第46回衆議院議員総選挙
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/04/17 08:33 UTC 版)
選挙結果
投票率が59.32%と過去最低の総選挙となった。前回総選挙と比較すると10ポイント近い下落となった[18]。
前述の通り自民党の圧勝となったが、比例代表の獲得議席や得票率では議席配分比ほどの大差とはならなかった。実際、自民党の比例代表の議席は前回総選挙と比較しても2議席しか増えておらず、比例の獲得票自体は減少している。これは、政党の乱立により民主党や第三極の各政党が、それぞれの小選挙区に候補者を擁立したことで、票を食い合った点も指摘されている[19]。
2009年の前回の総選挙から解散を経る事なく約3年3か月にわたって続いた民主党政権は、鳩山由紀夫内閣時代の政治と金を巡る疑惑、菅直人内閣下での東日本大震災、福島第一原子力発電所事故への対応や経済不況、尖閣諸島中国漁船衝突事件に対する問題、外交で中国及び米国と関係を損ねた点、野田佳彦内閣での震災復興政策や、2009年に政権交代に伴い掲げたマニフェスト(公約)の多くを実現出来ずに、経済対策でも対応が遅れた点などで国民の失望を買い、野田内閣まで続いた低支持率が選挙結果に影響し、国民の民主党政権に対する厳しい評価が浮き彫りとなった衆議院選挙となった。
選挙の結果、野党第一党の自由民主党は294議席(改選前119議席[20]/解散・公示後の増減を含む。以下同じ)を獲得し、単独で絶対安定多数(269議席)を確保する大勝で第一党に返り咲いた。また、公明党の31議席と合わせて衆議院再可決が可能となる3分の2を超える325議席を獲得し、政権を奪還した。この選挙で圧倒的な安定多数を得た自民党は、公明党と新たな連立政権樹立に合意し、野田佳彦首相の引責辞任と内閣総辞職に伴い、新たに第96代首相に就任した自由民主党総裁安倍晋三によって第2次安倍内閣が発足した。これによって安倍は2007年9月26日の辞任から5年3か月ぶりに首相に再び就任した。首相再就任は1948年(昭和23年)に成立した第2次吉田内閣の吉田茂(第45代・第48 - 第51代)以来64年ぶりである。この時点で参議院では自公両党の合計議席は過半数に達していなかったが、この衆参ねじれ国会は翌年2013年の第23回参議院議員通常選挙での自公連立政権の勝利によって解消された。
一方、与党であった民主党は改選前の230議席からほぼ4分の1、前回衆院選の308議席からは5分の1以下に留まる57議席となり、歴史的かつ壊滅的な大敗を喫した[21][22]。比例代表では日本維新の会に次ぐ第3党に転落した。
特に現職閣僚の落選者が続出し、内閣官房長官の藤村修が現憲法下では初の現職官房長官の落選となったのを始め、総務大臣の樽床伸二、財務大臣の城島光力、文部科学大臣の田中眞紀子、厚生労働大臣の三井辨雄、国家公安委員長の小平忠正、金融担当大臣の中塚一宏の7人が落選。国民新党の郵政民営化担当大臣の下地幹郎も落選したため、現憲法下では最多の8人の現職閣僚が落選した[注釈 1][23]。また、副大臣・大臣政務官も23人落選しており、合わせて31人の政務三役が議席を失う形となった[24]。党執行部も副代表の鹿野道彦、川端達夫、仙谷由人、選対委員長の鉢呂吉雄が落選。さらに鳩山内閣で内閣官房長官を務めた平野博文、不祥事で閣僚を辞任した元法務大臣の田中慶秋、元環境大臣の松本龍なども議席を失った。このほか、前首相の菅直人、前衆議院議長の横路孝弘、元農林水産大臣の赤松広隆、元経済産業大臣の海江田万里、元総務大臣の原口一博、元文部科学大臣の高木義明、元国家戦略担当大臣の荒井聰などの首相・議長・閣僚経験者も選挙区で相次いで敗れ、辛うじて比例復活で議席を確保した。内閣総理大臣経験者と直近の元衆議院議長の比例復活は現行の小選挙区比例代表並立制が導入されて以降初の例となった[注釈 2]。また政権与党の候補者でありながら、供託金没収となる選挙区も発生した[注釈 3]。議席数は1998年の結党以来最少にまで落ち込み、同党の参議院議員の数(88人)より少なくなった[25]。野田首相は「最大の責任は私にあります」と即日党代表の辞任を表明した[26]。同様に連立与党であった国民新党は小選挙区を制した野間健の1議席に留まった。
