内容とその変遷
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与謝野晶子は1942年に死去しており、その作品は1993年に著作権の保護期間が満了してパブリック・ドメインで利用できるため、以下その内容を掲載する。内容の変化については、 全く別のものになっている場合 一部にそのままの語句を残しながらも一部が全く異なる語句に入れ替わっている場合 語句は同じであるが表記が変えられている場合 があり、この表記の変化については 漢字表記がかな表記になったり、かな表記が漢字表記に変更されている場合 「川」と「河」、「皮」と「革」等使用する漢字が同じ意味の別の漢字に変更されている場合 「こころ」等といった仮名の繰り返しがある場合に踊り字を使うかどうかが変更されている場合 仮名遣いが旧仮名遣いか新仮名遣いかが変更されている場合 漢字にルビを付けるか付けないかが変更されている場合 がある。 以下、巻ごとに概ね成立・発表の時期順に並べる。 逸 小林一三旧蔵逸翁美術館蔵「源氏物語短冊五十四枚」 (大正9年1月25日) 天 小林天眠旧蔵京都府立資料館天眠文庫蔵晶子和歌短冊『源氏物語五十四帖』(大正9年春4月) 眠 小林天眠旧蔵京都府立資料館天眠文庫蔵晶子歌帖『源氏物語礼讃』 理 正宗敦夫旧蔵天理大学天理図書館蔵歌帖「源氏物語の巻々を詠める短歌五十四首」「大正巳未夏」 明 第二期「明星」第一巻第三号掲載「源氏物語讃歌」 1922年(大正11年)1月刊行 流 「流星の道」掲載「絵巻のために 源氏物語」 1924年(大正13年)5月刊行 改 改造社版与謝野晶子全集所収「流星の道」掲載「絵巻のために 源氏物語」 1933年(昭和8年)10月 訳 新新訳源氏物語所収 1938年(昭和13年)10月から1939年(昭和14年)9月 祝 新新訳源氏物語完成祝賀会印刷物「源氏物語礼讃」1939年(昭和14年)10月 堺 堺市博物館蔵 歌巻「願地物語り礼讃」1939年(昭和14年)翻刻は桐壺から末摘花までのみ 以下は与謝野晶子が直接には関わっていない。 角 角川文庫版「新新訳源氏物語」 河 河出書房「日本文学全集」2、3 なお、巻名の表記は版によって漢字・かなの違いなど多少異なっているものもある。 第01帖 桐壺逸 むらさきのかゞやく花と日の光おもひ合はではあらじとぞ思ふ 天 むらさきのかゞやく花と日の光おもひ合はではあらじとぞ思ふ 眠 むらさきのかゞやく花と日の光おもひ合はではあらじとぞ思ふ 理 紫の輝く花と日の光おもひ合はではあらじぞと思ふ 明 紫の輝く花と日の光おもひ合はではあらじぞと思ふ 流 紫の輝く花と日の光おもひ合はではあらじぞと思ふ 改 紫の輝く花と日のひかりおもひ合はではあらじぞと思ふ 訳 紫のかがやく花と日の光思ひ合はざることわりもなし 祝 紫のかがやく花と日の光思ひ合はざることわりもなし 堺 紫のかゞやく花と日のひかりおもひ合はざることわりもなし 角 紫のかがやく花と日の光思ひあはざることわりもなし 河 紫のかゞやく花と日の光思ひあはざることわりもなし 第02帖 帚木逸 中川の皐月(さつき)の水に人にたり語ればむせび寄ればわなゝく 天 中川の皐月の水に人にたり語ればむせび寄ればわなゝく 眠 中川の皐月の水に人にたり語ればむせび寄ればわなゝく 理 中川の皐月の水に人似たり語ればむせび寄ればわななく 明 中川(なかがわ)の皐月の水に人似たり語ればむせび寄ればわななく 流 中川(なかがわ)の皐月の水に人似たり語ればむせび寄ればわななく 改 中川(なかがわ)の皐月の水に人似たり語ればむせび寄ればわななく 訳 中川(なかがわ)の皐月の水に人似たり語ればむせび寄ればわなゝく 祝 中川の皐月の水に人似たり語ればむせび寄ればわななく 堺 なか川の皐月の水に人似たり語ればむせび寄れバわななく 角 中川の皐月(さつき)の水に人似たりかたればむせびよればわななく 河 中川の皐月(さつき)の水に人似たりかたればむせび寄ればわなゝく 第03帖 空蝉逸 うつせみのわがうすごろも風流男(みやびお)になれてぬるやとあぢきなきころ 天 うつせみのわがうす衣風流男に馴れてぬるやとあぢきなきころ 眠 うつせみのわがうすごろもみやび男になれてぬるやとあぢきなきころ 理 うつせみの我が薄ごろも風流男に馴れて寝るやとあぢきなき頃 明 うつせみの我が薄ごろも風流男(みやびお)に馴れて寝(ね)るやとあぢきなき頃 流 うつせみの我が薄ごろも風流男(みやびお)に馴れて寝(ね)るやとあぢきなき頃 改 うつせみの我が薄ごろも風流男(みやびお)に馴れて寝(ね)るやとあぢきなき頃 訳 うつせみのわがうすごろも風流男に馴れてぬるやとあぢきなきころ 祝 うつせみの我が薄ごろも風流男(みやびお)に馴れて寝(ね)るやとあぢきなき頃 堺 うつ蝉の我がうすごろも風流男に馴れて寝るやとあぢきなきころ 角 うつせみのわがうすごろも風流男に馴(な)れてぬるやとあぢきなきころ 河 うつせみのわがうすごろも風流男(みやびお)に馴れてぬるやとあぢきなきころ 第04帖 夕顔逸 うきよるの悪夢とともになつかしきゆめもあとなく消えにけるかな 天 うきよるの悪夢とゝもになつかしきゆめもあとなく消えにけるかな 眠 うきよるの悪夢とゝもになつかしきゆめもあとなく消えにけるかな 理 うき夜の悪夢とともになつかしき夢も跡なく消えにけるかな 明 うき夜(よる)の悪夢とともになつかしき夢も跡なく消えにけるかな 流 憂き夜(よる)の悪夢とともになつかしき夢も跡なく消えにけるかな 改 憂き夜(よる)の悪夢とともになつかしき夢も跡なく消えにけるかな 訳 憂き夜の悪夢と共になつかしきゆめもあとなく消えにけるかな 祝 憂き夜半の悪夢とともになつかしき夢も跡なく消えにけるかな 堺 憂き夜半の悪夢とゝもになつかしきゆめも跡なく消えにけるかな 角 うき夜半(よは)の悪夢と共になつかしきゆめもあとなく消えにけるかな 河 うき夜半の悪夢と共になつかしきゆめもあとなく消えにけるかな 第05帖 若紫逸 春の野のうらわか草に親みていとおほどかに恋もなりぬる 