河童
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名称
「かっぱ」は、「かわ(川)」に「わらは(童)」の変化形「わっぱ」が複合した「かわわっぱ」が変化したもの。河太郎(かわたろう)とも言う。ほぼ日本全国で伝承され、その呼び名や形状も各地方によって異なるが、芥川龍之介の1927年の小説『河童』によって知名度が上がり、代表的な呼び名となった[要出典]。
外見
体格は子供のようで、全身は緑色または赤色。頭頂部に皿があることが多い。皿は円形の平滑な無毛部で、いつも水で濡れており、皿が乾いたり割れたりすると力を失う、または死ぬとされる。口は短い嘴で、背中には亀のような甲羅が、手足には水掻きがあるとする場合が多く、肛門が3つあるとも言われる。体臭は生臭く、姿は猿やカワウソのようと表現されることもある。
両腕は体内で繋がっており、片方の腕を引っ張るともう片方の腕が縮み、そのまま抜けてしまうこともあるとされ、これは、中国のサル妖怪で、同様に両腕が体内で繋がっていると言われる「通臂猿猴」の特徴と共通している。
18世紀以前の本草学・博物学書上における河童のイメージは両生類的ではなかった[4]。例えば、文安元年(1444年)に成立した『下学集』には「獺(カワウソ)老いて河童(カワロウ)に成る」とある。また、『日葡辞書』の「カワラゥ」の項では、川に棲む猿に似た獣の一種と説明されている。18世紀半ばに、山がなく猿に馴染みのない江戸の人びとに受容しやすい、カエルやスッポンに似せた両生類的な江戸型の河童のモデルが生まれ、19世紀には出版物を通じて全国に伝播し、置き換えられていった[5]と考えられている。
亀人形態
体はウロコで覆われ、嘴があり、頭には皿を乗せている。頭の皿が割れると死ぬ、または力を失い衰弱する。背中に甲羅があり手足に水掻きがある。絵画では、親指がない、爬虫類状の手をした姿で描かれることが多い。亀のように四本足で歩く絵も見受けられる。
絵の題材にされることは多いが、キュウリが好物という以外には、具体的に何をしたという特徴もない。一般的な河童の想像図に近い反面、目撃談は少ない。
類人猿形態
全身が毛に覆われている。口には牙があり、鼻の造形がはっきりしない。頭部にはくぼみがあり、そこに常に水を溜めている。頭部の水が乾くと死ぬ、または衰弱する。手には親指があり、足にはかかとがある。相撲が得意で、よく人間の子供と遊ぶ。
存在する河童絵の3割程度は猿型だが、中には背中の甲羅が書かれていないものもある。
北海道のミントゥチがアイヌの古い伝承しかないのに対し、九州本土や五島列島、沖縄などでは近世・近代の目撃が非常に多い。
昭和以降の目撃談にある「遠目には人間に見えた」とする印象に近く、甲羅を紐で結んでいる絵も多く見受けられるので、甲羅様の道具を蓑のように使っている人間であるとも考えられている。ごくまれに、甲羅でなく蓑のようなものに背中を覆われている絵もある。
九州では人間の歌や落石、倒木、ダイナマイトの爆破音を真似するという伝承がある。河童が人間を真似た歌は、節は奇麗だが、言葉は不明だったとされている。
行動
川や沼の中に住み、泳ぎが得意。博多湾岸の伝承のように[7][8]、海に住むと伝わるものもある。
河童にまつわる民話や伝承には、「悪戯好きだがひどい悪さはしない」とか「土木工事を手伝った[* 1]」とか、「河童を助けた人間に魚を贈った[8]」「薬の製法を教えた」「溺死者が出ないようにすると誓った[7]」といった友好、義理堅さを伝えるものも多く伝わる。一方で、水辺を通りかかったり泳いだりしている人を水中に引き込み溺死させたり、尻子玉/尻小玉(しりこだま)を抜いて殺したりするといった悪事を働く描写も多い。
