道路における通行空間の未整備
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/05 00:35 UTC 版)
「日本の自転車」の記事における「道路における通行空間の未整備」の解説
本来、自転車の通行空間は車道の左側や自転車道とされている。しかし、自転車道の整備延長は道路延長のわずか0.9%(1999年、建設省の調査による)に過ぎない。急激なモータリゼーションにより暴走自動車が市民を加害する事故が多発し、自動車による被害犠牲者が戦時中のような多さから1970年代には「交通戦争」と呼ばれ、この時に自転車も「車両等」でありながら歩道走行が容認されるよう道路交通法が改訂された(後述)。 自転車の安全確保のために自転車道や自転車レーンといった自転車専用の通行路が導入されることになったにもかかわらず、空間の有限性や整備コストなどを理由に困難だとして、その整備は進んでない。一方で「普通自転車歩道通行可の規制」が多用されるようになった。その総延長は2005年度末で6万8992.6kmと、全歩道の44.2%を占める 。 自転車が車道を通行する場合、道路の幅員や路面状態、電柱といった障害物などのほか、自動車の駐停車、パーキングメーター・パーキングチケット発給機といった路上駐車施設の存在により自転車が安全に通行できる空間が確保されていないことが多い。また、自転車レーンでさえも自動車違法駐車が多発しており、自転車安全走行環境確保のため警察による違法駐車取り締まり強化が為されている。 2001年9月、埼玉県川口市の市道で、自転車に乗った小学生が違法駐車車両を避けようとし、対向車と衝突して死亡した。この小学生の母親が対向車と違法駐車車両の運転者を相手取り損害賠償を請求した裁判で、2004年8月さいたま地方裁判所は対向車だけでなく違法駐車車両の運転者の損害賠償責任をも認める判決を言い渡した。違法駐車車両の駐車場所は車道左側寄りであり、自転車の走行空間と重なり、事故の原因となることから「自転車乗りにとっては本当に深刻な問題」であるにもかかわらず、軽視され状況が悪化していると指摘される。 車道における自転車レーンの不整備や自動車の速度超過や煽り運転、幅寄せやスレスレ追い抜き、事故を誘発する違法な路上駐車の蔓延もあり、現状では多数の自転車が歩道に追いやられている。歩道は自転車通行可の標識の有無に関わらず、歩行者優先の徐行であれば通行可である。歩道は主に歩行者のために造られ本来自転車の通行には適さないという構造的な問題があるにも関わらず自転車は歩道に追いやられており、法的に徐行義務と歩行者を優先するための一時停止義務が課されることから、自転車の自然な走行スピードの喪失を余儀なくされる。対自動車事故などの面から自転車は歩道通行した方がよいとの主張に対しては、米国・カナダのデータでは歩道通行の方が事故に遭う確率が数倍高いという結果があり欧米ではこのような知見から「自転車の歩道通行は自転車とクルマの衝突事故の重要な原因」として禁止あるいは避けるように指導するのが一般的である 。だが、欧米と比べて自転車レーンの整備率が日本は極めて低く[要出典]、また自転車の車道安全走行を阻害するスレスレ追い抜きや幅寄せ、自動車違法駐車問題もあり、自転車が歩道に追いやられての走行が多数な現状がある。 「環境に優しく健康によい交通手段」との評価のある自転車が、不明確な位置づけの下、適切な待遇を受けていないことは、日本の交通における課題となっている。
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