天 春の野のうらわか草に親みていとおほどかに恋もなりぬる 眠 春の野のうらわか草に親みていとおほどかに恋もなりぬる 理 春の野のうらわか草に親みていとおほどかに恋もなりぬる 明 春の野のうらわか草に親みていとおほどかに恋もなりぬる 流 春の野のうらわか草に親みていとおほどかに恋もなりぬる 改 春の野のうらわか草に親みていとおほどかに恋もなりぬる 訳 春の野のうらわか草に親みていとおほどかに恋もなりぬる 祝 春の野のうらわか草に親しみていとおほどかに恋もなりぬる 堺 春の野のうらわか草に親しみていとおほどかに恋もなりぬる 角 春の野のうらわか草に親しみていとおほどかに恋もなりぬる 河 春の野のうらわか草に親しみていとおほどかに恋もなりぬる 第06帖 末摘花逸 皮ごろも上にきたれば我妹子(わぎもこ)はきくことの皆身に沁(し)まぬらし 天 皮ごろも上に着たれば我妹子はきくことの皆身にしまぬらし 眠 皮ごろも上に着たれば我妹子はきくことの皆身にしまぬらし 理 革ごろも上に着たれば我妹子は聞くことの皆身に沁まぬらし 明 革ごろも上に着たれば我妹子(わぎもこ)は聞くことの皆身に沁まぬらし 流 革ごろも上に着たれば我妹子(わぎもこ)は聞くことの皆身に沁まぬらし 改 皮ごろも上に著たれば我妹子(わぎもこ)は聞くことの皆身に沁まぬらし 訳 皮ごろも上に着たれば我妹子は聞くことの皆身に沁まぬらし 祝 皮ごろも上に着たれば我妹子は聞くことの皆身に沁まぬらし 堺 皮ごろも上に着たれば我妹子は聞くことの皆身に沁まぬらし 角 皮ごろも上に着たれば我妹子(わぎもこ)は聞くことのみな身に沁(し)まぬらし 河 皮ごろも上に着たれば我妹子(わぎもこ)は聞くことのみな身に沁(し)まぬらし 第07帖 紅葉賀逸 青海の波しづかなるさまを舞ふわかきこゝろは底に鳴れども 天 青海の波しづかなるさまを舞ふわかき心は底に鳴れども 眠 青海の波しづかなるさまを舞ふわかきこころは底に鳴れども 理 青海(あおうみ)の波しづかなるさまを舞ふ若き心は底に鳴れども 明 青海(あおうみ)の波しづかなるさまを舞ふ若き心は下(した)に鳴れども 流 青海(あおうみ)の波しづかなるさまを舞ふ若き心は下(した)に鳴れども 改 青海(あおうみ)の波しづかなるさまを舞ふ若き心はしたに鳴れども 訳 青海の波しづかなるさまを舞ふ若きこゝろは下に鳴れども 祝 青海の波しづかなるさまを舞ふ若き心はしたに鳴れども 角 青海の波しづかなるさまを舞ふ若き心は下に鳴れども 河 青海の波しづかなるさまを舞ふ若き心は下に鳴れども 第08帖 花宴逸 春の夜の靄に出たる月ならん手まくらかしぬわがかりぶしに 天 春の夜のもやに酔ひたる月ならん手まくらかしぬわがかりぶしに 眠 春の夜のもやによひたる月ならん手まくらかしぬわがかりぶしに 理 春の夜の靄に酔ひたる月ならん手枕かしぬわが仮臥に 明 春の夜の靄に酔ひたる月ならん手枕(たまくら)かしぬわが仮臥(かりぶし)に 流 春の夜の靄に酔ひたる月ならん手枕(たまくら)かしぬわが仮臥(かりぶし)に 改 春の夜の靄に酔ひたる月ならん手(た)まくらかしぬわが仮臥(かりぶし)に 訳 春の夜のもやにゑひたる月ならん手枕かしぬ我が仮ぶしに 祝 春の夜の靄に酔ひたる月ならん手まくらかしぬわが仮臥に 角 春の夜のもやにそひたる月ならん手枕かしぬ我が仮ぶしに 河 春の夜のもやにそひたる月ならん手枕かしぬ我が仮ぶしに 第09帖 葵逸 うらめしと人をめにおくこともこれ身のおとろへに外ならぬかな 天 うらめしと人を目におくこともこれ身のおとろへに外ならぬかな 眠 うらめしと人を目におくこともこれ身のおとろへに外ならぬかな 理 恨めしと人を目におくことも是身の衰へに外ならぬかな 明 恨めしと人を目におくことも是身の衰へに外ならぬかな 流 恨めしと人を目におくことも是身の衰へに外ならぬかな 改 恨めしと人を目におくことも是身の衰へに外ならぬかな 訳 うらめしと人を目におくこともこれ身のおとろへにほかならずして 祝 恨めしと人を目におくことも是れ身の衰へに外ならぬかな 角 恨めしと人を目におくこともこそ身のおとろへにほかならぬかな 河 うらめしと人を目におくこともこそ身のおとろへに外ならぬかな 第10帖 賢木・榊逸 いすゞ川神のさかひへのがれきぬおもひ上りし人の身のはて 天 五十鈴川神のさかひにのがれきぬ思ひ上りし人の身のはて 眠 いすゞ川神のさかひへのがれきぬおもひ上りし人の身のはて 理 五十鈴川神のさかひに逃れきぬ思ひ上(あが)りし人の身のはて 明 五十鈴川神のさかひへ逃れきぬ思ひ上(あが)りし人の身のはて 流 五十鈴川神のさかひへ逃れきぬ思ひ上(あが)りし人の身のはて 改 五十鈴川神のさかひへ逃れきぬ思ひ上がりし人の身のはて 訳 五十鈴川神のさかひへのがれきぬおもひ上がりし人の身のはて 祝 五十鈴川神のさかひへ逃れきぬ思ひ上がりし人の身のはて 角 五十鈴(いすず)川神のさかひへのがれきぬおもひあがりしひとの身のはて 河 五十鈴(いすず)川神のさかひへのがれきぬおもひ上(あが)りしひとの身のはて 第11帖 花散里逸 たちばなも恋のうれひもちりかへば香をなつかしみほとゝぎすなく 天 たちばなも恋のうれひもちりかへば香をなつかしみほとゝぎすなく 眠 たちばなも恋のうれひもちりかへば香をなつかしみほとゝぎすなく 理 橘も恋の愁ひも散りかへば香をなつかしみ牡鵑(ほととぎす)鳴く 明 橘も恋の愁ひも散りかへば香をなつかしみ牡鵑(ほととぎす)鳴く 流 橘も恋の愁ひも散りかへば香をなつかしみ杜鵑(ほととぎす)鳴く 改 橘も恋の愁ひも散りかへば香をなつかしみほととぎす鳴く 訳 橘もこひの愁ひも散りかへば香をなつかしみほとゝぎす鳴く 祝 橘も恋の愁ひも散りかへば香をなつかしみほととぎす鳴く 角 橘(たちばな)も恋のうれひも散りかへば香(か)をなつかしみほととぎす鳴く 河 橘(たちばな)もこひの愁(うれ)ひも散りかへば香をなつかしみほとゝぎす鳴く 第12帖 須磨逸 人こふる涙とわすれうら波にひかれゆくべき身とも思ひぬ 天 