空蝉

実用日本語表現辞典

空蝉

読み方：うつせみ
別表記：虚蝉

「空蝉」とは、中が空洞になった蝉という意味で「蝉の抜け殻」を意味する言葉である。俳句では夏の季語である。古語においては「空蝉（うつせみ）」は「現身（うつしみ）」に通じ、「この世」や「現世の人々」の意味でも用いられた。

もともと「空蝉」は、「現し臣（うつしおみ）」が転じて「うつしみ」または「うつそみ」となり、さらに「うつせみ」に変じて、これに「空蝉」という漢字が当てられるようになった、という経緯をもつ語彙である。その意味では「現世に生きる人」という語義が最も根源的といえる。

「空蝉」は「虚蝉」と表記されることもある。「空蝉」が「現世」や「現世を生きる人」という意味で用いられる場合にも、「現世は無常である」「現身は儚い」というニュアンスが込められていることが多い。

「源氏物語」の「空蝉」

「源氏物語」における「空蝉」は、第3巻の巻名（タイトル）、および、物語に登場する女性の名である。

空蝉は、源氏物語第2巻（「帚木」）ではじめて登場する、空蝉は伊予介の後妻であった。光源氏に興味を持たれ、一度は同衾することになる。が、その後は光源氏の再三の誘惑を頑なに拒んだ。そして第3巻（「空蝉」）では、光源氏が空蝉に近づこうとするも、空蝉は薄衣をひとつ残して逃げ隠れてしまう。光源氏は薄衣を持ち帰り、そして薄衣を空蝉（ここでは「蝉の脱け殻」の意）に見立てて歌を詠んだ。

「空蝉（omoinotakeの曲）」

「空蝉」は、omoinotakeが2022年に配信限定でリリースし曲のタイトルでもある。ソニーミュージックの紹介文によれば「熱いラテンリズムに淡く切ない歌声をのせた、ひと夏のラヴソング」である。

