれる。現在の高津宮(高津神社)はこの宮の遺跡を探索しその地に社殿を築き祭祀を行ったことに始まるとされ、元々は生國魂神社、大阪城辺りにあった。難波高津宮”. 陵墓探訪記. 2021年9月11日閲覧。
  3. ^ 単位料金区域松原市と同じ堺MA。
  4. ^ 交通系ICカード全国相互利用サービスを行っているKitacaSuicaPASMOTOICAmanacaSUGOCAnimocaはやかけんも利用可能。
  5. ^ 要人利用や大阪国際空港での整備目的での飛来、特殊なチャーター便などが該当する。
  6. ^ 関西国際空港の項目を参照のこと。

出典

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