人こふる涙とわすれうら波にひかれゆくべき身かとおもひぬ 眠 人こふる涙とわすれうら波にひかれゆくべき身ともおもひぬ 理 人恋ふる涙と忘れうら波に引かれ行くべき身とも思ひぬ 明 人恋ふる涙と忘れ大海(おほうみ)へ引かれ行くべき身かと思ひぬ 流 人恋ふる涙と忘れ大海(おほうみ)へ引かれ行くべき身かと思ひぬ 改 人恋ふる涙と忘れ大海(おほうみ)へ引かれ行くべき身かと思ひぬ 訳 人恋ふる涙と忘れ大海へ引かれ行くべき身かと思ひぬ 祝 人恋ふる涙と忘れ大海へ引かれ行くべき身かと思ひぬ 角 人恋ふる涙をわすれ大海へ引かれ行くべき身かと思ひぬ 河 人恋ふる涙をわすれ大海へ引かれ行くべき身かと思ひぬ 第13帖 明石逸 わりなくも別れがたしと白玉のなみだを流す琴の音かな 天 わりなくも別れがたしとしら玉の涙を流す琴の絃かな 眠 わりなくもわかれがたしとしら玉の涙をながす琴のおとかな 理 わりなくも別れがたしと白玉の涙を流す琴のおとかな 明 わりなくも別れがたしと白玉(しらたま)の涙を流す琴の絃かな 流 わりなくも別れがたしと白玉(しらたま)の涙を流す琴の絃かな 改 わりなくも別れがたしと白玉(しらたま)の涙を流す琴のいとかな 訳 わりなくもわかれがたしとしら玉の涙を流す琴のいとかな 祝 わりなくも別れがたしと白玉の涙を流す琴のいとかな 角 わりなくもわかれがたしとしら玉の涙をながす琴のいとかな 河 わりなくもわかれがたしとしら玉の涙を流す琴のいとかな 第14帖 澪標逸 身をつくし逢はんと祈るみてぐらもわれのみ神に奉るらん 天 身をつくし逢はんと祈るみてぐらもわれのみ神に奉るらん 眠 みをつくし逢はんと祈るみてぐらをわれのみ神に奉るらん 理 みをつくし逢はんと祈るみてぐらをわれのみ神に奉るらん 明 みをつくし逢はんと祈る御幣(みてぐら)もわれのみ神に奉るらん 流 みをつくし逢はんと祈る御幣(みてぐら)もわれのみ神に奉るらん 改 みをつくし逢はんと祈る御幣(みてぐら)もわれのみ神に奉るらん 訳 みをつくし逢はんと祈るみてぐらもわれのみ神に奉るらん 祝 みをつくし逢はんと祈る御幣(みてぐら)もわれのみ神に奉るらん 角 みをつくし逢(あ)はんと祈るみてぐらもわれのみ神にたてまつるらん 河 みをつくし逢はんと祈るみてぐらもわれのみ神に奉(たてまつ)るらん 第15帖 蓬生逸 道もなきよもぎを分けて君ぞこし誰にもまさる身のこゝちする 天 道もなき蓬を分けて君ぞこし誰にもまさる身のこゝちする 眠 道もなきよもぎを分けて君ぞこし誰にもまさる身の心地する 理 道もなき蓬を分けて君ぞ来し誰にも勝る身の心地する 明 道もなき蓬を分けて君ぞ来(こ)し誰にも勝(まさ)る身の心地する 流 道もなき蓬を分けて君ぞ来(こ)し誰にも勝(まさ)る身の心地する 改 道もなき蓬を分けて君ぞ来(こ)し誰れにも勝る身のここちする 訳 道もなき蓬を分けて君ぞこし誰れにもまさる身のこゝちする 祝 道もなき蓬を分けて君ぞ来し誰れにも勝る身のここちする 角 道もなき蓬(よもぎ)をわけて君ぞこし誰(たれ)にもまさる身のここちする 河 道もなき蓬(よもぎ)を分(わ)けて君ぞこし誰にもまさる身のここちする 第16帖 関屋逸 逢坂は関の清水もこひ人のあつき涙もながるゝところ 天 逢坂は関の清水もこひ人のあつき涙もながるゝところ 眠 逢坂は関の清水も恋人の熱き涙もながるゝところ 理 逢坂は関の清水も恋人の熱き涙もながるるところ 明 逢坂は関の清水も恋人の熱き涙もながるるところ 流 逢坂は関の清水も恋人の熱き涙もながるるところ 改 逢坂は関の清水も恋人の熱きなみだもながるるところ 訳 逢坂は関の清水もこひ人の熱き涙もながるゝところ 祝 逢坂は関の清水も恋人の熱きなみだもながるるところ 角 逢坂(あふさか)は関の清水(しみづ)も恋人のあつき涙もながるるところ 河 逢坂(おうさか)はせきの清水もこひ人のあつき涙も流るゝところ 第17帖 絵合逸 逢ひがたきいつきのみこと思ひにきさらにはるかになりゆくものを 天 あひがたきいつきのみこと思ひにきさらにはるかになりゆくものを 眠 逢ひがたきいつきのみことおもひにきさらにはるかになりゆくものを 理 逢ひがたき齋の女王と思ひにき更にはるかになり行くものを 明 逢ひがたき齋(いつき)の女王(みこ)と思ひにき更にはるかになり行くものを 流 逢ひがたき齋(いつき)の女王(みこ)と思ひにき更にはるかになり行くものを 改 逢ひがたき齋(いつき)の女王(みこ)と思ひにき更にはるかになり行くものを 訳 あひがたきいつきの姫とおもひてきさらにはるかになりゆくものを 祝 逢ひがたき齋(いつき)の女王(みこ)と思ひにき更にはるかになり行くものを 角 あひがたきいつきのみことおもひてきさらに遥(はる)かになりゆくものを 河 会ひがたきいつきの姫(みこ)とおもひてきさらにはるかになりゆくものを 第18帖 松風逸 はしたなき松もかぜかな泣けば泣け小琴をとれば同じ音をひく 天 はしたなき松もかぜかな泣けば泣く小琴をとれば同じ音をひく 眠 はしたなき松もかぜかな泣けば泣く小琴をとれば同じねをひく 理 はしたなき松の風かな泣けば泣く小琴をとれば同じ音を弾く 明 あぢきなき松の風かな泣けば泣き小琴(をごと)をとれば同じ音を弾く 流 あぢきなき松の風かな泣けば泣き小琴(をごと)をとれば同じ音を弾く 改 あぢきなき松の風かな泣けば泣き小琴(をごと)をとれば同じ音を弾く 訳 あぢきなき松の風かな泣けばなき小琴をとればおなじ音を弾く 祝 あぢきなき松の風かな泣けば泣き小琴をとれば同じ音を弾く 角 あぢきなき松の風かな泣けばなき小琴をとればおなじ音を弾(ひ)く 河 あぢきなき松の風かななけばなき小琴をとればおなじ音を弾く 第19帖 薄雲逸 さくらちる春の夕(ゆふべ)のうすぐもの涙となりておつるこゝちに 天 さくらちる春の夕のうすぐものなみだとなりておつる心地に 眠 さくらちる春の夕のうす雲のなみだとなりておつる心地に 理 桜ちる春の夕のうす雲の涙となりておつる心地に 明 桜ちる春の夕のうす雲の涙となりておつる心地に 流 桜ちる春の夕のうす雲の涙となりておつる心地に 改 