現代の転炉
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/13 01:49 UTC 版)
LD転炉 炉の上部から水冷ランスで、高圧(約1 MPa)の純酸素を炉内の溶銑中に吹き込む方式の転炉である。1952年にオーストリアのリンツ (Linz) 工場、1953年にドナウ(Donawitz)工場で開発されたのでLDという名前が付いている。純酸素上吹転炉ともいう。この転炉を使った製鋼法をLD転炉法という。 LD転炉は、空気ではなく酸素を上から吹き込むことに特徴がある。LD転炉法以前のように空気をそのまま吹き入れれば、空気の80 %を占める窒素が、転炉内の温度を下げ、そして鋼鉄中に混じる不純物となってしまう。窒素を除去する事でこういった弊害が除かれた。また偶然のことから、高圧の酸素ならパイプを溶けた鉄の奥まで差し込まなくとも、上から吹き込むだけで転炉内が十分攪拌できることがわかった。 純酸素底吹転炉 炉の底部から酸素を吹き込む方式の転炉である。1970年代に開発された。底部から酸素を吹き込む方が攪拌力が強く、炉内の反応速度が速い。しかし、溶銑上部の温度が上がりにくかったり、過剰な攪拌も見られるなど欠点がある。酸素を吹き込むため反応時の温度が高くなって底部のパイプが損傷しやすいために、アルゴンなどの不活性ガスを2重パイプの外側に通して内側の酸素と同時に吹き込む構造になっている。 純酸素上底吹転炉 純酸素底吹転炉では酸素による発熱が炉底部の損耗を早め、溶銑上部の温度が上がり難いなどの問題があった。純酸素上底吹転炉では、上吹きで高圧の純酸素を吹き込みながら、同時に底部からアルゴンや窒素などの攪拌用ガスや目的に応じて酸素を吹き込む複合型の転炉である。底部の吹き込み用配管を冷却するために、自身が熱分解する時に吸熱するメタンやプロパンといったガスを2重パイプの外側に流している。 1980年代に開発されたこの転炉によって製鋼時間は短縮され、炉の寿命も延びた。現在の主流となっている転炉である。 LD転炉 純酸素底吹転炉 純酸素上底吹転炉 戦後の日本は、世界に先駆けてLD転炉を全面的に採用し、これを発展させることによって、世界一の製鋼技術の座を占めるようになった。初期のLD転炉は約30トン程度の溶銑を入れたが、現在の純酸素上底吹転炉は約200–300トンの溶銑処理能力を持っている。 これらの転炉の1プロセスに要する時間は約30分である。あらかじめ計算した総酸素量の95%を吹き込むと、酸素の吹き込みが止まる。その後、センサーによって炭素濃度と温度を測定してもう一度計算をして、酸素吹き込み量を再設定する。そうして転炉を操作するオペレーターがセンサーやコンピュータを活用して、転炉内の状態を見積もり、プロセスが終了したかどうかの判断をする。このようにして誤差を少なくする工夫がなされている(現実的には、転炉内の反応は非常に複雑で、また温度や炭素濃度の正確なリアルタイム情報は取得できない。センサーやコンピュータの情報も活用するが、最終的にはオペレーターの経験とカンに頼っている)。
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