財政と金融の分離
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/28 04:50 UTC 版)
衆参の議院運営委員会にて、武藤は「金融政策の運営では透明性の向上と国民、市場とのコミュニケーションが極めて重要だ。日銀の独立性をしっかり確保していきたい」と述べており、日本銀行の独立性を重視する考えを示している。 参議院にて日本銀行総裁就任が不同意とされた後、日本商工会議所会頭の岡村正は「これまで副総裁として中立性を疑わせるような兆候が見られたわけではない」と指摘している。 当時民主党代表であった小沢一郎は当初「官庁出身だということだけで100%ノーというような、かたくななものではない」としており同意する可能性を示唆していたが、「国会同意人事を検討する小委員会」委員長の仙谷由人らが財政と金融の分離を理由に不同意を主張し、所信聴取後も「我々の疑念をぬぐい去るに至らなかった」としたことから、最終的に不同意の方針とした。なお、讀賣新聞は「『財金分離』は、本来、旧大蔵省から銀行監督など金融行政を切り離す時に使われた言葉」と指摘しており「民主党は違う意味で使っている」と評している。 田原総一朗は、政治家と官僚の癒着防止の観点から主張される「政官分離」を例にとり、「『財政と金融の分離のために財務省出身者の就任は反対』と言うのならば、『政官分離』の原則で、官僚から政治家になるのもおかしいということになる」と指摘し「財務省出身者が総裁になればその独立が保たれないという理屈には必ずしもならない」としている。 また、小沢は民主党が人事案に同意する条件として「東大じゃない、文系じゃない、男じゃない、官僚じゃない」を列挙しており、そのような人材がいるのか尋ねた若手議員に対しては、岩手弁で「いるわけないっぺよ」と笑いながら答えている。さらに、参議院での不同意後の3月16日、民主党幹事長の鳩山由紀夫が「財務官の方が世界が広い。国際金融に詳しいことは間違いない。財務省(出身)だからすべてだめと言っているわけではない」として、同じ財務省出身者でも事務次官と財務官では賛否が異なる、と主張し始めたため、政府側から「民主党は人によって言うことがバラバラで、安易に候補者を打診できない」と指摘された。退任会見の席上、日本銀行総裁の福井俊彦は民主党の主張に対し「通貨安定への強い決意や市場を大切にする心、グローバルな視野の3点があれば、どこの組織の出身かは関係ない」と指摘した。 なお民主党の西岡武夫参議院議院運営委員長は、2009年11月当時の人事抗争を振り返り、「純粋に武藤さんがいい、悪いという前に、政治状況があった」「(財政運営と金融行政を分ける)『財金分離』を理由に武藤さんがはねられたのは、今でもおかしいと思っている」と述べ、政局が優先されていた事実を認めた。 日本銀行総裁は日銀プロパーと大蔵省出身者が交互に務めていた経緯がある(いわゆる「たすきがけ人事」)。1998年の日本銀行法改正に伴い、中央銀行としての独立性を向上させるため、この慣行は廃された。
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