桜ちる春のゆふべのうす雲の涙となりておつる心地に 訳 さくらちる春の夕のうすぐもの涙となりておつるこゝちに 祝 桜ちる春のゆふべのうす雲の涙となりておつる心地に 角 さくら散る春の夕(ゆふべ)のうすぐもの涙となりて落つる心地(ここち)に 河 さくらちる春の夕のうすくもの涙となりておつるこゝちに 第20帖 朝顔逸 自らをあるか無きかの朝がほに似るてふ人を忘れかねつも 天 自らをあるか無きかの朝がほに似るてふ人を忘れかねつも 眠 自らをあるか無きかの朝がほににるてふ人の忘らかねつも 理 自らをあるか無きかの朝がほににるてふ人の忘らかねつも 明 自らをあるか無きかの朝顔と云ひなす人の忘られぬかな 流 自らをあるか無きかの朝顔と云ひなす人の忘られぬかな 改 自らをあるか無きかの朝顔と云ひなす人の忘られぬかな 訳 みづからはあるかなきかの朝がほと云ひなす人の忘られぬかな 祝 自らをあるか無きかの朝顔と云ひなす人の忘られぬかな 角 みづからはあるかなきかのあさがほと言ひなす人の忘られぬかな 河 みづからはあるかなきかの朝がほと言ひなす人の忘られぬかな 第21帖 少女・乙女逸 列はずれ夜ぎりの中に雁ぞなく初恋をする少年の如 天 むれはなれ霧の中にて雁ぞなく初恋をする少年のごと 眠 つらはなれ夜ぎりの中に雁ぞなく初恋をする少年の如 理 つらはなれ夜ぎりの中に雁ぞなく初恋をする少年の如 明 雁鳴くや列(つら)を離れて唯だ一つ初恋をする少年の如 流 雁鳴くや列(つら)を離れて唯だ一つ初恋をする少年の如 改 雁鳴くや列(つら)をはなれて唯だ一つ初恋をする少年のごと 訳 雁(かり)なくやつらをはなれてただ一(ひと)つ初恋(はつこひ)をする少年(しょうねん)のごと 祝 雁鳴くや列はなれて唯だ一つ初恋をする少年のごと 角 雁(かり)なくやつらをはなれてただ一つ初恋をする少年のごと 河 雁(かり)なくやつらをはなれてただ一つ初恋をする少年のごと 第22帖 玉鬘逸 火の国に生ひいでたればはづかしく頬の染ること多きわれかな 天 火の国に生ひいでたればはづかしく頬のそまること多きわれかな 眠 火の国に生ひいでたればはづかしくほのそまること多きわれかな 理 火の国に生ひい出たればはづかしく頬の染ること多きわれかな 明 火の国に生ひい出たれば云ふことの皆恥づかしく頬(ほ)の染まるわれ 流 火の国に生ひい出たれば云ふことの皆恥づかしく頬(ほ)の染まるわれ 改 火の国に生ひい出たれば云ふことの皆恥づかしく頬(ほ)の染まるわれ 訳 火(ひ)のくににおひいでたれば云(い)ふことの皆(みな)恥(はづか)しく頬(ほ)の染(そ)まるかな 祝 火の国に生ひ出たれば云ふことの皆恥づかしく頬の染まるわれ 角 火のくににおひいでたれば言ふことの皆恥づかしく頬(ほ)の染まるかな 河 火のくににおひいでたれば言ふことの皆恥づかしく頬(ほ)のそまるかな 第23帖 初音逸 若やかにうぐひすぞなく初春の衣(きぬ)くばられし一人のやうに 天 若やかにうぐひすぞなく初春の衣くばられし一人のやうに 眠 若やかにうぐひすぞなく初春の衣くばられし一人のやうに 理 若やかに鶯ぞ鳴く初春の衣配られし一人のやうに 明 若やかに鶯ぞ鳴く初春の衣配(きぬくば)られし一人(ひとり)のごとく 流 若やかに鶯ぞ鳴く初春の衣配(きぬくば)られし一人(ひとり)のごとく 改 若やかにうぐひすぞ鳴く初春の衣配(きぬくば)られし一人(ひとり)のごとく 訳 若(わか)やかにうぐひすぞ啼(な)く初春の衣(きぬ)くばられし一人(ひとり)のやうに 祝 若やかにうぐひすぞ鳴く初春の衣配られし一人のごとく 角 若やかにうぐひすぞ啼(な)く初春の衣(きぬ)くばられし一人のやうに 河 若やかにうぐひすぞ啼(な)く初春の衣(きぬ)くばられし一人のやうに 第24帖 胡蝶逸 さかりなる御代(みよ)の后に金の蝶しろがねの鳥花奉る 天 さかりなる御代の后に金の蝶しろがねの鳥花奉る 眠 さかりなる御代の后に金の蝶しろがねの鳥花奉る 理 盛りなる御代の后に金の蝶しろがねの鳥花たてまつる 明 盛りなる御代の后(きさき)に金(きん)の蝶しろがねの鳥花たてまつる 流 盛りなる御代の后(きさき)に金(きん)の蝶しろがねの鳥花たてまつる 改 盛りなる御代の后(きさき)に金(きん)の蝶しろがねの鳥花たてまつる 訳 盛(さか)りなる御代(みよ)の后(きさき)に金(きん)の蝶(てふ)しろがねの鳥花(とりばな)奉(たてまつ)る 祝 盛りなる御代の后に金の蝶しろがねの鳥花たてまつる 角 盛りなる御代(みよ)の后(きさき)に金の蝶(てふ)しろがねの鳥花たてまつる 河 盛りなる御代(みよ)の后(きさき)に金の蝶(ちょう)しろがねの鳥花たてまつる 第25帖 蛍逸 身にしみて物をおもへど夏の夜のほたるほのかに青ひきてとぶ 天 身にしみて物をおもへど夏の夜のほたるほのかに青ひきてとぶ 眠 身にしみてものを思へと夏の夜のほたるほのかに青ひきてとぶ 理 身に沁みて物を思へど夏の夜の蛍ほのかに青引きて飛ぶ 明 身に沁みて物を思へと夏の夜の蛍ほのかに青引きて飛ぶ 流 身に沁みて物を思へと夏の夜の蛍ほのかに青引きて飛ぶ 改 身に沁みて物を思へと夏の夜の蛍ほのかに青引きて飛ぶ 訳 身(み)にしみて物(もの)を思(おも)へと夏(なつ)の夜(よ)の蛍(ほたる)ほのかに青引(あおひ)きてとぶ 祝 身に沁みて物を思へと夏の夜の蛍ほのかに青引きて飛ぶ 角 身にしみて物を思へと夏の夜の蛍ほのかに青引きてとぶ 河 身にしみて物を思へと夏の夜の蛍(ほたる)ほのかに青引きてとぶ 第26帖 常夏逸 つゆおきてくれなゐいとゞ深けれどおもひわづらふなでしこの花 天 露おきてくれなゐいとゞ深けれどおもひ煩ふなでしこの花 眠 つゆおきてくれなゐいとゞふかけれどおもひわづらふなでしこの花 理 露置きてくれなゐいとど深けれどおもひわづらふ撫子の花 明 露置きてくれなゐいとど深けれど思ひ悩める撫子の花 流 露置きてくれなゐいとど深けれど思ひ悩める撫子の花 改 露置きてくれなゐいとど深けれど思ひ悩める撫子の花 訳 露置(つゆお)きてくれなゐいとど深(ふか)けれど思(おも)ひ悩(なや)める撫子(なでしこ)の花(はな) 