葉巻きたばこ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2023/03/26 11:10 UTC 版)
各国の主なブランド
キューバ産
葉巻のオリジナルを生んだ国であり最大の葉巻生産国キューバで作れるシガーは、フィラー、バインダー、ラッパーの全てをハバナ葉で構成されていることからハバナ産、単にハバナとも呼ばれる。また、国有会社であるハバノス社が全てのキューバ産シガーの販売を担っていることから、ハバノスとも呼ばれる。現在、以下の主要ブランドを含めて30を超えるブランドが存在しており、各ブランドに熱狂的な愛好家が存在していることでも有名。とりわけ、ハバナシガーを最も消費するヨーロッパでは特に顕著だという。中でもコイーバ、ロメオ・イ・フリエタ、モンテクリスト、パルタガス、オヨ・デ・モントレイは特に著名で、ハバナ5大ブランドなどとも呼ばれる。他にもH.アップマン、ホセ・L・ピエドラの二つを合わせて7大ブランドとも、さらにパンチをも含めた8大ブランドなどと様々であるが、これはハバナ・シガーでしか味わえない特有の喫感があるためで、それだけ愛好家が多いということでもある。
- コイーバ (Cohiba)
- ロメオ・イ・フリエタ (Romeo y Julieta)
- パルタガス (Partagas)
- モンテクリスト (Montecristo)
- オヨ・デ・モントレイ (Hoyo de Monterrey)
- H.アップマン (H. Upmann)
- ホセ・L・ピエドラ (Jose L Piedra)
- パンチ (Punch)
- ボリバー (Bolivar)
- トリニダッド (Trinidad)
- フォンセカ (Fonseca)
- クアバ (Cuaba)
- レイ・デル・ムンド (EL Rey del Mundo)
他、全30ブランド以上ある。
売上高
世界的に喫煙環境が厳しくなる中でも、キューバ産の葉巻の売上は伸びており、2017年には過去最高の約5億ドルを記録した。主な輸出先はスペイン、フランス、中華人民共和国などとなっている[7]。
ドミニカ産
1960年代から主に生産されるようになった。60年代、キューバ危機をきっかけにアメリカ合衆国ではキューバとの貿易を絶ったため、アメリカ合衆国ではハバナシガーが売り出されなくなった。代わってアメリカ合衆国で主に消費されるようになったのが、このドミニカ産で、ダビドフに象徴されるように多くのブランドは、キューバから亡命してきた葉巻職人たちにより立ち上げられた。
生産と管理、販売に至るまで国有会社が担っているハバノスと違い、多くのブランドが民間の会社によって生産、管理などが行われている。アメリカ合衆国のみで販売するブランドも多くあり、ヨーロッパにも販売していないブランドが存在するなど、最も多くのブランドが存在する生産国でもある。
- ダビドフ (Davidoff)
- プライベート・ストック (Private Stock)
- マカヌード (MACANUDO)
- アルトゥーロ・フエンテ (ARTURO FUENTE)
- グリフィン (Griffin's)
- ラ・フロール・ドミニカーナ (LA FLOR DOMINICANA)
- アシュトン (ASHTON)
- ラ・アウローラ (LA AURORA)
- ドン・ディエゴ (DON DIEGO)
- サンタ・ダミアーナ (Santa Damiana)
- アヴォ・ノットゥルノ (Avo XO Quartetto Notturno)
- プレイボーイ (PLAYBOY)
- メーカーズマーク (Maker's Mark)
ニカラグア産
1950年代末頃より、キューバ危機への緊張の高まりからニカラグアへ亡命したキューバの職人たちによって興され、60年代に入って販売が開始されるようになった。交易断絶後の米国ではそれまでのハバノスに代わって、政府高官などの間ではこのニカラグアン・シガーが取引されるようになり、非常に高い評価を得るようになる。その後、遅れて1970年代には欧州でも愛好家の間で好評となり、ニカラグアン・シガーの黄金期を迎えることとなった。当時はキューバに次ぐ葉巻大国としての地位を得たが、70年代末からの内戦で生産が滞り、その地位はドミニカ産に取って代わられた。80年代末の内戦終結後、再び生産が開始されるが疲弊した状態での品質の低下は免れず、一時は評価を落とした。しかし2000年頃を境にかつてのような評価を得られるほどまでの復興を果たした。ハバノスとはまた違うニカラグア産特有の旨味と香りが人気。現在はこの人気の高まりから、ドミニカ産や隣国のホンジュラス産でも、一部にニカラグア産の葉を使って生産するブランドやメーカーもあるほどである。
