送信機とアンテナ
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/08 02:03 UTC 版)
ミニFMを開設するには、送信機とアンテナが必要となる。 総務省は、微弱電波の範囲を超えるおそれがある無線機を一般市場で購入し測定を行い、この範囲を超えるものについて公表する無線設備試買テストをしている。試買テストにより電界強度が基準を超えると公表された機器中にはFMトランスミッターもあり、製造・販売業者は自主回収している。微弱無線マーク(ELPマーク)は、この状況に対応して民間の任意制度として開始されたもので微弱無線設備と証明された機器が登録されるが、登録されたFMトランスミッターはロッドアンテナやアンテナ線などの露出したアンテナがない埋込構造のものばかりである。これは、主に自動車の車室内での使用を想定したものであるが、安易に外部アンテナを接続できないようにして電界強度の基準を超えないようにすることでもある。一方で露出したアンテナを持つものは、かつては家電製品メーカーが製造し販売店で容易に入手できたが、すでに製造を中止している。 このような事情から、一般人が従前のような外部端子をもつ又はアンテナが露出した送信機の完成品を入手するとしたら、ガレージキットを製造するガレージメーカーに相当するような弱小業者が自社ウェブサイトで販売するものか、国内外の通信販売サイトに出品されているものしかない。しかし、電界強度は送信機の出力とアンテナの形状や高さが一体となって決定されるもので後述のように外部アンテナを接続すれば基準値を超えることは容易なこと、送信機の製造や販売に法規制は無いことから、基準値を超過すれば製造・販売業者ではなく使用者が責任を問われる。このことは業務用として事業者向けに受注生産するメーカーが存在しないという意味ではなく、使用する目的や場所などの仕様を明確にすれば違法性の無い機器を製造する。 完成品以外の送信機は組立キットしかなく、電子技術の知識が無い場合は製作が難しい。完全に自作するには、PLLシンセサイザーにより安定度が高く、高セパレーション(ステレオ送信時に左右の音が交わらない)の物が望ましい。PLLシンセサイザーで周波数変調すると、PLLの周波数引込特性により、変調波の低域周波数成分がカットされる。PLLシンセサイザーのVCOを安定に発振させると数μW〜数mW程度の出力となるが、筐体輻射として外部に漏れるとこれだけで基準値を超えてしまうおそれがあるため、VCOをシールド構造にするか非常に小形に作らねばならない。後段についても基準値を超えない構造を要する。つまり、送信機製作の技術的な難しさは、いかに電波を安定に弱くし、基準値をクリアするかにある。 送信機とアンテナとの間の接続は同軸ケーブルを利用するが、一般に送信機の出力インピーダンスは50Ωのため受信用の75Ωより50Ωを用いるのがよい。インピーダンス変換はマッチングトランス(インピーダンス整合器)または簡易的には25Ωまたはその近似値の無誘導抵抗を直列接続にする。不整合損失を減らして許容値を超えた場合、こんどは出力を低下しなければならないので、インピーダンスを必要以上に気にすることは無い。 飛距離を稼ごうとして高利得のアンテナを使用するとしても、送信側にFM用八木アンテナなどの高指向性アンテナを安易に用いたら、特定方向にのみ電界強度が増大して基準値をオーバーしやすくなる。これはサービスエリア、つまりどこまで確実に聴取できる範囲とするかに係わる問題でもあり、例えば施設の構造により、一部に不感地帯ができるのを承知の上で複数の場所にアンテナを設置する、臨時のイベントでアンテナではなくLCXを使用するなどの判断につながる。 ところで電界強度の測定方法を規定した告示では、被測定機器を高さ1.5mの台(但し、アンテナの下端が地上高0.5m未満となるときは下端を地上高0.5m)に置いて測定するものとしている。このことは、ELPマーク機器をビルの屋上や柱など高所に設置して、地上高1.5mに設置した場合より遠距離で受信できるようにしても違法性は無いと言える。 ミニFMを開設するにあたり、トンネルや駐車場または競技場や展示場などの恒久的な施設、スポーツ大会やドライブインシアターなどの行事であれば専門の施工業者やイベント業者によるが、零細な団体や個人で技術的な支援も得られないのならば、むやみに送信機の出力やアンテナを大きくするのではなく、違法性の無い機器をいかに見通しのきく場所に設置するかが重要になる。 受信設備についての法規制は無いため高利得のアンテナを使用するのが有利ではあるが、市販のFM放送用アンテナは携帯するには大きすぎ取扱いも不便なので、聴取者にラジオばかりでなくアンテナまで準備を呼びかけることは現実的ではない。むしろ、イベントによってはラジオをレンタルすることも必要になる。
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