祝 露おきてくれなゐいとど深けれど思ひなやめる撫子の花 角 露置きてくれなゐいとど深けれどおもひ悩めるなでしこの花 河 露置きてくれなゐいとど深けれどおもひ悩めるなでしこの花 第27帖 篝火逸 大きなるまゆみのもとにうつくしくかゞり火もえて涼かぜぞふく 天 大きなるまゆみのもとにうつくしくかゞり火燃えて涼かぜぞ吹く 眠 うつくしきかゞり火もえて大きなるまゆみのもとに涼かぜぞふく 理 大きなる檀の下に美しく篝火(かがりび)燃えて涼かぜぞ吹く 明 大きなる檀(まゆみ)の下(もと)に美しく篝火(かがりび)燃えて涼かぜぞ吹く 流 大きなる檀(まゆみ)の下(もと)に美しく篝火(かがりび)もえて涼かぜぞ吹く 改 おほきなる檀の下(もと)に美しく篝火(かがりび)もえて涼かぜぞ吹く 訳 大(おほ)きなるまゆみのもとに美(うつく)しくかがり火(ひ)もえて涼風(すずかぜ)ぞ吹(ふ)く 祝 おほきなる檀(まゆみ)のもとに美しく篝火もえて涼かぜぞ吹く 角 大きなるまゆみのもとに美しくかがり火もえて涼風ぞ吹く 河 大きなるまゆみのもとに美しくかがり火もえて涼風ぞ吹く 第28帖 野分逸 けざやかにうつくしき人いますなり野分がのぶる絵巻の奥に 天 けざやかにうつくしき人いますなり野分がのぶる絵巻のおくに 眠 けざやかにうつくしき人いますなり野分がのぶる絵巻のおくに 理 けざやかにうつくしき人いますなり野分がのぶる絵巻の奥に 明 けざやかにめでたき人ぞいましたる野分が開(あ)くる絵巻の奥に 流 けざやかにめでたき人ぞいましたる野分が開(あ)くる絵巻の奥に 改 けざやかにめでたき人ぞいましたる野分が開(あ)くる絵巻の奥に 訳 けざやかにめでたき人(ひと)ぞ在(い)ましたる野分(のわき)が開(あ)くる絵巻(えまき)のおくに 祝 けざやかにめでたき人ぞいましたる野分が開くる絵巻の奥に 角 けざやかにめでたき人ぞ在(い)ましたる野分が開(あ)くる絵巻のおくに 河 けざやかにめでたき人ぞ在(い)ましたる野分(のわき)が開(あ)くる絵巻のおくに 第29帖 行幸逸 雪ちるや日よりかしこくめでたさも上なき君の玉のおんこし 天 雪ちるや日よりかしこくめでたさも上なき君の玉のおんこし 眠 雪ちるや日よりかしこくめでたさも上なき君の玉のおんこし 理 雪ちるや日より畏くめでたさも上なき君の玉のおん輿 明 雪ちるや日より畏(かしこ)くめでたさも上(うへ)なき君の玉のおん輿 流 雪ちるや日より畏(かしこ)くめでたさも上(うへ)なき君の玉のおん輿 改 雪ちるや日より畏(かしこ)くめでたさも上(うへ)なき君の玉のおん輿 訳 雪(ゆき)ちるや日(ひ)よりかしこくめでたさも上(うえ)なき君(きみ)の玉(たま)のおん輿(こし) 祝 雪ちるや日より畏くめでたさも上なき君の玉のおん輿 角 雪ちるや日よりかしこくめでたさも上なき君の玉のおん輿 河 雪ちるや日よりかしこくめでたさも上なき君の玉のおん輿(こし) 第30帖 藤袴逸 あはれなる藤はかまをば見よといふ二人泣きたき心地覚えて 天 あはれなる藤袴をば見よといふ二人泣きたき心地おぼえて 眠 あはれなる藤はかまをば見よといふ二人泣きたき心地おぼえて 理 むらさきの藤袴をば見よと云ふ二人泣きたき心地覚えて 明 むらさきの藤袴をば見よと云ふ二人(ふたり)泣きたき心地覚えて 流 むらさきの藤袴をば見よと云ふ二人(ふたり)泣きたき心地覚えて 改 むらさきの藤袴をば見よと云ふ二人(ふたり)泣きたき心地覚えて 訳 むらさきのふぢばかまをば見(み)よと云(い)ふ二人(ふたり)泣(な)きたきここち覚(おぼ)えて 祝 むらさきの藤袴をば見よと云ふ二人泣きたき心地おぼえて 角 むらさきのふぢばかまをば見よといふ二人泣きたきここち覚えて 河 むらさきのふぢばかまをば見よと言ふ二人泣きたきここち覚えて 第31帖 真木柱逸 こひしさもかなしきことも知らぬなり真木の柱にならまほしけれ 天 こひしさもかなしきことも知らぬなり真木のはしらにならまほしけれ 眠 恋しさも恋しきこともしらぬなり真木の柱にならまほしけれ 理 恋しさも悲しきことも知らぬなり真木の柱にならまほしけれ 明 恋しさも悲しきことも知らぬなり真木の柱にならまほしけれ 流 恋しさも悲しきことも知らぬなり真木の柱にならまほしけれ 改 恋しさも悲しきことも知らぬなり真木の柱にならまほしけれ 訳 こひしさも悲(かな)しきことも知(し)らぬなり真木(まき)の柱(はしら)にならまほしけれ 祝 恋しさも悲しきことも知らぬなり真木の柱にならまほしけれ 角 こひしさも悲しきことも知らぬなり真木の柱にならまほしけれ 河 こひしさも悲しきことも知らぬなり真木の柱にならまほしけれ 第32帖 梅枝逸 かぐはしき春新しく来りけり光源氏の御むすめのため 天 かぐはしき春新しく来りけり光源氏のみむすめのため 眠 かぐはしき春新しく来りけり光源氏のみむすめのため 理 かぐはしき春新しく来りけり光源氏のみむすめのため 明 天地に春新しく来りけり光源氏(ひかるげんじ)のみむすめのため 流 天地に春新しく来りけり光源氏(ひかるげんじ)のみむすめのため 改 天地に春あたらしく来りけり光源氏(ひかるげんじ)のみむすめのため 訳 天地(あめつち)に春新(はるあたら)しく来(き)たりけり光源氏(ひかるげんじ)のみ女(むすめ)のため 祝 天地に春あたらしく来りけり光源氏のみむすめのため 角 天地(あめつち)に春新しく来たりけり光源氏のみむすめのため 河 天地(あめつち)に春新らしく来たりけり光源氏のみむすめのため 第33帖 藤裏葉逸 藤ばなのもとの根ざしは知らねどもおもひぞかはす白と紫 天 藤ばなのもとの根ざしは知らねども思ひかはせる白と紫 眠 ふぢばなのもとのねざしはしらねどもおもひかはせる白と紫 理 藤ばなのもとの根ざしは知らねども思ひかはせる白と紫 明 藤ばなのもとの根ざしは知らねども思ひかはせる白と紫 流 藤ばなのもとの根ざしは知らねども思ひかはせる白と紫 改 藤ばなのもとの根ざしは知らねども思ひかはせる白と紫 訳 