- パドロン (Padron)
- ダンヒル (ALFRED DUNHILL・2007年よりニカラグア生産)
- ホヤ・デ・ニカラグア (JOYA DE NICARAGUA)
- プラセンシア (Plasencia)
- シーエーオー (CAO)
- アロマ・デ・ニカ (Aroma de Nica)
等、他多数。
その他、ホンジュラス、メキシコ、フィリピン、インドネシア産等
他多数。
日本
日本には明治維新後に欧米から葉巻が本格的に輸入され始めたが、1873年(明治6年)には早くも葉巻の国産化の動きが始まり、熊本県の実業家、野田大九郎(のだだいくろう)が「阿蘇商社」という会社を立ち上げ、マニラからシガー職人を招聘して国産葉を用いた葉巻作りを開始。1876年(明治9年)には万国博覧会に出展する程の品質に到達するが、翌1877年(明治10年)の西南戦争の戦渦に巻き込まれて葉巻工場は焼失、数年後に野田も逝去した為事業再開を断念している。野田の取り組みから約10年後、「明治のたばこ王」こと岩谷松平の実弟、岩谷右衛(いわやうえ)が海外修行の後の1886年(明治19年)に東京で日本で2番目の国産葉巻作りに取り組むが、右衛は翌年に病死した為にこれも大きな広まりとはならなかった。その後暫くは国内数社から散発的に葉巻が販売されるが、輸入品はおろか、野田や岩谷の手掛けた葉巻にも及ばない水準のものばかりであり、こうした状況に業を煮やした実業家で葉巻愛好家でもあった久米民之助の手で、1900年(明治33年)に「代々木商会」が立ち上げられ、本格的な葉巻の工業生産が行われるようになった。代々木商会は「ペルフェクトス」などのプレミアムシガーを製造し、1904年(明治37年)の煙草専売法の施行後も暫くの間は葉巻の製造技術を持たない大蔵省専売局の委託を受け、葉巻の製造を継続した。日本専売公社(現・JT、日本たばこ産業)の国産葉巻は、技術・系譜共に煙草事業から撤退する代々木商会から直接引き継がれた物であり、戦中も生産規模を縮小しながらも1945年の東京大空襲までは製造が続けられていた[8]。戦後の1946年(昭和21年)にドライシガーの「アストリア」で葉巻製造に復帰した後[9]は、様々な銘柄を追加しながら2004年(平成16年)3月まで国内自主生産を続け、生産銘柄を絞り込み海外生産に切り替わった後も、戦前からの歴史ある2銘柄が日本たばこアイメックス(JTI)の委託製造扱いで2016年現在も存続している。
一方で、「葉巻たばこは1グラムで紙巻きたばこ1本に換算する」というたばこ税の規定を逆手に取る形で、巻紙にタバコ葉を使うことで葉巻扱いとして、1本あたりの重量を減らすことで節税を図るリトルシガーが2010年代後半から普及したが、財務省は公平性の観点から税制を見直し[10]、2020年10月1日以降、1本0.7グラム未満の葉巻たばこを紙巻きたばこ0.7本と換算する経過措置を経て[11]、2021年10月1日以降は1本1グラム未満の葉巻たばこは紙巻きタバコ1本と換算されるようになる[12]。
戦前
- ペルフェクトス - 1907年(明治40年)12月2日~1940年(昭和15年)9月15日 - 代々木商会から引き継がれた銘柄。「マニラの農家」や「薔薇と躑躅」があしらわれた木箱(紙箱も存在した)入り[8]。日中戦争激化の折発売終了。
- ロンドレス - 1907年(明治40年)12月2日〜1945年(昭和20年)3月。代々木商会から引き継がれた銘柄。「葉巻を銜えた小鳥」があしらわれた紙箱入り。大東亜戦争末期まで製造されていた銘柄の一つ[13]。
- プリンセサス - 1908年(明治41年)10月16日〜1937年(昭和12年)3月。「皇女の胸像」があしらわれた紙箱入り[13]。日中戦争勃発の時期に廃止。
- セニョリタス - 1910年(明治43年)1月~1933年(昭和8年)3月。「富士と羽衣の天使」があしらわれた紙箱入り[13]。熱河作戦の後に満州事変が終結した時期の廃止。シガリロも存在し、そちらはロンドレスと同様に「葉巻を銜えた小鳥」があしらわれた紙箱入りであった[8]。
- レガリア - 1911年(明治44年)~1931年(昭和6年)1月。「王権」の意。「白馬」があしらわれた紙箱入り[13]。満州事変勃発の時期に廃止。
- オリエンタレス - 1911年(明治44年)4月~1940年(昭和15年)。「旭光の海岸」があしらわれた紙箱入り[13]。日中戦争勃発の時期に廃止。
- イムペリアレス - 1911年(明治44年)4月~1931年(昭和6年)3月下旬。「軍艦」があしらわれた紙箱入り[13]。満州事変勃発の時期に廃止。
