記号関係
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「チャールズ・サンダース・パースによる記号の要素とクラス」の記事における「記号関係」の解説
記号関係とは、存在そのもののあり方ではなく、関係の中での存在のあり方である。つまり、それ自身としてではなく、他のものに対するなんらかの関係である。記号の役割は、以下の3項の内の1つの役割を構成している:すなわち、対象、記号、解釈項の3項である。この三項関係はこれ以上には還元できない。事物がなかったとしても、三つの役割は区別される。役割は3つだけである。ある対象の記号は、解釈項を導く。解釈項は記号としてさらなる解釈項を導く。いろいろな関係において、同じ事物が、記号であったり、記号論的な意味での対象であったりする。記号とは何かという問いは、記号関係の概念に依存している。さらに、その記号関係は、三項関係の概念に依存している。そうすると、今度は関係そのものの概念に依存することになる。パースは、関係の非還元性という数学的思想に基づいて、二項的・三項的・四項的な関係を考えている。パースのReduction Thesis によれば、(a)三項関係が必然的である。なぜなら、真正の三項関係は単項的や二項的な修飾句では完全には分析できないから。さらに(b)三項で十分である。なぜなら、三項以下の関係性に還元可能でないような真正の四項的もしくはさらに多項的な関係は存在しないからである。パースや他の研究者、特にロバート・バーチ(1991年)、およびヨアヒム・ヘレス・コレイアとラインハルト・ポッシェル(2006年)はReduction Thesis に対する証明を示している。パースによれば、真正の単項関係の述部は典型的には性質を表現する。真正の二項関係は作用または抵抗となる。真正の三項関係の述部は表象または媒介となる。従って、パースの関係の理論は、彼の3つの基本カテゴリからなる彼の哲学理論をも支持している。 外延x内包=情報。記号関係の2つの伝統的なアプローチは、必要であるが十分ではないものではあるが、外延によるものと、内包によるものである。外延は、記号の対象、また幅や、指示、適用などと呼ばれる。内包は、対象の特徴、品質、記号によって参照された属性、また深さ、意味、意義、含意などと呼ばれる物である。パースはこれに第三のもの、つまり情報によるものを付け加える。情報は変化することもあり、また他の2つのアプローチを、統一された全体へと統合するためのものである。たとえば、上の式から導かれることとして、もし情報の総量が同じであり続けるならば、その述語が、対象について、内包することすなわち意味すること多くなればなるほど、その述語が適用される外延は少なくなる。命題の理解はその意味にかかっている。 決定関係。記号は、その対象をどのように表象するかということで、対象に依存している。対象は、記号が作用するようにし、またある意味で記号を決定する。このような物理的で因果論的意味合いは、記号が指標的な反応関係にある場合に特によく現れる。解釈項は、記号と対象の両方に依存する。対象は、その解釈項を決定することによって、記号を決定する。しかしこのような決定関係は、一列のドミノにみられるような、二項的な出来事の連鎖によるのではなくて、三項関係によるものである。例えば、解釈項は、対象によって表象されるなんらかのものを、単に示すだけではなくて、対象を表象する記号として、解釈項がなんらかのものを表象する。これがまさに情報的な決定関係である。つまり単なる決定論な表現よりもより多くのなんらかのものを示すことになる。パースは、determine という単語を厳密に決定論的意味で使うのではなく、特定もしくは bestimmtの意味で使った。そこには、影響のような、測定上の変異も含まれている。パースは記号-対象-解釈項を、表象の観念によってではなく、三項の決定様式によって、定義するようになった。というのも、表象自体が、定義されるべきことの部分であるからである。対象は、また別の記号(つまりは解釈項)を決定することによって、記号を決定する。そして、解釈項は、記号が対象を関係付けるのと同様のやり方で、対象を関係付ける。このことによって、解釈項は、対象に対する記号として機能するとともに、さらに別の解釈項記号を決定する。このプロセスが、論理的に構造化されて連続的に続くことにより、記号・対象・解釈項を一般的に決定するものとなる。記号過程において、あらゆる記号は、解釈項が前後に広がった連鎖となっている。情報や論理の決定関係は対象・記号・解釈項を限定するものであり、因果論的または物理的な決定関係のような特殊な場合よりも、さらに一般的なものである。一般的には、記号関係の項目のひとつに関するなんらかの情報は、他の項目に関する何かを伝えるものである。もちろん、この情報の実際量は、ある種の記号関係では、ゼロで有る場合もあるのだが。
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