現代の運用
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/18 08:46 UTC 版)
現代の航空母艦では、第二次世界大戦後にイギリス海軍で考案されアメリカ海軍において実用化された蒸気カタパルトが主流である。莫大なエネルギーを取り出すことが可能で熱出力の制限が事実上ないに等しい原子力推進機関との組み合わせにより、上記の第二次世界大戦当時の各形式の欠点の大部分を克服したものとなっている。 蒸気カタパルトは艦艇推進機関のボイラーからの高圧水蒸気を圧力タンクに貯めておき、航空機の発進時に一気にシリンダー内に導いて、その圧力で内部のピストンを動かす。ピストンはシャトルと一体であり、フライト・デッキ上の溝に出ているシャトル頭部に航空機の前脚部をつなぎ強力な加速力を加える。 カタパルト・シリンダーの断面はアルファベットの"C"の形をしていて一部に隙間があり、この隙間を通じてピストンとシャトルが接続されている。シリンダーの隙間は、蒸気の漏れを出来る限り防ぐために隙間の両側からゴム製シーリングが塞いでおり、ピストンとシャトルの接続部分だけがシーリングを押しのけている。 ピストンとシャトルがシリンダーを走行するときはシーリングを押しのけ擦れ合いながら移動するが、密閉が完全ではないためにカタパルトの使用時には蒸気が漏れているのがわかる。 カタパルトのシャトル頂部 滑走開始位置で前脚へシャトルを結合するカタパルト要員 蒸気カタパルト内部 F/A-18Cのコクピットから見たカタパルト カタパルトを用いて射出されるF/A-18C カタパルト、ニミッツ級航空母艦 蒸気カタパルトは、油圧式より高速で作動し、はるかに重い航空機も運用でき、強力な加速が一度に加わる火薬式よりも航空機への負担が少ないという利点があるが、配管が複雑になるという欠点がある。推進用機関のボイラーが蒸気式カタパルトの装備を前提としていなかったエセックス級では、改装で蒸気式カタパルトを装備した際にカタパルトを連続使用すると蒸気の不足により速力が低下した。現代の原子力空母は十分な蒸気発生量があるため、カタパルト使用による速力低下は一切無い。 カタパルトの実用化初期には、それを利用する航空機に専用の牽引装置が備わっていなかったため、カタパルトのシャトルと航空機の主翼基部や胴体とを連結する「ブライドル」「ブライドル・ワイヤー」と呼ばれる装具が使用されていた。ごく初期にはブライドルは航空機の離艦と共に海面へと落下することで投棄される使い捨てであったが、やがてこの無駄を避けるためにカタパルトの前方フライト・デッキの端から突き出す形の「ブライドル・レトリーバー」と呼ばれるブライドル回収用の網が取り付けられた。2007年の現在ではほとんど全てのカタパルトを利用する航空機には、ブライドルに相当する専用のフックが前脚部に備わっているので、ブライドルとブライドル・レトリーバーは姿を消しつつある。なお当該機構については英語圏では「Bridle catcher」との表現が一般的であり、「Bridle retriever」という表現は一般的ではない。 現在、リニアモーターを利用する電磁式カタパルトも開発中である。電磁式カタパルトは技術的に難度が高く大量の電力も必要となるが、蒸気式よりもさらに航空機への負担が少なく機体寿命の延長に繋がる。配管を必要としないため、艦の構造が簡易で軽量になるという利点もある。 アメリカ海軍でジェラルド・R・フォード級航空母艦に搭載された。 詳細は「電磁式カタパルト」を参照
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