（2023年3月14日更新）

デジタル大辞泉

うつせみ【^▽空^×蝉】

読み方：うつせみ

《「うつしおみ」が「うつそみ」を経て音変化したもの》

１ この世に現に生きている人。転じて、この世。うつしみ。

「いにしへもしかにあれこそ—も妻を争ふらしき」〈万・一三〉

２ 《「空蝉」「虚蝉」などの字を当てたところから》蝉の抜け殻。また、蝉。《季 夏》「—を妹が手にせり欲しと思ふ／誓子」

「—の身をかへてける木(こ)のもとになほ人がらのなつかしきかな」〈源・空蝉〉

[補説] 作品名別項。→空蝉

うつせみ【空蝉】

読み方：うつせみ

源氏物語第3巻の巻名。光源氏17歳。源氏が空蝉の寝所に忍びこむが拒まれることなどを描く。

源氏物語の登場人物。衛門督(えもんのかみ)の娘。伊予介(いよのすけ)の後妻。源氏の贈った歌によってこの名がある。

源氏物語・空蝉の一場面／画・尾形月耕 国立国会図書館蔵

短編小説作品名辞典

空蝉

作者芝木好子

収載図書玉の緒
出版社河出書房新社
刊行年月1987.11
シリーズ名河出文庫

空蝉

作者浜村淳

収載図書源氏物語 花はむらさき 新版
出版社青心社
刊行年月2008.4

空蝉

作者武川滋郎

収載図書空蝉
出版社審美社
刊行年月1992.7

空蝉

作者吉田健一

収載図書日本幻想文学集成 16 吉田健一 饗宴
出版社国書刊行会
刊行年月1992.12

空蝉

作者立原正秋

収載図書立原正秋全集 第21巻 その年の冬 詩・短歌 新訂版
出版社角川書店
刊行年月1998.3

空蝉

作者志真一人

収載図書空蝉―エコロジスト
出版社文芸社
刊行年月2000.9

空蝉

作者清水朔

収載図書神遊び
出版社集英社
刊行年月2003.3
シリーズ名コバルト文庫

空蝉

作者嵯峨の舍主人

収載図書第二国民小説
出版社国文学研究資料館
刊行年月2005.9
シリーズ名リプリント日本近代文学

空蝉

作者長野まゆみ

収載図書あめふらし
出版社文藝春秋
刊行年月2006.6

空蝉

作者麻水水葵

収載図書幻想奇譚―土蜘蛛草子異聞
出版社新風舎
刊行年月2007.5
シリーズ名新風舎文庫

季語・季題辞典

空蝉

読み方：ウツセミ（ｕｔｓｕｓｅｍｉ）

さなぎが羽化したあとのカラ

季節 夏

分類 動物

古典文学作品名辞典

空蝉

読み方：ウツセミ（ｕｔｓｕｓｅｍｉ）

分野 謡曲

年代 成立年未詳

作者 作者未詳

近代文学作品名辞典

空蝉

読み方：ウツセミ（ｕｔｓｕｓｅｍｉ）

作者 立原正秋

初出 昭和55年

ジャンル 小説

空蝉

読み方：ウツセミ（ｕｔｓｕｓｅｍｉ）

作者 平林たい子

初出 昭和25年

ジャンル 小説

空蝉

読み方：ウツセミ（ｕｔｓｕｓｅｍｉ）

作者 吉田健一

初出 昭和37年

ジャンル 随筆

ウィキペディア

空蝉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2022/08/25 00:38 UTC 版)

空蝉、空蟬（うつせみ）

志方あきこ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2024/02/23 23:12 UTC 版)

志方 あきこ（しかた あきこ、Akiko Shikata、1月7日 - ）は、日本のソングライター、編曲家、歌手。

ウィキペディア小見出し辞書

空蝉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2022/05/15 09:16 UTC 版)

「痛いのは嫌なので防御力に極振りしたいと思います。」の記事における「空蝉」の解説

1日に1度だけ自身への致死ダメージを無効化するスキル。1分間【AGI】が50%上昇する。

空蝉（うつせみ）

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2019/08/22 19:52 UTC 版)

「男遊郭」の記事における「空蝉（うつせみ）」の解説

傾城。『逆転吉原 扇屋編』に登場。

空蝉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2022/06/07 03:22 UTC 版)

「紅影 (ランブルローズ)」の記事における「空蝉」の解説

ビーチアリーナで発動。丸太に化けて相手を欺く。

空蝉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2022/06/18 04:57 UTC 版)

「源氏物語」の記事における「空蝉」の解説

故・衛門督の娘。亡き父が入内を望んでいたが、父の死でその夢は絶たれる。のちに夫となる伊予介（のちに常陸介）から何かと任国からの食料を送られるなどの援助を受けながら弟・小君とひっそり暮らしていたが、自邸に盗賊が押し入り、伊予介が助けに入ったことがきっかけで結婚。小君とともに、伊予介の屋敷で暮らすことに。

空蝉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2022/06/12 01:40 UTC 版)

「源氏物語各帖のあらすじ」の記事における「空蝉」の解説

（源氏17歳夏） 夏の夕暮、源氏は空蝉と義理の娘・軒端荻が碁を打つのを垣間見て、いよいよ慕情を掻き立てられる。夜に入って源氏が寝間に忍びこむと、空蝉はそれと察して衣だけを脱ぎ捨てて逃げてしまう。蝉の抜殻のごとき着物を抱いて源氏は帰途につく。空蝉参照。

空蝉（うつせみ）

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2022/05/21 13:48 UTC 版)

「テニスの王子様の登場人物」の記事における「空蝉（うつせみ）」の解説

全く弾まず転がるドロップショット。

空蝉

出典: フリー百科事典『ウィキペディア（Wikipedia）』 (2017/07/15 07:46 UTC 版)

「年上彼女」の記事における「空蝉」の解説

ストーリー 両親が交通事故で他界し、田舎いる叔母夫婦の家に居候となった青田兄妹であるが、叔母たちからはあまり歓迎されておらず、新しく通うこととなった学校でも、毎日のようにいじめを受け続けるになった。 登場人物 青田優次郎（あおた ゆうじろう） 本編の主人公。浮世離れした美少年。身長170センチメートル。毎日、同級生たちの男子から嫌がらせを受けている。 鏑木志麻（かぶらぎ しま） 本編のヒロイン。優次郎の同級生。身長163センチメートル。性に対して奔放な性格。 青田絵理子（あおた えりこ） 本編のもう1人のヒロイン。優次郎の双子の妹。身長170センチメートル。 園子（そのこ） 学級委員。眼鏡とお下げ髪が特徴。身長156センチメートル。

Wiktionary日本語版（日本語カテゴリ）

空蝉

出典:『Wiktionary』 (2021/08/22 01:57 UTC 版)

和語の漢字表記

空蝉（うつせみ）

1. うつせみを参照。