選挙での動向が注目されていたいわゆる第三極では日本維新の会が54議席(改選前11議席)、みんなの党が18議席(改選前8議席)と大幅に躍進した。選挙区では維新・みんなの候補が民主候補を上回り2位に付けるケースも相次いだ。また比例では維新が近畿ブロックで10議席を獲得するなど全ブロックで1議席以上を獲得。みんなの党も北海道・中国・四国各ブロック以外で議席を獲得している。維新では前東京都知事の石原慎太郎が国政に復帰を果たし、前宮崎県知事の東国原英夫[注釈 4]、その後の維新の執行部を担う馬場伸幸などが初当選し国政に進出している。なお、維新・みんなの両党は一部で選挙協力を行ったが、28の選挙区では競合し、東京2区・東京5区・東京6区・長野3区の4選挙区では日本維新の会公認候補とみんなの党公認候補の得票数の合計では当選した他党公認候補の得票数を上回るにもかかわらず共倒れする結果となった。民主党から維新またはみんなの党に移籍して立候補した者も数名いたが、当選できたのは維新は元環境大臣の小沢鋭仁、元内閣官房副長官の松野頼久と石関貴史、今井雅人、阪口直人(全員が比例復活)の5名、みんなの党は杉本和巳(比例復活)の1名であった。
一方、民主党離党者を糾合し結成した日本未来の党は、改選前61議席から激減し9議席と惨敗を喫した。新進党時代から非自民勢力間で権勢を誇っていた小沢一郎系の勢力は影響力が薄れたこともあり、小選挙区で議席を獲得できたのが小沢と亀井静香の2名のみで、比例区も北海道・北陸信越・中国・四国の各ブロックを除いて議席を獲得したが各1議席に留まり、比例票も伸び悩んだ。元国家公安委員長の山岡賢次や元農林水産大臣の山田正彦といった民主党政権での閣僚経験者に加え、前回選挙で民主党躍進の象徴でもあった岡本英子、三宅雪子、福田衣里子などの小沢チルドレン(小沢ガールズ)のほとんどが議席を失う結果となった。選挙直前の11月に結党した日本未来の党は大敗を契機に、代表であった滋賀県知事の嘉田由紀子系と小沢系の内紛が表面化し、早くも同年12月には小沢系は未来の党を継続する形で「生活の党」に改称、嘉田系は別の政治団体「日本未来の党」を設立し分裂したため、日本未来の党はわずか1か月ほどで消滅する結果となった。同様に未来の党と協調路線を取った新党大地は比例北海道ブロックの1議席に留まり、所属国会議員が3名となったことで政党要件を喪失した。
鳩山内閣後に政権から離脱した社会民主党は、小選挙区で照屋寛徳と比例区で九州ブロックの吉川元がそれぞれ議席を獲得しただけに留まり、改選前から3議席を失い得票数もほぼ半減させた。民主党政権と距離を置いていた日本共産党も改選前から1議席を失うなど、結果的に第三極に埋没する形で左派・中道左派政党の敗北が目立つ形となった。
この選挙の結果、12月26日の第182回国会において第2次安倍内閣(自公連立政権)が発足した。2009年9月に発足した民主党を中心とする政権は1期・3年3カ月(1,198日)で幕を閉じた[27][28]。
党派別獲得議席
党派 | 獲得 議席 |
増減 | 小選挙区 | 比例代表 | 公示前 | ||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
議席 | 得票数 | 得票率 | 議席 | 得票数 | 得票率 | ||||||
自由民主党 | 294 | 176 | 237 | 25,643,309.437 | 43.01% | 57 | 16,624,457 | 27.62% | 118 | ||
公明党 | 31 | 10 | 9 | 885,881.000 | 1.49% | 22 | 7,116,474 | 11.83% | 21 | ||
民主党 | 57 | 173 | 27 | 13,598,773.592 | 22.81% | 30 | 9,628,653 | 16.00% | 230 | ||
国民新党 | 1 | 1 | 1 | 117,185.000 | 0.20% | 0 | 70,847 | 0.12% | 2 | ||
日本維新の会 | 54 | 43 | 14 | 6,942,353.536 | 11.64% | 40 | 12,262,228 | 20.38% | 11 | ||
みんなの党 | 18 | 10 | 4 | 2,807,244.610 | 4.71% | 14 | 5,245,586 | 8.72% | 8 | ||
日本未来の党 | 9 | 52 | 2 | 2,992,365.627 | 5.02% | 7 | 3,423,915 | 5.69% | 61 | ||
日本共産党 | 8 | 1 | 0 | 4,700,289.803 | 7.88% | 8 | 3,689,159 | 6.13% | 9 | ||
社会民主党 | 2 | 3 | 1 | 451,762.273 | 0.76% | 1 | 1,420,790 | 2.36% | 5 | ||
新党大地 | 1 | 2 | 0 | 315,604.000 | 0.53% | 1 | 346,848 | 0.58% | 3 | ||
