アメリカ合衆国下院121号決議
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決議成立後の動き
日本
保守論客で構成されている新しい歴史教科書をつくる会は「慰安婦の証言は嘘であると明確に証明されているにもかかわらず、このような決議が米国下院で採択されたのは残念だ。」と抗議した[37]。右派言論人で組織された史実を世界に発信する会は「歴史事実を極度に歪曲し、存在しないものを捏造した前提の上で成り立っているもの」と批判し、7月31日に下院議員全員に抗議書を送致した[38]。産経新聞や読売新聞は「誤った歴史認識に基づく根拠のない対日非難」とこの決議を厳しく批判した。毎日新聞の社説は、イラク戦争におけるアメリカ軍による人権侵害や、アメリカに存在する、広島・長崎に対する原子爆弾投下を正当化する歴史認識も含め、米国には自らの過ちを反省する謙虚さを求めたいと批判した。一方で朝日新聞の社説は、決議は首相に謝罪を求めており、河野談話に沿った内容の談話を安倍首相が出すべきだと、米国の決議に沿った主張をしたため、主要新聞の中で「朝日社説だけが『孤立』」と報じられた[39]。地方紙の中には[40]安倍首相が日米間に生じた溝を埋めるための説明責任を果たす必要があるとする主張も見られた。
なお、アメリカ議会がこのような態度に出たのは、いわゆる人権外交の一環でありアメリカの価値観にそぐわなければ同盟国であっても容赦しない姿勢があったという見方もある[41]。一方で日本の右派・保守派の中にはアメリカの揺るぐことなき第二次世界大戦における戦勝史観からすれば、背景に日本軍は卑怯で愚劣であったとする「思考停止的」な歴史認識もあるとの指摘もある[41]。
決議案が成立すると戦時性的強制被害者問題の解決の促進に関する法律案の成立を目指す民主党の岡崎トミ子・千葉景子らは決議の可決に感謝の意を示し、小川敏夫は国会で決議に異議を唱える総理大臣の安倍晋三を強く非難した。また、兵庫宝塚市、東京清瀬市、北海道札幌市の各市議会では日本政府に誠実な対応を求める意見書が採択された。2008年11月23日に開催された第9回日本軍「慰安婦」問題アジア連帯会議では、決議可決を受けて「謝罪と補償のための法律を制定するよう、あらゆる方法を駆使して日本政府に働きかける」「国際連帯をいっそう強化する」「歴史認識を育て、記憶を継承し、女性に対するいかなる暴力も人権侵害も許さない運動を推進する」などの綱領を採択した。
日本国外の対応
2007年7月4日、アラブ諸国大手のマスメディア、アルジャジーラが「アメリカは日本・中国・朝鮮半島間で問題を発生させた」という記事を掲載し「アメリカは、何故日本だけに対し従軍慰安婦決議案を出したのか?アメリカはベトナム戦争で罪もない何千人以上の人々を化学兵器で殺戮をしたのに謝罪は無く、さらには暴力でアフリカ人をアフリカからアメリカに強制移住させたことにも一切謝罪していない」と述べ、「アメリカは日本・中国・朝鮮半島間にわざとトラブルを発生させ、目的を達成させたいようだ」と述べた[42]。
英国のBBCは、アメリカ合衆国ラントス下院外交委員長(民主)の批判「吐き気を催させる否定」 (Nauseating denial)を 引用し日本の保守論客を非難した[43]。
当決議案採択の後、フィリピンやオーストラリアの議会でも慰安婦問題に関して日本の謝罪を求める決議案が提出された。[44]
韓国の対応
慰安婦決議の成立を主導した在米韓国人の団体「韓人有権者センター」は、日本による行為とその被害を米社会に知らせるためとして、ニューヨーク、ロサンゼルス、シカゴ、バージニア州など韓国人が多く居住する地域を中心に追慕碑を建設することを決定し、署名と募金運動を展開している[45]。
在米韓国大使の金殷石は決議を成立させるために奔走した功労が認められ、2008年に勤政褒章を受賞した[46]。
注釈
- ^ 詳しくは河野談話を参照。
- ^ アジア女性基金の補償金を受け取った元慰安婦が少数にとどまる理由として、ラリー・ニクシュによる2007年4月3日の米国議会報告書では次の三つの理由を挙げている。一番目は名乗り出ることにより受けうる社会的不名誉、二番目は日本政府公式の物でない点への不満、三番目は政府やNGOによる受取への厳しい反対圧力であり、最後の点について韓国では特に強く見られるとしている[8]。
- ^ 設立背景に占領軍による強姦事件等があるとはいえ、実際には日本政府が自主的に設置したもの(但しGHQ側が、政府設置以外の更なる慰安所を要求した事はある)。詳しくは「特殊慰安施設協会」を参照。
- ^ この意見広告は島村宜伸、河村たかしら自民、民主両党の超党派の国会議員ら計44人と保守論客らの連名。全面広告の画像
- ^ 白馬事件を参照。
出典
- ^ 2007年7月31日 日本経済新聞『米下院、本会議で慰安婦決議を可決』
- ^ a b 2007年7月31日 産経新聞
- ^ “Scarcely an Abe-rration”. The Economist (2007-3-8). オリジナルの2019-12-16時点におけるアーカイブ。 2019年12月16日閲覧. "Now Mr Abe has said that there is no “historical proof” that coercion was involved. In other words, that the women are liars."