ふぢばなのもとの根(ね)ざしは知(し)らねども枝(えだ)をかはせる白(しろ)と紫(むらさき) 祝 藤ばなのもとの根ざしは知らねども思ひかはせる白と紫 角 ふぢばなのもとの根ざしは知らねども枝をかはせる白と紫 河 ふぢばなのもとの根ざしは知らねども枝をかはせる白と紫 第34帖 若菜上逸 なみだこそ人をたのめばこぼれけれこゝろにまさりははかなかるらん 天 涙こそ人をたのめどこぼれけれ心にまさりははかなかるらん 眠 なみだこそ人をたのめばこぼれけれ心にまさりははかなかるらん 理 涙こそ人を頼めどこぼれけれ心にまさりははかなかるらん 明 涙こそ人を頼めどこぼれけれ心にまさりははかなかるらん 流 涙こそ人を頼めどこぼれけれ心にまさりははかなかるらん 改 涙こそ人を頼めどこぼれけれ心にまさりははかなかるらん 訳 たちまちに知(し)らぬ花(はな)さくおぼつかな天(あめ)よりこしをうたがはねども 祝 たちまちに知らぬ花さくおぼつかな天よりこしをうたがはねども 角 たちまちに知らぬ花さくおぼつかな天(あめ)よりこしをうたがはねども 河 たちまちに知らぬ花さくおぼつかな天(あめ)よりこしをうたがはねども 第35帖 若菜下逸 恋するは身をのろはんにひとしとぞのろはれなきし現世も後世も 天 恋するは身をのろはんにひとしとぞのろはれなきしこの世も後世も 眠 恋するは身をのろはんにひとしとぞのろはれなきしこの世も後世も 理 恋するは身をのろはんにひとしとぞのろはれなきしこの世も後世も 明 二ごころ誰先づもちて淋しくも悲しき世をば作り初めけん 流 二ごころ誰先づもちて淋しくも悲しき世をば作り初めけん 改 二ごころ誰れ先づもちて寂しくも悲しき世をば作り初めけん 訳 二ごころ誰(た)れ先(ま)づもちてさびしくも悲(かな)しき世(よ)をば作(つく)り初(そ)めけん 祝 二ごころ誰れ先づもちて寂しくも悲しき世をば作り初めけん 角 二ごころたれ先(ま)づもちてさびしくも悲しき世をば作り初(そ)めけん 河 二ごころたれ先づもちてさびしくも悲しき世をば作り初(そ)めけん 第36帖 柏木逸 二ごころ誰先づもちて恋しくも淋しき夜をばつくりそめけん 天 死ぬ日にも罪むくひど知るきはの涙に似ざる火のしづくおつ 天 二ごころ誰先づもちて恋しくも淋しき夜をばつくり初めけん 眠 死ぬ日にもつみむくいなどしるきはの涙に似ざる火のしづくおつ 理 死ぬ日にも罪報など知る際の涙に似ざる火のしづく落つ 明 死ぬ日にも罪報(つみむくい)など知る際(きは)の涙に似ざる火のしづく落つ 流 死ぬ日にも罪報(つみむくい)など知る際(きは)の涙に似ざる火のしづく落つ 改 死ぬる日にも罪報(つみむくい)など知る際(きは)の涙に似ざる火のしづく落つ 訳 死(し)ぬる日(ひ)を罪(つみ)むくいなど云(い)ふきはの涙(な)に似(に)ざる火(ひ)のしづくおつ 祝 死ぬる日にも罪報いなど云ふ際の涙に似ざる火のしづく落つ 角 死ぬる日を罪むくいなど言ふきはの涙に似ざる火のしづくおつ 河 死ぬる日を罪むくいなど言ふきはの涙に似ざる火のしづくおつ 第37帖 横笛逸 なき人の手なれの笛によりてこしゆめのゆくへの寒き秋の夜 天 なき人の手なれの笛によりもこしゆめのゆくへのさむき夜末かな 眠 なき人の手なれの笛によりもこしゆめのゆくへのさむき夜末かな 理 亡き人の手馴の笛に寄りも来し夢のゆくへの寒き夜半かな 明 亡き人の手馴(てなれ)の笛に寄りも来(こ)し夢のゆくへの寒き夜半かな 流 亡き人の手馴(てなれ)の笛に寄りも来(こ)し夢のゆくへの寒き夜半かな 改 亡き人の手馴(てなれ)の笛に寄りも来(こ)し夢のゆくへの寒き夜半かな 訳 亡(な)き人(ひと)の手(て)なれの笛(ふえ)に寄(よ)りもこし夢(ゆめ)のゆくへの寒(さむ)き夜半(よは)かな 祝 亡き人の手馴の笛に寄りも来し夢のゆくへの寒き夜半かな 角 亡(な)き人の手なれの笛に寄りもこし夢のゆくへの寒き夜半(よは)かな 第38帖 鈴虫逸 すゞ虫は釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)の御弟子の君のためにと秋をきよむる 天 鈴むしは釈迦牟尼仏の御弟子なる君がためにと秋をきよむる 眠 すゞむしは釈迦牟尼仏の御弟子なる君がためにと秋を浄むる 理 鈴むしは釈迦牟尼仏の御弟子の君のためにと秋を浄むる 明 鈴むしは釈迦牟尼仏の御弟子(おんでし)の君のためにと秋を浄(きよ)むる 流 鈴むしは釈迦牟尼仏の御弟子(おんでし)の君のためにと秋を浄(きよ)むる 改 鈴むしは釈迦牟尼仏の御弟子(おんでし)の君のためにと秋を浄(きよ)むる 訳 すずむしは釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)のおん弟子(でし)の君(きみ)のためにと秋(あき)を浄(きよ)むる 祝 鈴むしは釈迦牟尼仏の御弟子の君のためにと秋を浄むる 角 すずむしは釈迦牟尼仏(しゃかむにぶつ)のおん弟子(でし)の君のためにと秋を浄(きよ)むる 第39帖 夕霧逸 つまどより清き男のいづるころ後夜の阿闇梨(あざり)のまう上るころ 天 つまどより清き男のいづるころ後夜の阿闇梨のまう上るころ 眠 つまどより清き男のいづるころ後夜の阿闇梨のまう上るころ 理 つま戸より清き男の出づる頃後夜の阿闇梨のまうのぼる頃 明 つま戸より清き男の出づる頃後夜(ごや)の律師のまうのぼる頃 流 つま戸より清き男の出づる頃後夜(ごや)の律師のまうのぼる頃 改 つま戸より清き男の出づる頃後夜(ごや)の律師のまうのぼる頃 訳 つま戸(と)より清(きよ)き男(おとこ)の出(い)づるころ後夜(ごや)の律師(りっし)のまう上(あが)るころ 祝 つま戸より清き男の出づる頃後夜の阿闇梨のまうのぼる頃 角 つま戸より清き男の出(い)づるころ後夜(ごや)の律師のまう上るころ 第39帖 夕霧二訳 帰(かえ)りこし都(みやこ)の家(いえ)に音無(おとな)しの瀧(たき)はおちねど涙流(なみだなが)るる 角 帰りこし都の家に音無しの滝はおちねど涙流るる 第40帖 御法逸 しづかなる真白き花と見ゆれどもともに死ぬまでかなしかりけり 