置換アンフェタミン類
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/25 03:31 UTC 版)
「精神刺激薬精神病」の記事における「置換アンフェタミン類」の解説
アンフェタミン類や、置換アンフェタミン類の薬物では、慢性的に乱用したり、高用量を使用した際に「アンフェタミン精神病」を誘発する事が知られている。 オーストラリアでの研究では、309人の現にアンフェタミンを使用している者の18%に、1年以内に臨床水準の精神病の体験があった。 メタンフェタミンによる精神病は、日本では覚醒剤精神病として知られ、1956年にも立津政順・後藤彰夫・藤原豪らが覚醒剤中毒として記述し、その覚醒剤の流行の経緯と中毒症状の経過を報告しているが、薬の使用を中止して精神病が発展していくことはなく、中毒者に遺伝性の精神障害やパーソナリティが異常な者が多く元来の精神病者が入り込んでいる可能性があるとして報告されている。 アンフェタミン類の分子は、メチル基のあるフェネチルアミンの骨格に、α炭素を結合から成る。置換アンフェタミン類は、1つ以上の置換のある同じ構造から成る。一般的な例として、カチノン、DOM、エフェドリン、MDMA、メタンフェタミン、メトカチノンが挙げられ、多数のそのような化合物が合成されてきた。メチルフェニデートは、たまに誤ってここに含まれる。 アンフェタミン精神病の症状は、聴覚と視覚の幻覚、被害妄想が挙げられ、そして、はっきりした意識と極度の興奮が同時にある妄想である。メタンフェタミン精神病からの回復における日本での研究は、メタンフェタミンの中止から、10日以内に64%の回復率を、30日以内に82%の回復率を報告した。しかしながら、使用者の約5~15%は、長期間における完全な回復ができないことが示唆されている。さらには、小量でさえも精神病は急速に再形成される。いくらかの事例では、置換アンフェタミン類が使用されなくても、心理社会的なストレスは精神病再発の独立した危険因子となることが判明している。長期化するか否かについては、下記の#鑑別診断も参照。 急性アンフェタミン精神病の症状は、統合失調症の急性期のものと、酷似している。とはいえ、アンフェタミン精神病においては視覚的な幻覚はより一般的であり、思考障害(英語版)はまれである。アンフェタミン精神病は、薬物の使用量の多さに単に関連する可能性があり、あるいは薬物の使用量の多さは統合失調症に対する潜在的な脆弱性をもたらす可能性がある。アンフェタミン精神病と統合失調症への脆弱性には、遺伝的な関連の可能性があることを示すいくらかの証拠が存在する。アンフェタミン精神病の既往歴のあるメタンフェタミン使用者の親族は、既往歴のない使用者と比較して、5倍以上が統合失調症と診断されている。アンフェタミン精神病におけるこの障害は、急速に症状が解消することによって鑑別され、一方で統合失調症では慢性的な経過を辿る傾向が強い。 まれではあるが、正式に認識されているアンフェタミン離脱精神病(AWP)として知られる状態は、置換アンフェタミン類の使用を中止した際に生じる可能性があり、その名の通り、置換アンフェタミン類からの離脱時に出現する。一方で、AWPと類似した障害は異なっており、置換アンフェタミン類が症状を増加させるというよりは減少させ、またその精神病あるいは躁は、以前の投与量計画の再開に伴って解消する。
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