- グロリア(旧) - 1928年(昭和3年)12月11日~1944年(昭和19年)。「栄光」の意。元々は昭和天皇即位を記念して作られた御料葉巻を一般販売したもので、「御料車(牛車)」があしらわれた豪奢な木箱入りであった。戦後のグロリアはこの銘柄が元になっている[8]。日本本土空襲が始まった時期の廃止。
- パロマ(旧) - 1933年(昭和8年)2月24日〜1945年(昭和20年)3月 - 前述のプレミアムシガーの廃止と入れ替わるように登場したシガリロ。鳩があしらわれた紙箱入り[13]で、東京大空襲の後に製造を中止。戦後のパロマはこの銘柄の復刻に当たるが、鳩のマークがピースで既に広まっていた為か、戦前とは異なるパッケージデザインとなった。
- 恩賜の葉巻 - 1917年(大正6年)〜2006年(平成18年)。元は大正天皇が愛用する御料葉巻の製造から始まった物で、1939年(昭和14年)より下賜品としての葉巻が製造されるようになった[14]。昭和末頃以降の物はアルカディアに類似したカンデララッパーであった[15]。軍人向け贈呈品の色彩が強かった事から、大戦後半になるほど製造が増えたのは紙巻と同様であるが、2000年代以降は喫煙人口の減少により皇室の下賜品としては時代にそぐわないとされ、2006年に恩賜の紙巻煙草と共に製造を終了した。
戦後(国内製造)
太字は2004年以降はJTIの海外委託製造で存続した銘柄
- アストリア - 1946年(昭和21年)12月25日~1961年(昭和36年)。連合国軍占領下の日本において製造された初の国産葉巻。1949年(昭和24年)にロンドレス型、1954年(昭和29年)にパナテラ型に形状変更され、パンドールとグロリアの登場に併せて廃止された[13]。
- パンドール - 1961年(昭和36年)2月〜昭和末期。「金色の孔雀」の意。戦後唯一の国産プレミアムシガー[16]。
- グロリア - 1961年(昭和36年)3月15日~現行。戦前の同名銘柄を元にしたドライシガー。JT製造時代は岩手県旧大迫町一帯で生産される「南部葉」で作られていた[13]。2004年以降は英国ギャラハー社となり、名称が「グロリア・プレミアム」に変更。その後数度の製造先変更を経て2016年現在はフィリピンでの手巻き製造銘柄となった。
- パロマ - 1967年(昭和42年)1月1日~現行。戦前の同名銘柄を元にしたシガリロ。上巻葉(ラッパー)はフロリダ葉、てん充葉(フィラー)はマニラ葉。2004年以降は英国ギャラハー社製となり「パロマII」に名称変更していたが[17]。その後数度の製造先変更を経て2016年現在はフィリピンの手巻き製造となり、名称も「パロマ」へと戻された。
- バルカ - 1972年(昭和47年)3月1日〜2004年(平成16年)3月。国産初のチップ(吸口)付きシガリロ。「帆船」をあしらったパッケージ。2004年のJT国内生産終了時に廃止。
- ボニータ - 1973年(昭和47年)2月1日〜2004年(平成16年)3月。樹脂製チップ(吸口)付きシガリロ。バルカより更に安価な価格設定であった。2004年のJT国内生産終了時に廃止[17]。
- アルカディア - 1976年(昭和51年)3月1日〜2004年(平成16年)3月。「角笛を吹く羊飼い」をあしらったパッケージ[17]。上巻葉にカンデラ葉[18]を使用した緑色のドライシガーで、恩賜葉巻のベースともなっていた。2004年のJT国内生産終了時に廃止されたが、その時点ではグロリアよりも上級品の扱いであった。
- ランバージャック - 1978年(昭和53年)10月1日~2020年(令和2年)6月。木樵の意で切り株をあしらったパッケージ。フィルター付き、シート状に加工されたタバコを用い紙巻に類似した製法で巻かれた国産初の「リトルシガー」銘柄。シェリー酒の香付けがされており、国産葉巻では最廉価の銘柄だった[17]。2004年以降は「ランバージャックII」に改称。
- キース・スリム - 1990年(平成2年)3月1日~現行。シートタバコを用いたリトルシガー[17]。2016年現在は複数の銘柄が派生している。
- マリポーサ - 1992年(平成4年)11月2日~現行。蝶をあしらったパッケージ。チョコレートの香付けがされており、シガーとシガリロが存在した。シガーは2004年のJT国内生産終了時に廃止されたが、パンドール廃止後に登場している事から、廃止時点では国内最高級品の扱いであった[17]。シガリロは2004年以降は英国ギャラハー社製となり「マリポーサII」に名称変更していたが、その後数度の製造先変更を経て2016年現在はフィリピンの手巻き製造となり、名称も「マリポーサ」へと戻された。