- ^ “Shinzo Abe's Double Talk” (英語). ワシントン・ポスト. (2007年3月24日) 2015年8月7日閲覧。
- ^ “世界のメディアが注目する「慰安婦問題」”. JANJAN. (2007年4月18日) 2010年2月5日閲覧。
- ^ 米の知日派が憂慮 慰安婦めぐる安倍首相発言 朝日新聞 2007.3.10
- ^ 元従軍慰安婦への償い事業 光と影~アジア女性基金解散にあたり, JANJAN, 2007/04/18. ミラー
- ^ Larry Niksch. Japanese Military's "Comfort Women" System. - ウィキソース.15-16page
- ^ (朝鮮語) 위안부 문제, '일본 때리기'만이 능사인가, Pressian, 2007-04-13.
- ^ (朝鮮語) ‘일본녀’ 불똥 튄 박유하 교수 “YTN이 왜곡했다”, 데일리서프라이즈(デイリーサプライズ), 2007-04-07. 朝鮮語ミラー
- ^ 「朝日新聞社慰安婦報道 第三者委員会報告書(要約版)〈1〉」『朝日新聞』2014年12月23日、朝刊、p. 24。
- ^ 『AERA』2007年8月13日・20日号
- ^ 「朝日新聞」2007-3-10
- ^ “「従軍慰安婦」強制を否定 自民・民主議員ら 米紙への意見広告 批判・怒り世界から 米副大統領も「不愉快」”. しんぶん赤旗. (2007年6月24日) 2009年12月20日閲覧。
- ^ “日本の慰安婦関連広告、米副大統領や議員が猛反発”. 聯合ニュース. (2007年6月18日) 2010年4月22日閲覧。
- ^ 西村幸祐 (2007年6月). “酔夢ing Voice - 西村幸祐 -”. 2009年12月20日閲覧。
- ^ a b c d e “米下院外交委「慰安婦」決議を採択…日本政府に謝罪要求”. YOMIURI ONLINE (読売新聞). (2007年6月27日). オリジナルの2007年7月1日時点におけるアーカイブ。 2015年8月7日閲覧。
- ^ U.S. House committee passes resolution demanding Japan's apology on comfort women
- ^ 『読売新聞』2007年6月27日付朝刊
- ^ a b “米慰安婦決議に「憂慮」 平沼氏ら、共同研究を提案”. 共同通信社. 47NEWS. (2007年6月27日). オリジナルの2013年4月30日時点におけるアーカイブ。 2022年3月12日閲覧。
- ^ 『読売新聞』2007年6月28日付紙面
- ^ 『読売新聞』2007年6月29日朝刊「慰安婦」決議、自民議員が米下院に声明送付へ
- ^ 米下院外交委員会への抗議書
- ^ 『産経新聞』2007年7月13日地方議員ら、米下院慰安婦非難決議に抗議
- ^ “慰安婦決議案「日米に害及ぼす」加藤駐米大使が警告”. 産経新聞. (2007年7月20日) 2010年2月5日閲覧。
- ^ “慰安婦決議で新聞「猛反発」 朝日社説だけが「孤立」”. ジェイ・キャスト. (2007年8月1日) 2010年2月5日閲覧。
- ^ “日本、米国領グアムでも慰安婦強制動員に介入”. 中央日報. (2007年7月26日) 2010年2月5日閲覧。
- ^ 吉見義明『従軍慰安婦』岩波書店 1995年参照
- ^ 『毎日新聞』2007年8月1日朝刊
- ^ 「慰安婦」決議案、政府は静観の構え…一部議員に強い反発[リンク切れ] 読売新聞 (2007年6月27日)
- ^ 『朝日新聞』2007年6月26日朝刊
- ^ “慰安婦決議 首相は説明責任がある”. 中国新聞. (2007年8月2日) 2010年2月5日閲覧。
- ^ 『朝日新聞』2007年8月1日朝刊
- ^ 第9回アジア連帯会議報告 [1]
- ^ 時事通信2007年8月1日付
- ^ 慰安婦問題、日本の対応に満足=謝罪要求決議支持せず-米政府 時事通信社、2007年8月1日確認
- ^ 米国下院が「慰安婦対日非難決議」を採択「つくる会」は「河野談話」破棄を求める声明を発表
- ^ 『米国下院議会へ陸続と抗議文 日本の保守系文化人が立ち上がる』 宮崎正弘の国際ニュース・早読み
- ^ 慰安婦決議で新聞「猛反発」 朝日社説だけが「孤立」
- ^ 『中国新聞』2007年8月2日
- ^ a b 『中国新聞』および『山陽新聞』2007年6月28日付朝刊(時事通信社配信の記事より)
- ^ “The U.S. wants to create trouble between Japan, China and Korea” - Aljazeera.com
- ^ “US urges 'comfort women' apology”. BBC. (2007年7月31日)
- ^ 「慰安婦決議案、比下院に提出 米決議の追い風期待」朝日新聞2007年8月13日付
- ^ 聯合ニュース 「慰安婦問題忘れない」、在米同胞が追慕碑設立推進[2]
- ^ [3]中央日報2008年01月08日、<ピープル>慰安婦非難決議・査証免除、米議会可決の「影武者」
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