保証
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/09/22 02:19 UTC 版)
保証債務の消滅
消滅における付従性
弁済や相殺によって主たる債務が消滅すれば保証債務も消滅する(消滅における付従性)。
ただし、主たる債務が債務不履行に陥って契約を解除された場合、主たる債務は損害賠償債務や原状回復義務による債務へと変化するが、保証債務はその債務をも担保する。
また、契約がいったんは有効に成立しながらも後に合意によって解除された場合、ここで生じる損害賠償や原状回復義務は合意解除の際の債権者と主たる債務者による新たな取り決めによって発生したものである。原則からいえば元の主たる債務は消滅しているのだから保証債務も消滅するのだが、この合意によって生じた債務についても保証の効果が及ぶとされる。ただし、保証人の関知しないところでなされた合意によって債務が生じるのだから、保証人に過大な責任を押し付けることも考えられる。そこで保証人を保護するため、保証債務が存続するのはその内容が従前よりも重いものではないときに限られるとされる。
求償権の問題
保証人が債権者に対して債務を弁済した場合(つまり肩代わりをした場合)、保証人は債務について最終的な責任を負うものではないから、主たる債務者に対して求償できる。しかし、保証人となった経緯に応じて求償できる範囲や方法が異なる。
委託を受けた保証人の求償権
保証人が主たる債務者の委託を受けて保証をした場合において、主たる債務者に代わって弁済その他自己の財産をもって債務を消滅させる行為(以下「債務の消滅行為」という。)をしたときは、その保証人は、主たる債務者に対し、そのために支出した財産の額(その財産の額がその債務の消滅行為によって消滅した主たる債務の額を超える場合にあっては、その消滅した額)の求償権を有する(459条1項)。債務の消滅行為にあたっては後述の主たる債務者への事前通知と事後通知を要する。
2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)で委託を受けた保証人が弁済期前に弁済等をした場合の求償権の規定が新設された(459条の2)。主たる債務の弁済期前の保証人の弁済等は、委託の趣旨に反すると考えられることから、委託を受けない保証の場合と同様の範囲にまで求償を制限する趣旨である[1]。
債務が弁済期にあるときなど以下の場合には、委託を受けた保証人は、保証債務を履行する前でも、あらかじめ主たる債務者に求償することができる(460条、事前求償権)。
- 主たる債務者が破産手続開始の決定を受け、かつ、債権者がその破産財団の配当に加入しないとき。
- 債務が弁済期にあるとき。ただし、保証契約の後に債権者が主たる債務者に許与した期限は、保証人に対抗することができない。
- 保証人が過失なく債権者に弁済をすべき旨の裁判の言渡しを受けたとき。
- なお、2017年の改正前の460条3号は「債務の弁済期が不確定で、かつ、その長期をも確定することができない場合において、保証契約の後十年を経過したとき。」とされていたが、主たる債務の額すら確定できない場合であったため削除された[1]。
委託を受けない保証人の求償権
- 主たる債務者の意思に反しない場合
- 主たる債務者の意思に反して保証人となった場合
- この場合、保証人は、求償の時点で主たる債務者が利益を受けている限度で求償できる(462条2項)。
通知義務
- 事前通知
- 事後通知
- 委託を受けた保証人及び委託を受けないが主たる債務者の意思には反しない保証人の場合、債務の消滅行為をしたときは主たる債務者に事後通知を要する[3]。事後通知がなく、主たる債務者が善意で債務の消滅行為をしたときは、主たる債務者は、その債務の消滅行為を有効であったものとみなすことができる(463条3項)[3]。
- 委託を受けず主たる債務者の意思にも反する保証人の場合、求償権は主たる債務者が求償時に現に利益を受けている限度とされているため(462条2項)、保証債務が履行された後に主たる債務者が債務の消滅行為をした場合には利益はなく求償できない[3]。そのため2017年改正の民法(2020年4月1日法律施行)では、委託を受けず主たる債務者の意思にも反する保証人の場合、事後の通知の有無にかかわらず、主たる債務者の債務の消滅行為を有効とみなすとされた(463条3項)[3]。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v “民法(債権関係)改正がリース契約等に及ぼす影響 (PDF)”. 公益社団法人リース事業協会. 2020年3月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o “民法(債権関係)の改正に関する 要綱仮案における重要項目 (PDF)”. 兵庫県弁護士会. 2020年3月25日閲覧。
- ^ a b c d e f g “改正債権法の要点解説(3) (PDF)”. LM法律事務所. 2020年3月25日閲覧。
- ^ “時効利益の放棄”. 三井住友トラスト不動産. 2020年3月25日閲覧。
- ^ 潮見佳男『プラクティス民法債権総論(第3版)』信山社、608頁
- ^ a b 荒井俊行. “民法(債権関係)改正案に関するノート(IV)多数当事者関係(連帯債務を中心に) (PDF)”. 土地総合研究 2015年夏号. 2020年3月25日閲覧。
保証と同じ種類の言葉
品詞の分類
「保証」に関係したコラム
-
株365や株式投資、FX、CFDなどで必ず儲かるという謳い文句で投資を勧誘する手口が後を絶ちません。勧誘の手口には次のようなものが挙げられます。「絶対儲かる。借金してでも投資する価値がある。」と絶対儲...
-
海外のCFD業者を使ってCFD取引を行うメリットは、日本国内のCFD業者よりもレバレッジが高い点が挙げられます。レバレッジが高ければ、少ない証拠金で取引ができます。中には、日本国内のCFD業者のレバレ...
-
FX(外国為替証拠金取引)の信託保全とは、FX業者が、顧客から預託された保証金を保全するために金銭信託することです。顧客から預託された保証金は、「金融商品取引業等に関する内閣府令の一部を改正する内閣府...
-
海外のFX業者とは、日本に現地法人を設立していないFX業者のことです。海外のFX業者と日本国内のFX業者との大きな違いは、日本国内の法律が適用されるかどうかです。日本国内のFX業者の場合は「金融商品取...
-
CFDの口座を開設する時には、CFD業者の提示する契約書に同意しなければなりません。契約書には、銀行に口座を作る時や商品を分割で支払う際のクレジット契約の時などと同様に細かく取引時のルールが明記されて...
-
FX(外国為替証拠金取引)とくりっく365とではどこが違うのでしょうか。ここでは、FXとくりっく365の比較をして違いをまとめました。▼為替レートFXでは、FX業者の提供する為替レートになります。FX...
- >> 「保証」を含む用語の索引
- 保証のページへのリンク