精製と質量の測定
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/23 03:09 UTC 版)
「分子生物学の歴史」の記事における「精製と質量の測定」の解説
ムルデルの分析によって示唆されていた分子量の下限は約 9 kであり、当時研究されていた分子の数百倍は大きい値であった。それゆえ、タンパク質の化学構造 (一次構造) は、1949年にフレデリック・サンガーがインスリンのアミノ酸配列を明らかにするまで活発な研究領域とはならなかった。タンパク質がアミノ酸がペプチド結合で連結された多量体であるという (正しい) 理論は、フランツ・ホフマイスター(英語版)とエミール・フィッシャーによって1902年の同じ会議において独立して同時に提唱された。しかし一部の科学者は、そのような長い高分子が溶液中で安定していることに懐疑的であった。その結果、タンパク質の一次構造について、タンパク質は低分子の集合体であるとするコロイド仮説、ドロシー・リンチ(英語版)のシクロール仮説、エミール・アブデルハルデンのジケトピペラジン仮説、N. Troensegaardのピロール/ピペリジン仮説など、代替的な理論が多数提唱された。これらの理論の大部分は、タンパク質の分解によってペプチドやアミノ酸が生じるという事実を説明することが困難であった。最終的に、タンパク質は明確な組成を持つ (コロイド状の混合物ではない) 高分子であることがテオドール・スヴェドベリによって分析超遠心を用いて示され、その分子量が測定された。タンパク質の一部はこのような高分子が非共有結合的に結合したものである可能性がギルバート・スミスソン・アデア(英語版)によるヘモグロビンの浸透圧の測定によって示され、後にフレデリック・M・リチャーズ(英語版)のリボヌクレアーゼSの研究においても示された。 タンパク質の質量分析は、長く翻訳後修飾を同定する有用な技術であったが、近年ではタンパク質の構造を探索する目的でも利用されている。 ほとんどのタンパク質は、現代の技術を用いてもミリグラム以上の量の精製には困難が伴う。そのため初期の研究は、血液や卵白のタンパク質、さまざまな毒素、屠畜場で得られる消化・代謝酵素など、大量に精製を行えるものに焦点を当てていた。第二次世界大戦中、兵士の生存を助けるための血液タンパク質の精製を目的としたエドウィン・ジョゼフ・コーン(英語版)に率いられたプロジェクトによって、多くのタンパク質精製技術が開発された。1950年代後半にはアーマー・アンド・カンパニー(英語版)が 1 kgの純粋なウシ膵臓リボヌクレアーゼAを精製し、世界中の科学者が低価格で利用できるようにした。この気前の良い行動によってリボヌクレアーゼAはその後の数十年間基礎研究で用いられる主要なタンパク質となり、いくつかのノーベル賞がもたらされた。
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