DNSブロッキング・リダイレクトに対する批判
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/04/04 02:42 UTC 版)
「PROTECT IP Act」の記事における「DNSブロッキング・リダイレクトに対する批判」の解説
当初この法案には、不正サイトをインターネットの仮想”電話帳”(=DNS)から除去する手法が含まれていた。これはDNSリダイレクトと呼ばれ、ユーザーが不正サイトにアクセスしようとすると、DNSが同サイトの代りに政府の警告画面へとリダイレクトするという仕組みである。 NPO団体パブリック・ナレッジのシャーウィン・シー(Sherwin Siy)によると、かつてドメインをブロックすることでオンライン著作権侵害を防ごうとした際、DNSの破壊行為でありインターネットのグローバルな機能性を脅かすとして批判を招いた件があるが、この法案はそれと大差ないという。世界中のドメインネームサーバは同一リストをもつことになっているが、PIPA法案に従えば米国内のサーバだけが世界中のサーバとは異なるデータを持つことになり、URLの普遍性が損なわれることになる。 スティーブ・クロッカー(Steve Crocker)、デイヴィッド・ダゴン(David Dagon)、ダン・カミンスキー(Dan Kaminsky)、ダニー・マクファーソン(Danny McPherson)、ポール・ヴィクシーの5人のインターネット・エンジニアによるホワイトペーパーでは、この法案のDNSリダイレクト条項は「技術面およびセキュリティ面での重大な懸念を引き起こし」、「インターネットを破壊」しかねないと言及されたが、一方で他のエンジニアや法案支持者らはこうした懸念は根拠に欠け評価に値しないとしている。 ある法学教授のグループは、クロッカーらのホワイトペーパーを引用し、知的財産保護法案(PIPA)とオンライン海賊行為防止法案(SOPA)は意図していたのと逆の効果をもたらすもので、法案が施行されればインターネット・ユーザーは規制されていない代理DNSを利用するようになり、結果として政府によるインターネット規制実施が困難になるとしている。また両法案の合憲性にも疑問を投げかけ、法案によって技術面で破滅的な事態となる可能性があり、また米国のインターネット関連法体制がより抑圧的なものになることを懸念した。さらに両法案によって引き起こされるのは「一方的な訴訟以外の何物でもない。つまり一方の側(検事、原告)は証拠を提出する必要がありながら、("被告"となるのはサイト運営者ではなくドメインネームそのものであるため)侵害行為をおこなっているとされたサイトの運営者側は裁判に出廷したり、もっと言えば、自分のサイトにおいてある行為が係争中であることを認識する必要すらない。これは、意見を聞く公正な機会を与えることなくその人(運営者)の所有物(サイト)を奪うことであり、単に法手続きの原則に違反するだけでなく、憲法修正第1条で保障された言論の自由の権利を剥奪する違憲な法律を制定することに他ならない。」としている。 2011年3月に公開されたFirefoxのアドオン MAFIAAFire(英語版) はドメインを差し押さえられたサイトにアクセスする際代理のドメインにリダイレクトする機能をもつ。Mozilla Foundationは米国土安全保障省(DHS)からこのアドオンを削除する様に要請をうけたが、Mozillaはこれに対応していない。逆にMozillaの法律顧問は同要請の正当性を示す法的根拠など、情報の開示を国土安全保障省側に求めている。 情報技術・イノベーション財団(ITIF)は、この法案におけるドメインネーム救済措置は現状行われているスパムやマルウェア対策によって効果がないものになるとの懸念を示している。ITIFのアナリストであるダニエル・カストロによると、DNSブロッキングは、オランダ、オーストリア、ベルギー、フィンランド、韓国などいくつかの民主主義国家で"インターネットを破壊"することなく行われている。ITIFのCEOは、DNS条項を自動車のドアロックに例え、確かに完全に信頼をおけるというものではないが、それでもやはり便利ではあると述べている。 2012年1月12日、上院司法委員会委員長のパトリック・リーヒ議員は、論争を呼んだDNSフィルタリング条項をPIPA法案から削除する意向であると発言した。リーヒ議員は「うちのスタッフには他の上院議員に『法案の最後の1ピースは取り止めた』と言っていいと伝えてある」、続けて「そうすることで今ある反対意見の多くがなくなるだろう」と述べた。関連法案SOPAの起草者であるラマー・スミス下院議員もSOPAからDNS条項を削除する考えであることを明らかにした。
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