長期化と内部の対立
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/10 10:30 UTC 版)
JR採用闘争が長期化すると、JR・国に対する徹底抗戦を続ける国労闘争団側と、JR・国への屈伏やむなしとする国労本部側の内部対立が表面化した。前述のスト権スト訴訟和解の条件に、JR・国への屈伏が含まれていたという説もある。 2000年5月30日に「JRに法的責任なし」を受け入れる条件で、自民、公明、保守の当時の与党3党、および社民がJRに働きかけ、解決金を支払わせるよう検討する内容のいわゆる四党合意が行われ、国労も中央執行員会で受け入れを決めた。翌2001年1月27日の定期大会で組合は合意の受入を受諾した。しかし、闘争団側にとって「JRに法的責任なし」という条件は受け入れられるものではなく、また四党合意は国労がJRの法的責任無しを認める内容の一方で、JRの解決金支払いを確約したわけではなかった(あくまでJRに働きかけをするだけである)。こうした事情から両者の対立が続いたため、与党三党は合意を破棄した。また、鉄建公団訴訟は国労闘争団が独自に起こしたもので、国労本部側の意向ではなかった。そして、組合側は闘争団への支援を一部打ち切り、鉄建公団を提訴した組合員の一部を権利停止処分(役員への立候補禁止)にした。さらに実行はされなかったが、組合除名さえ検討され、国労執行部と闘争団の間で対立を生んだ。支援は2004年7月より再開されたが、国労本部側は裁判には無関係との態度を取り続け、さらには裁判から手を引かせようと働きかけ続けた。そのため対立は変わらず、険悪な状況が続いた。 しかし2005年の鉄建公団訴訟東京地裁判決で、国労の主張がある程度認められたことから、2006年1月28日に方針転換を決定。鉄建公団訴訟について原告を支援することになった。 2008年には、東京地裁で1月23日に全動労組合員による鉄運機構への損害賠償請求事件、3月13日には国労組合員による解雇無効・損害賠償事件の判決が相次いで出された。前者の判決(佐村浩之裁判長)では、不当労働行為の一部を認め、国鉄民営化時、遅くとも1990年の清算事業団解雇時を時効の起点として、消滅時効(このケースでは3年間)を主張した被告の見解に対しては、2003年の最高裁判決を時効の起点としてこれを退けた。その結果、原告1人あたり500万円の賠償金に加え、弁護士費用と遅延分の利息を支払うよう鉄運機構に命じた。しかし、JRへの不採用については、JRに採用されること自体については、権利や法的利益は何もないという判断を示した。一方、後者の判決(中西茂裁判長)では、消滅時効についての被告の見解を支持し、原告の全面敗訴となった。また、清算事業団からの解雇も有効とした。組合差別の有無への判断は示さなかった。 一方、3月27日のJR貨物との和解により、JR各社との紛争は採用問題のみになった(#JR以降と政府・経営側の評価参照)。国労の高橋伸二委員長は「政治解決の中で求めている雇用の確保ではJR各社に協力してもらわなければならず、各社との和解でその環境が整った」とコメントした。しかし、JR各社は「JRに法的責任は無し」との2003年最高裁の判断から雇用確保は拒否している。 2008年に国鉄労働組合が開催した集会では、民主党の鳩山由紀夫幹事長らが連帯のため参加し、「雇用・年金・解決金」の問題を解決することを約束した。
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