天 しづかにもましろき花と見ゆれどもともに死ぬまで悲しかりけり 眠 しづかなる真白き花と見ゆれどもともに死ぬまでかなしかりけり 理 しづかなる真白き花と見ゆれども共に死ぬまで悲しかりけり 明 なほ春の真白き花と見ゆれども共に死ぬまで悲しかりけり 流 なほ春の真白き花と見ゆれども共に死ぬまで悲しかりけり 改 なほ春の真白き花と見ゆれども共に死ぬまで悲しかりけり 訳 なほ春(はる)のましろき花(はな)と見(み)ゆれどもともに死(し)ぬまで悲(かな)しかりけり 祝 なほ春のましろき花と見ゆれどもともに死ぬまで悲しかりけり 角 なほ春のましろき花と見ゆれどもともに死ぬまで悲しかりけり 第41帖 幻逸 大ぞらの日の光さへつくる日のやうやう近きこゝちこそすれ 天 大空の日の光さへつきん日のやうやう近き心地こそすれ 眠 大ぞらの日の光さへつきん日のやうやく近き心地こそすれ 理 大空の日の光さへ尽きん日の漸く近き心地こそすれ 明 大空の日の光さへ尽くる日の漸く近き心地こそすれ 流 大空の日の光さへ尽くる日の漸く近き心地こそすれ 改 大空の日のひかりさへ尽くる日のやうやく近き心地こそすれ 訳 大空(おおぞら)の日(ひ)の光(ひかり)さへつくる世(よ)のやうやく近(しか)きここちこそすれ 祝 大空の日のひかりさへ尽くる世のやうやく近きここちこそすれ 角 大空の日の光さへつくる世のやうやく近きここちこそすれ 雲隠訳 かきくらす涙(なみだ)か雲(くも)かしらねどもひかり見(み)せねばかかぬ一章(しよう) 角 かきくらす涙か雲かしらねどもひかり見せねばかかぬ一章 第42帖 匂宮逸 春の日のひかりの名残花ぞのに匂ひ薫るとおもほゆるかな 天 春の日の光の名残花ぞのに匂ひ薫るとおもほゆるかな 眠 春の日の光の名残花ぞのに匂ひ薫るとおもほゆるかな 理 春の日の光の名残花園に匂ひ薫るとおもほゆるかな 明 春の日の光の名残花園(はなぞの)に匂ひ薫るとおもほゆるかな 流 春の日の光の名残花園(はなぞの)に匂ひ薫るとおもほゆるかな 改 春の日の光の名ごり花園(はなぞの)に匂ひ薫るとおもほゆるかな 訳 春(はる)の日(ひ)の光(はかり)の名残(なごり)花(はな)ぞのに匂(にほ)ひ薫(かを)るとおもほゆるかな 祝 春の日の光りの名残り花ぞのに匂ひ薫るとおもほゆるかな 角 春の日の光の名残(なごり)花ぞのに匂(にほ)ひ薫(かを)ると思ほゆるかな 第43帖 紅梅逸 うぐひすのこよやとばかり紅梅の花のあるじはのどやかにまつ 天 うぐひすのこよやとばかり紅梅の花のあるじはのどやかにまつ 眠 うぐひすのこよやとばかり紅梅の花のあるじはのどやかにまつ 理 うぐひすの来よやとばかり紅梅の花のあるじはのどやかに待つ 明 鶯も来よやとばかり紅梅の花のあるじはのどやかに待つ 流 鶯も来よやとばかり紅梅の花のあるじはのどやかに待つ 改 鶯も来よやとばかり紅梅の花のあるじはのどやかに待つ 訳 うぐひすもとはばとへかし紅梅(こうばい)の花(はな)のあるじはのどやかに待(ま)つ 祝 うぐひすもとはばとへかし紅梅の花のあるじはのどやかに待つ 角 うぐひすも問はば問へかし紅梅の花のあるじはのどやかに待つ 第44帖 竹河逸 姫達は常少女にて春ごとに花あらそひをくりかへせかし 天 姫達は常少女にて春ごとに花あらそひをくりかへせかし 眠 姫達は常少女にて春ごとに花あらそひをくりかへせかし 理 姫達は常少女にて春ごとに花あらそひをくり返せかし 明 姫達は常少女(とこをとめ)にて春ごとに花あらそひをくり返せかし 流 姫達は常少女(とこをとめ)にて春ごとに花あらそひをくり返せかし 改 姫達は常少女(とこをとめ)にて春ごとに花あらそひをくり返せかし 訳 姫達(ひめたち)は常少女(とこをとめ)にて春(はる)ごとに花(はな)あらそひをくり返(かえ)せかし 祝 姫達は常少女にて春ごとに花あらそひをくり返せかし 角 姫たちは常少女(とこをとめ)にて春ごとに花あらそひをくり返せかし 第45帖 橋姫逸 しめやかにこゝろのぬれぬ河ぎりの立ちまふ家はあはれなるかな 天 しめやかに心のぬれぬ川ぎりの立ちまふ家はあはれなるかな 眠 しめやかにこころのぬれぬ川ぎりの立ちまふ家はあはれなるかな 理 しめやかに心の濡れぬ河霧の立ち舞ふ家はあはれなるかな 明 しめやかに心の濡れぬ河霧の立ち舞ふ家はあはれなるかな 流 しめやかに心の濡れぬ河霧の立ち舞ふ家はあはれなるかな 改 しめやかに心の濡れぬ河霧の立ち舞ふ家はあはれなるかな 訳 しめやかにこころの濡(ぬ)れぬ川霧(かわぎり)の立(た)ちまふ家(いえ)はあはれなるかな 祝 しめやかにこころの濡れぬ川霧の立ちまふ家はあはれなるかな 角 しめやかにこころの濡(ぬ)れぬ川霧の立ちまふ家はあはれなるかな 第46帖 椎本逸 有明の月涙よりましろけれかねの幽かに水わたる時 天 有明の月涙より真白けれかねのかすかに水わたる時 眠 春の川遊仙窟のあたりまでゆくやと船にものをとはまし 理 春の川遊仙窟のあたりまでゆくやと船にものをとはまし 明 暁(あけ)の月涙のごとく真白けれ御寺(みてら)の鐘の水わたる時 流 暁(あけ)の月涙のごとく真白けれ御寺(みてら)の鐘の水わたる時 改 暁(あけ)の月涙のごとく真しろけれ御寺(みてら)の鐘の水わたるとき 訳 暁(あけ)の月(つき)涙(なみだ)のごとくましろけれ御寺(みてら)の鐘(かね)の水渡(みずわた)る時(とき) 祝 朝の月涙のごとくましろけれ御寺の鐘の水渡る時 角 朝の月涙のごとくましろけれ御寺(みてら)の鐘の水渡る時 第47帖 総角逸 心をば火のおもひにてやかましとおもひき身をばけぶりとぞする 天 心をば火のおもひにて焼かましと思ひき身をば煙にぞする 眠 こころをば火のおもひにてやかましと思ひき身をばけぶりにぞする 理 心をば火の思ひもて焼かましと思ひき身をば煙にぞする 明 心をば火の思ひもて焼かましと思ひき身をば煙にぞする 流 心をば火の思ひもて焼かましと思ひき身をば煙にぞする 改 心をば火の思ひもて焼かましと思ひき身をば煙にぞする 訳 