- ゴールデンバット・シガー - 2019年(平成31年)2月18日~2022年(令和4年)12月中旬。北海道エリア専売。
- わかば・シガー - 2019年(令和元年)9月中旬~現行。
- エコー・シガー - 2019年(令和元年)9月中旬~現行。
- キャメル・シガー - 2019年(令和元年)12月13日~現行。いずれもリトルシガー化することでたばこ税を軽減し価格を抑えた廉価モデル。一部メンソール版あり。
2004年以降(海外委託製造)
- シルクロード - 2008年(平成20年)11月1日~2020年(令和2年)6月。同名のJTIパイプ煙草銘柄のリトルシガー版。2020年に上記ランバージャックと共に廃盤[19]。
- トキ - 2013年(平成25年)12月~現行。国産在来葉を一部用いてドミニカ共和国に製造が委託されているプレミアムシガー。鳥類である「朱鷺」をモチーフとした名称と鴇色のパッケージを用いたのは、かつての国産最高級品のパンドールの再現を目指した為とされる。2014年4月により大柄なロブスト型を追加。2016年現在、JTI銘柄ではグロリアの上位という位置付けである。
- ジョーカー・カオス - 2014年(平成26年)7月1日~現行。1978年から2001年まで存在した同名のJT紙巻銘柄をリトルシガーとして復刻したもの。2020年現在はマンダラ、トリックメンソール(メンソール)を含む4銘柄が販売される。
中国
- ロック (ROCK) - リトルシガー。日本では2020年より大豊通商が輸入販売。
インドネシア
- フォルテ (FORTE) - リトルシガー。日本では2016年よりインターコンチネンタル商事が輸入販売。フィルター付リトルシガー。20本入りと16本入りが存在。
注釈
出典
- ^ a b “JT、ピースの“リトルシガー”を数量限定で発売 高価でも若年層に人気”. ITmedia ビジネスオンライン (2019年11月27日). 2020年1月9日閲覧。
- ^ INC, SANKEI DIGITAL (2019年11月25日). “葉巻の一種「リトルシガー」増税へ 政府・与党検討”. 産経ニュース. 2020年1月9日閲覧。
- ^ シガーラベルの世界 ~葉巻の箱の小さな芸術~(たばこと塩の博物館)
- ^ 日本唯一の葉巻情報サイト「シガーナビ」より
- ^ 柘植製作所小冊子『Cigars』
- ^ “葉巻の正しい吸い方は肺に入れる?ふかす?どちらが正解か解説!”. SUPARI (スパリ) (2020年1月7日). 2021年2月12日閲覧。
- ^ “キューバ葉巻の売上高最高 中国が輸出先3位に”. 共同通信社 (2018年2月27日). 2018年3月2日閲覧。
- ^ a b c d 日本の葉巻 - 日本たばこ産業
- ^ 高度成長期の青春像 1960〜1975 - たばこと塩の博物館
- ^ 葉巻の一種「リトルシガー」増税へ 政府・与党検討 産経新聞社、2019年11月25日(2021年9月2日閲覧)。
- ^ たばこ税等に関する資料 財務省、2021年9月2日閲覧。
- ^ 令和2年度税制改正の大綱(4/9) 財務省、2021年9月3日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i 懐かしい日本のタバコ歴史博物館⑱ 葉巻 - リビングショップ安藤
- ^ 日本専売公社東京工場・工場史編集委員会 編著『たばこと共に七十余年』日本専売公社東京工場発行、1982年、pp.178、181、184-185、187-189
- ^ 恩賜葉巻
- ^ 幻の葉巻。パンドール。 - cigarjapan.com
- ^ a b c d e f 、日本タバコカタログ 08 葉巻タバコ編
- ^ 葉巻の世界へようこそ - シリウスタバコ
- ^ “リトルシガー「ランバージャック」「シルクロード」廃盤のお知らせ 大阪京橋たばこセンターこだま”. 2020年11月12日閲覧。
- ^ Cigar Smoking(ACS)
- ^ [1]
- ^ [2]
- ^ [3]
- ^ 表参道のセレブ犬とカバーニャ要塞の野良犬. 角川文庫. (2017年7月14日)
- ^ 葉巻が大好きなシュワちゃん、シガー・スモーカー・オブ・ザ・イヤーに選ばれる
- ^ 写真:【還暦祭】レジェンド記者が目撃したジャイアント馬場の「後楽園ホールボヤ騒ぎ」 | 東スポWEB
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