福島県地震・津波被害想定調査
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「福島の原子力発電所と地域社会」の記事における「福島県地震・津波被害想定調査」の解説
福島県は兵庫県南部地震の発生を踏まえ、県議会が地方自治法第99条の規定により国に対し地震災害の対策に関する意見書の検討を開始し、その内容は官民連携の総合防災対策や地震観測網の整備強化、原子力発電所の耐震設計指針の再確認などより成っていた。また、1995年8月より『福島県地震・津波被害想定調査』を実施、1997年7月28日、被害想定のシミュレートをまとめ、1998年3月に報告書を公表した。この報告では「はじめに」において県内の原子力発電所は国が耐震性を保証していることを理由に「地震によって原子力災害が発生することはないと考えられる」としながらも「発電、送電が停止した場合、あるいは、送電施設が被災した場合には、首都圏への電力供給が停止され、国内外の社会経済活動に大きな混乱が引き起こされる」事態は視野に含められた。また、下記の地震については『政経東北』が関心を示している。 双葉断層帯北部地震 M7級、震源深さ10㎞を想定。浪江町で震度5強。上述の考え方から原子力発電所への影響については一切触れていない。そのこと自体が『政経東北』により取り上げられ、1999年11月号では影響について触れなかった理由を種々の安全対策の他135Galで自動停止する措置を前提としているためと推測している。 福島県沖海洋地震 震源深さ20㎞を想定。モデルとして1938年の福島県東方沖地震を選定しM7.7に修正した物。その発生周期を100〜200年程度とした。浜通りを中心に震度は6程度を予想。断層が割れ込む形の場合は最大で7m程度の津波高さを想定したが、原子力発電所への影響については耐震性同様に考慮しておらず、『政経東北』も懸念を含む形でその点に触れている。 なお、同調査では「活用上の留意点」として、津波痕跡物などの実績からモデルを仮定したが、近年大規模な津波の襲来を受けていないため信頼性の高いデータが得られていない事、再現した津波について計算精度など未解決の点が残っていること、津波高に変動が大きいことなど6項目の誤差要因を根拠に「その結果のみに固執しすぎると、重大な危険性を見落としたり、安全性を過大評価しがちになることも考えられる」とし「常に安全側の発想に立ち、津波防災の観点から各地域のアセスメントを行っていくことが重要」としていた。この調査では「当面取り組む課題」が津波関連でも列挙されており、ソフト対策として50mメッシュ等を用いた津波俎上の詳細評価など、ハード対策として海岸保全施設整備は「最大想定津波の概ね1m程度の余裕幅を見込む」、「地形に応じたハード目標の設定(専門的見地からの別途検討が必要)」「参考地震(M8)による被害レベルを目標とした総合的な津波対策の検討」などが示されている。 『政経東北』は県のシミュレーションをベースとした同種の啓発記事を2001年3月号、2001年9月号、2002年11月号でも繰り返し、防災への備えと県内原子力発電所への注意を県民に啓蒙していた。国会事故調によると福島第一原子力発電所の想定津波高は2002年になってようやく見直しを受けて5.7mに変更されたが、裕度は僅か3cm(約0.5%)に過ぎなかった。また、同社によりM8を超える海洋型地震の検討が始められたのは2000年代中盤以降のこととなる。
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