幸福実現党 | 0 | 0 | 65,983.000 | 0.11% | 0 | 216,150 | 0.36% | 0 | |||
新党改革 | 0 | - | - | - | 0 | 134,781 | 0.22% | 0 | |||
新党日本 | 0 | 1 | 0 | 62,697.000 | 0.11% | - | - | - | 1 | ||
二十一世紀日本維新会 | 0 | 0 | 17,711.000 | 0.03% | - | - | - | 0 | |||
当たり前党 | 0 | 0 | 7,831.000 | 0.01% | - | - | - | 0 | |||
アイヌ民族党 | 0 | 0 | 7,495.000 | 0.01% | - | - | - | 0 | |||
安楽死党 | 0 | 0 | 2,603.000 | 0.00% | - | - | - | 0 | |||
世界経済共同体党 | 0 | 0 | 1,011.000 | 0.00% | - | - | - | 0 | |||
無所属 | 5 | 5 | 5 | 1,006,468.027 | 1.69% | - | - | - | 10 | ||
欠員 | 0 | 1 | - | - | - | - | - | - | 1 | ||
総計 | 480 | 300 | 59,626,567.905 | 100.0% | 180 | 60,179,888 | 100.00% | 480 | |||
有効票数(有効率) | - | - | - | 59,626,568 | 96.69% | - | 60,179,888 | 97.60% | - | ||
無効票数(無効率) | - | - | - | 2,040,970 | 3.31% | - | 1,480,081 | 2.40% | - | ||
投票総数 | - | - | - | 61,667,538 | - | - | 61,659,969 | - | - | ||
不足数 | - | - | - | 1,935 | - | - | 2,978 | - | - | ||
投票者数(投票率) | - | - | - | 61,669,473 | 59.32% | - | 61,662,947 | 59.31% | - | ||
国内投票者数(投票率) | - | - | - | 61,648,335 | 59.36% | - | 61,641,381 | 59.35% | - | ||
在外投票者数(投票率) | - | - | - | 21,138 | 19.97% | - | 21,566 | 20.38% | - | ||
棄権者数(棄権率) | - | - | - | 42,290,393 | 40.68% | - | 42,296,919 | 40.69% | - | ||
国内棄権者数(棄権率) | - | - | - | 42,205,695 | 40.64% | - | 42,212,649 | 40.65% | - | ||
在外棄権者数(棄権率) | - | - | - | 84,698 | 80.03% | - | 84,270 | 79.62% | - | ||
有権者数 | - | - | - | 103,959,866 | 100.0% | - | 103,959,866 | 100.0% | - | ||
国内有権者数(国内率) | - | - | - | 103,854,030 | 99.90% | - | 103,854,030 | 99.90% | - | ||
在外有権者数(在外率) | - | - | - | 105,836 | 0.10% | - | 105,836 | 0.10% | - | ||
出典:平成24年12月16日執行 衆議院議員総選挙・最高裁判所裁判官国民審査結果調 - 総務省 |
- 小選挙区投票率:59.32%(前回比: 9.96%)
- 【男性:60.14%(前回比: 9.32%) 女性:58.55%(前回比: 10.57%)】
- 在外投票率:19.97%(前回比: 6.12%)
- 【男性:23.23%(前回比: 5.58% 女性:16.99%(前回比: 6.37%)】
- 比例代表投票率:59.31%(前回比: 9.96%)
- 【男性:60.13%(前回比: 9.31% 女性:58.55%(前回比: 10.56%)】
- 在外投票率:20.38%(前回比: 6.35%)
- 【男性:23.49%(前回比: 5.86% 女性:17.52%(前回比: 6.58%)】
注釈
出典
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