精製と利用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/02 20:13 UTC 版)
アルカンは化学工業における原料物質として広く利用されるのみならず、世界経済に大きな影響を与える燃料でもある。 処理過程における出発物質は天然ガスまたは原油である。後者は蒸留による石油精製によって分離され、ガソリンなど様々な製品が作られる。原油から得られる種々の留分はそれぞれ異なる沸点を持ち、容易に分離することができる。各留分の沸点の幅は狭い。 アルカンごとの用途はその炭素数によってほぼ決まっているが、以下に示す分類は大まかなものである。炭素数1–4のものは暖房、料理など、いくつかの国では発電にも使われる。メタンとエタンは天然ガスの主成分である。普通は加圧下で気体のまま保存されるが、輸送の際には液体としておくのが便利である。それには圧縮か冷却が必要とされる。 プロパンとブタンはより低い圧力で液体にすることができ、液化石油ガス (LPG) として知られる。プロパンはプロパンガスバーナーなど、ブタンは使い捨てのタバコ用ライター(圧力2バール程度)などに使われる。これらはスプレーにも用いられる。 炭素数5–8のもの(ペンタンからオクタンまで)は揮発性の高い液体である。燃焼の均一性を損なう液滴を作らず容易に気化して燃焼室に導入できるため、内燃機関の燃料に使われる。枝分かれした構造を持つアルカンは、直鎖状のものと比べてノッキングの原因となる過早着火を起こしにくいため好んで用いられる。過早着火の起こりやすさはオクタン価で表され、これは基準値としてイソオクタン(2,2,4-トリメチルペンタン)を100、ヘプタンを0とするものである。燃料のほか、これら中鎖アルカンは非極性の物質の良い溶媒である。 炭素数9以上のもの、例えばヘキサデカン(炭素数16)は粘度の高い液体であり、ガソリンのような用途には適さない。それらは軽油(ディーゼル油)や航空燃料に用いられる。軽油はセタン価によって評価される。セタンはヘキサデカンの古名である。これらのアルカンは融点が高いため、寒冷地など、気温の低い所ではどろどろになって流れにくくなるなどの問題が生じることがある。 炭素数16を超える長鎖アルカンは重油(燃料油)や鉱油の主成分である。疎水性を持つため水分が金属の表面に到達するのを防ぐことから、後者は腐食防止剤として利用される。固体のアルカンは石油ワックスとして蝋燭などに使われる。名称が類似するが、蝋(ワックス)はエステルであり、アルカンとは別種の化合物である。 炭素数35以上のものは歴青やアスファルトなどに存在し、道路の舗装などに使われる。しかしながら一般に長鎖のアルカンは用途が少ないため、接触分解(クラッキング)によって短鎖アルカンへ変換される。
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