尻子玉とは人間の肛門内にあると想像された架空の臓器で[* 2]、河童は、抜いた尻子玉を食べたり、竜王に税金として納めたりするという。ラムネ瓶に栓をするビー玉のようなものともされ[9]、尻子玉を抜かれた人は「ふぬけ」になるとされる。「尻子玉を抜かれている」状態は、人間の死体において肛門括約筋が弛緩していることに由来する(つまり死を間接的に意味する)のではないかと考えられる[10]。人間の肝が好物ともいうが、これも前述と同様に、溺死者の姿が、内臓を抜き去ったかのように見えたことに由来するといわれる[11]。
相撲が大好きで、よく子供を相撲に誘い、相撲に負けた子供の尻子玉を抜くという伝承もある。河童は人間の大人よりも力が強いが、「仏前に供えた飯を食べた後に闘えば子供でも負けない」と言われている。また相撲をとる前にお辞儀をすると河童もお辞儀を返し、それにより頭の皿の水がこぼれてしまうため、力が出せなくなるともいう。河童が相撲を好むのは、相撲が元々、水神に奉げる行事だったためとも言われる[12]。
好物はキュウリや魚、果物。これにちなみ、キュウリを巻いた寿司のことを「カッパ巻き」と呼ぶ。キュウリを好むのは、河童が水神の零落した姿であり、キュウリは初なりの野菜として水神信仰の供え物に欠かせなかったことに由来するといわれる[13]。
鉄、鹿の角、猿、金属を嫌う。河童は水に12時間潜っていられるが、猿は24時間潜れたので闘うと猿に負けるという民話もある。シダの葉で頭をなでると人間に化けることができるとされる。
注釈
- ^ 合羽橋など、地名の由来となっている例もある。
- ^ 胃や腸などの内臓を意味するという説もある。
- ^ 『日本書紀』には「時天皇夢有神 誨之曰 武臟人強頸 河內人茨田連衫子 衫子 此云 於河伯 必獲塞 則覓二人而得之 因以禱於河神」の「河伯、河神」(仁徳天皇11年条〈西暦換算:323年条〉)や、「於吉備中國川島河派 有大虯令苦人」の虯令(みづち)(仁徳天皇67年条〈西暦換算:379年条〉)など河神の記述がある。
- ^ “河童のコスプレ局員が巡回? 先日立ち寄った道原貯水池内で見つけたナイスな注意書き”. げたきち通信(非公式ウェブサイト). 個人 (2016年8月1日). 2019年8月13日閲覧。■ページトップにて、河童の注意書き看板の画像を16種類・16か所分掲載している。注意を促す文は「立入禁止」「きけん」「あぶない!!」「はいるな!」「ここであそんではいけません」「このなかはあぶないぞ!」などなど。管理者名に「国土交通省」「土地改良区」「千葉県」「北九州市水道局」「所沢警察署」などとあるものは、公的に認められた看板である。「○○土木事務所」「○○PTA」などもあるのが分かる。
- ^ “河童の正体とは何か?”. 探検コム(非公式ウェブサイト). 個人. 2019年8月14日閲覧。■ページトップに、「このへんはこわいぞ」の文字と不敵に笑う河童のイラストで構成された注意書き看板の画像が掲載されている。
- ^ バッジ自体は1956年から販売。
出典
- ^ 『魁本大字類苑』谷口安定、1889年。
- ^ 京極夏彦、多田克己編著『妖怪図巻』国書刊行会、2000年、147頁。ISBN 978-4-33-604187-6。
- ^ 多田克己『幻想世界の住人たち』 IV、新紀元社〈Truth in fantasy〉、1990年、110頁。ISBN 978-4-91-514644-2。
- ^ 香川 2014, pp. 55–60.
- ^ 香川 2014, pp. 60–69.
