選定時の状況と展望
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/17 04:00 UTC 版)
「F-X (航空自衛隊)」の記事における「選定時の状況と展望」の解説
日本は強大な空軍力を有する軍事大国に複数隣接する特殊な防衛環境であり、配備可能な戦闘機の機数も周辺国に比べ少ないという防衛事情があるため、航空自衛隊の採用する要撃機には他国の戦闘機を圧倒する高い戦闘力と配備機数を補う高い稼働率が要求される。日本の周辺国では、第4.5世代戦闘機の配備が進んできており、韓国においてはF-15C/Dを戦闘爆撃機として改良・再設計したF-15Eの韓国版F-15Kの配備が始まっている。さらに近い将来にロシアはSu-57、韓国はF-35台湾はF16V(4.5世代戦闘機)、中国ではJ-31、J-20などの第5世代戦闘機の配備が計画されている。そして、現代において重視されている情報戦能力(情報におけるRMA)も中国のKJ-2000、韓国のE-737といった早期警戒管制機の配備で向上しているとされる。 上記の通り周辺国では、日本のF-15Jと同世代の戦闘機が配備され、さらに、第5世代戦闘機の配備計画もある中で、F-Xではそれらの戦闘機を圧倒、または対等に渡り合えるだけの性能を持つ戦闘機が必要となるが、本命であったF-22はアメリカ上院議会で輸出許可が一度却下されている(さらに2009年〈平成21年〉にオバマ政権が発足して以降、2011年〈平成23年〉末までに、わずか200機弱でF-22の生産そのものが打ち切られることになる)。このため防衛省は2007年(平成19年)12月に、平成21(2009)年度までの中期防衛力整備計画(平成17年度)-(平成21年度)でのF-X調達をあきらめ、代替としてF-15の近代化改修を急いだ。2009年(平成21年)8月30日に実施された第45回衆議院議員総選挙の結果、同年9月に中期防衛力整備計画(平成22〈2010〉年度)を計画していた与党自由民主党の麻生内閣から野党民主党の鳩山由紀夫内閣へ政権交代した。新政権により2009年(平成21年)10月16日の基本政策閣僚委員会にて中期防の策定時期を1年先送りすることが決定し、さらにF-Xの取得が遅れることとなり、平成23(2011)年度からの中期防衛力整備計画(平成23年度)で取得することになった。 国内産業面では、三菱重工業が製造するF-2戦闘機の調達数が減少したため、F-Xで決定された機体のライセンス生産が行えない場合、50年にわたり継続して戦闘機の生産を行ってきた部署が浮いてしまうことになる。その際、会社としては技術者を他部署に配置転換することを免れず、後継者の育成が滞り、再度生産の機会が訪れても、技術者が不足する或いは技術力が落ちる、技術が断絶してしまうなどの恐れがある。そのため、国内航空機産業保護の点から、今回のF-Xもライセンス生産が望ましいと三菱は指摘している。また、自衛隊の防衛秘密の漏洩がアメリカ議会で問題視されており、日本への最新鋭戦闘機輸出承認をしない情勢が強まっており、問題を複雑化している。 この現状を踏まえ、選定期間延長・戦力維持・産業保護を考え以下の策が検討された。 F-4の運用スケジュール見直し 機体寿命は幾許もない(超えている物もある)ため、作戦使用時間の削減や非破壊検査システムの導入による機体寿命の精密な測定等で延ばした余裕、予備機の削減で数年程度先送りする。 F-15の近代化改修 比較的新しく製造された機体に対して近代化改修を施し、4.5世代相当まで能力向上させて戦力を維持する案。 詳細は「F-15J (航空機)#近代化改修」を参照 F-2の再調達 次期戦闘機をF-35にした場合、開発国外の導入は早くても2017年(平成19年)になる見通しであり、2008年(平成20年)からすでに退役が始まっているF-4EJの代替には間に合わず、また調達中のF-2も生産終了の予定のため、戦闘機生産の部署が宙に浮くのを避けられない。そのため調達中のF-2を追加導入することによって産業保護を狙う案である。しかしこの案は、2011(平成23)年度予算で追加調達予算は計上されなかったため見送られた。
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