記号論的音楽分析
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/02/02 23:11 UTC 版)
「フィリップ・タグ」の記事における「記号論的音楽分析」の解説
タグの仕事で最もよく知られているのは、おそらくは楽曲分析の分野の業績であろう。おもにポピュラー音楽の楽曲を分析対象に取り上げ、楽譜に記譜し得ない表現要素の重要性とともに、「音楽は、どのようにして、何を、誰に対して伝えるのか、その結果生じる効果は何か」についての現代社会における普通のありがちな見方の重要性を強調する。チャールズ・シーガーの概念である「ミュージーム (museme)」を援用して、タグは、小さな単位が結合することで、拡張された現在 (the extended present) の中に意図的でシンクレティックな構造が生み出されること、またそれが時間の流れの中で拡張的で教授的 (diatactical) な構造を生むことを論じている。タグによれば、この組み合わされた複数の構造は、(音、感触、動作、社会的な)アナフォン(特定の含意をもった音の断片)、スタイルを示すフラグ(スタイルを決定する要素、ジャンルの提喩など)や、エピソード的表象から成る、全体的な記号の類型の助けによって、了解されるのだという。タグの記号論は、基本的にはパースに由来するが、ウンベルト・エーコの意味理論からも多くが引かれている。実際の分析手法は、分析対象についてのメタ音楽的情報(認知テスト、意見、民族誌的観察、など)が「パラ音楽的意味領域 (paramusical fields of connotation, PMFCs)」にもたらされたものと、間テクスト性の双方に依拠している。後者は、分析対象の中に聞き取られる音の要素が、他の楽曲の音と同定される「interobjective comparison material (IOCM)」や、IOCMがそれ自身のPMFCに結びつくことに関わってくる。タグは、こうした音楽記号論を、「musogenic」と称し、言葉で語るべきもの (logogenic) ではなく、言語よりも音楽で表現することがふさわしいと論じ、また、任意に与えられた文化の文脈の中で、主観の間を越え、客観の間を越える手続きの組み合わせが、音楽を通した意味のメディア化についての信頼できる洞察をもたらすのだと論じている。
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