- ^ “北斎漫画~森羅万象のスケッチ”. 公式ウェブサイト. 太田記念美術館 (2016年). 2019年8月12日閲覧。
- ^ a b c 山内勝也「河童の証文-百道での溺死人なくす」福岡市市長室広報課・編『ふくおか歴史散歩』第二巻 福岡市 1983年 P.107-108
- ^ a b c 山内勝也「地行河童の松-酒好きの河童が恩返し」福岡市市長室広報課・編『ふくおか歴史散歩』第二巻 福岡市 1983年 P.109-110
- ^ 『広辞苑』 尻子玉 - コラム・イナモト 2006-12-21 尻子玉参照。
- ^ 若尾五雄「河童の荒魂」、近畿民俗学会会報 近畿民俗 (56)所収
- ^ 石川純一郎『河童の世界』(新版)時事通信社、1985年、129-131頁。ISBN 978-4-78-878515-1。
- ^ 吉川豊『ドキドキ! 妖怪めぐり』理論社、2000年、22頁。ISBN 978-4-65-201534-6。
- ^ 『河童の世界』、231-237頁。
- ^ 折口信夫『古代研究II』223–252頁、中公クラシックス、2003年
- ^ 柳田國男『遠野物語』
- ^ “第3章 珍禽奇獣異魚 - 描かれた動物・植物”. 国会図書館 (2005年). 2012年6月10日閲覧。
- ^ 中山市朗『妖怪現る』(遊タイム出版、1994年)など。
- ^ 1991年 河童が人家に入りこんだ?『ムーSPECIAL 戦後日本オカルト事件FILE』(学研プラス)
- ^ 本堂清『河童物語』 批評社 2015年 ISBN 978-4-82-650630-4 pp.18,36.
- ^ 石川純一郎『河童の世界』新版 時事通信社 1985年 ISBN 978-4-78-878515-1 pp.83-84.
- ^ “駿国雑志24巻下”. 令和2年11月17日閲覧。
- ^ “駿国雑志24巻下”. 令和2年11月17日閲覧。
- ^ “駿国雑志25巻”. 令和2年11月17日閲覧。
- ^ “河童の妙薬(久下地域)”. 熊谷市. 2022年11月25日閲覧。
- ^ “曼荼羅淵の河童”. 真言宗豊山派 秋津不動尊持明院 河童寺. 2022年11月25日閲覧。
- ^ 佐久教育会歴史委員会編『限定復刻版 佐久口碑伝説集 南佐久篇』佐久教育会、1978年、93 - 94ページ。
- ^ 宮本幸枝・熊谷あづさ『日本の妖怪の謎と不思議』学習研究社〈GAKKEN MOOK〉、2007年、33頁。ISBN 978-4-05-604760-8。
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- ^ "カッパ捕獲許可証"が岩手県で発行!! カッパは捕獲できるのか!?
- ^ この夏は「カッパ捕獲許可証」を手に入れてカッパを探す旅に出よう!
- ^ 写真入りカッパ捕獲許可証ゴールドのお客様へ
- ^ かっぱ捕獲許可証を取得しカッパ淵で捕獲大作戦?【岩手県】
- ^ 「かっぱハウス:14年ぶり再開 銚子、土日祝日に」『毎日新聞』朝刊2017年7月25日(千葉県版)、『産経新聞』朝刊2018年4月27日「【大人の遠足】千葉・銚子 大内かっぱハウス/グッズ4000点が並ぶ異空間」。
- ^ おもしろかっぱ館(2018年4月30日閲覧)
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- ^ “レファレンス事例集 : かつて東京都の都民の日につけて都営施設に行くと無料で入場できた「カッパのバッジ」の(1)デザインの由来、(2)写真が見たい。(2020年)”. 江戸東京博物館. 2023年10月7日閲覧。
- ^ a b “「カッパバッジ」新デザインで復活 東京都”. 日本経済新聞電子版. 日本経済新聞社 (2018年6月2日). 2023年10月7日閲覧。
- ^ 「Old meets New 東京150年」事業について東京都報道発表(2018年1月5日)
- ^ 『広辞苑』
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