心(こころ)をば火(ひ)の思(おも)ひもて焼(や)かましと思(おも)ひき身(み)をば煙(けむり)にぞする 祝 心をば火の思ひもて焼かましと願ひき身をば煙にぞする 角 心をば火の思ひもて焼かましと願ひき身をば煙にぞする 第48帖 早蕨逸 さはらびの歌を法師す君のことよきことばをばしらぬめでたさ 天 さはらびの歌を法師す君のことよきことばをば知らぬめでたさ 眠 さはらびの歌を法師す君の如よきことばをばしらぬめでたさ 理 早蕨の歌を法師す君のごとよき言葉をば知らぬめでたさ 明 早蕨(さわらび)の歌を法師す君のごとよき言葉をば知らぬめでたさ 流 早蕨(さわらび)の歌を法師す君のごとよき言葉をば知らぬめでたさ 改 早蕨(さわらび)の歌を法師す君のごとよき言葉をば知らぬめでたさ 訳 早蕨(さわらび)の歌(うた)を法師(ほうし)す君(きみ)に似(に)ずよき言葉(ことば)をば知(し)らぬめでたさ 祝 早蕨の歌を法師す君に似ずよき言葉をば知らぬめでたさ 角 早蕨(さわらび)の歌を法師す君に似ずよき言葉をば知らぬめでたさ 第49帖 宿木逸 おふけなく大御むすめをいにしへの人に似よとも祈りけるかな 天 なき人のかたみと見てもなぐさまぬ君をばなぞや今日も見にゆく 眠 おふけなく大みむすめをいにしへの人に似よとも祈りけるかな 理 おふけなき大みむすめを古の人に似よとも思ひけるかな 明 おふけなき大(おほ)みむすめを古の人に似よとも思ひけるかな 流 おふけなき大(おほ)みむすめを古の人に似よとも思ひけるかな 改 おふけなく大(おほ)みむすめを古の人に似よとも思ひけるかな 訳 あふけなく大御(おほみ)むすめをいにしへの人(ひと)に似(に)よとも思(おも)ひけるかな 祝 あふけなく大御むすめをいにしへの人に似よとも思ひけるかな 角 あふけなく大御(おほみ)むすめをいにしへの人に似よとも思ひけるかな 第50帖 東屋逸 朝ぎりの中を来たればわが袖に君がはなだの色うつりけり 天 朝ぎりの中をきたればわが袖に君がはなだの色うつりけり 眠 朝ぎりの中をきつればわが袖に君がはなだの色うつりけり 理 朝霧の中を来たればわが袖に君がはなだの色うつりけり 明 朝霧の中(なか)を来つればわが袖に君がはなだの色うつりけり 流 朝霧の中(なか)を来つればわが袖に君がはなだの色うつりけり 改 朝霧の中(なか)を来つればわが袖に君がはなだの色うつりけり 訳 ありし世(よ)の霧(きり)来(き)て袖(そで)を濡(ぬ)らしけりわりなけれども宇治(うじ)近(ちか)づけば 祝 ありし世の霧来て袖を濡らしけりわりなけれども宇治近づけば 角 ありし世の霧来て袖を濡(ぬ)らしけりわりなけれども宇治近づけば 第51帖 浮舟逸 おぼつかに危きものとつねに見し小舟の上に自らをおく 天 二かたに心のよりてよりがたくまさなき恋と淋しき恋と 眠 かねてより危きものとおもひつる小舟の上に自らをおく 理 何よりも危きものとながめて小舟の中に自らを置く 明 何よりも危きものとかねて見し小舟(こぶね)の中に自らを置く 流 何よりも危きものとかねて見し小舟(こぶね)の中に自らを置く 改 何よりも危きものとかねて見し小舟(こぶね)の中にみづからを置く 訳 何(なに)よりも危(あや)きものとかねて見(み)し小舟(こぶね)の中(なか)に自(みずか)らを置(お)く 祝 何よりも危きものとかねて見し小舟の中に自らを置く 角 何よりも危ふきものとかねて見し小舟の中にみづからを置く 第52帖 蜻蛉逸 ひと時は目に見しものをかげろふのあるかなきかをしらぬはかなき 天 ひとゝきは目に見しものをかげろふのありやなしやを知らぬはかなさ 眠 ひとゝきはめに見しものをかげろふのあるかなきかをしらぬはかなき 理 一時は目に見しものを蜻蛉のあるかなきかを知らぬ果敢なさ 明 一時(ひととき)は目に見しものを蜻蛉(かげろふ)のあるかなきかを知らぬ果敢なさ 流 一時(ひととき)は目に見しものを蜻蛉(かげろふ)のあるかなきかを知らぬ果敢なさ 改 ひと時は目に見しものを蜻蛉(かげろふ)のあるかなきかを知らぬ果敢なさ 訳 ひと時(とき)は目(め)に見(み)しものをかげろふのあるかなきかを知(し)らぬはかなき 祝 ひと時は目に見しものをかげろふのあるかなきかを知らぬはかなき 角 ひと時は目に見しものをかげろふのあるかなきかを知らぬはかなき 第53帖 手習逸 さめがたかゆめのつゞきにあなかしこ法(のり)の御山に程近く居る 天 さめがたかゆめのつゞきかあなかしこ法の御山に程近く居る 眠 さめがたかゆめのつゞきかあなかしこ法の御山に程近く居る 理 覚めがたか夢のつゞきかあなかしこ法の御山に程近く居る 明 覚めがたか夢の半(なかば)かあなかしこ法(のり)の御山(みやま)に程近く居(い)る 流 覚めがたか夢の半(なかば)かあなかしこ法(のり)の御山(みやま)に程近く居(い)る 改 覚めがたか夢の半(なかば)かあなかしこ法(のり)の御山(みやま)に程近くゐる 訳 ほど近(ちか)き法(のり)の御山(みやま)をたのみたる女郎花(をみなへし)かと見(み)ゆるなりけれ 祝 ほど近き法の御山をたのみたる女郎花かと見ゆるなりけれ 角 ほど近き法(のり)の御山(みやま)をたのみたる女郎花(をみなへし)かと見ゆるなりけれ 第54帖 夢浮橋逸 ほたるだにそれのよそへてながめつれ君がくるまの灯の渡りゆく 天 ほたるだにそれのよそへてながめつれ君がくるまの灯の渡りゆく 眠 ほたるだにそれのよそへてながめつれ君がくるまの灯の渡りゆく 理 蛍だにそれとよそへて眺めつれ君が車の灯の渡りゆく 明 蛍だにそれのよそへて眺めつれ君が車の灯の過ぎてゆく 流 蛍だにそれのよそへて眺めつれ君が車の灯の過ぎてゆく 改 蛍だにそれのよそへて眺めつれ君が車の灯の過ぎてゆく 訳 明(あ)けくれに昔(むかし)こひしきこころもて生(い)くる世(よ)もはたゆめのうきはし 祝 明けくれに昔こひしきこころもて生くる世もはたゆめのうきはし 角 明けくれに昔こひしきこころもて生くる世もはたゆめのうきはし
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