毒人参とは? わかりやすく解説

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どく‐にんじん【毒人参】

読み方:どくにんじん

セリ科越年草。高さ約2メートル紅紫色斑点があり、羽状細かく裂けている。夏、白色小花多数咲く。有毒。特に果実アルカロイドのコニインを多量に含み古代ギリシャでは罪人死刑用いたヨーロッパアフリカ原産で、薬草として栽培コニウム


毒人参

読み方:ドクニンジン(dokuninjin)

セリ科越年草薬用植物

学名 Conium maculatum


ドクニンジン

(毒人参 から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/06/04 07:42 UTC 版)

ドクニンジン属
ドクニンジン(C. maculatum
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : キキョウ類 campanulids
: セリ目 Apiales
: セリ科 Apiaceae
: ドクニンジン属 Conium [1][2]
学名
Conium L. (1753) [3]
タイプ種
Conium maculatum L. [3]
和名
ドクニンジン属[1][2]
英名
poison hemlock[4]
  • ドクニンジン C. maculatum L. (1753)[5]
  • C. chaerophylloides

ドクニンジン(毒人参、学名: Conium maculatum)は、セリ科有毒植物のひとつ。多年草薬草として使われる。ドクニンジン属(学名: Conium)には、ヨーロッパ(特に地中海地方)が原産の Conium maculatum と、北アフリカ原産の C. chaerophylloides の2がある。葉の見た目から、「毒パセリ」とも呼ばれる。大きくて細かく分裂した葉、暗紫色の斑のある茎、不快な匂いなどが特徴。

名称

学名「コニウム・マクラトゥム」が意味する通り、ヨーロッパ種のほうが中毒性のある「毒草」として、はるかに有名である。ギリシャの哲学者ソクラテスに死刑が宣告されたのは紀元前399年。そのとき飲まされた毒薬がドクニンジンと言われており[6]、茎の赤い斑点は、ヨーロッパでは「ソクラテスの」と呼ばれることもある。また、ヨーロッパでは魔女の持ち物とされており、「悪魔の花」の別名もある。一方「聖母の刺繍」、「アン王女のレース」といった聖なるイメージの呼び名もある[6]

ドクニンジンは、英語では Hemlock(ヘムロック;「毒草」の意味)と呼ばれるが[7]、この語は時どき、同じセリ科ドクゼリと混用されている(ドクゼリの英語の俗称は「ウォーター・ヘムロック」である)。ちなみにスペイン語ポルトガル語では、ドクニンジンのことを「シクータ ("Cicuta")」と呼ぶが、英語ではドクゼリの意味で「シクータ」を用いる。

分布・生育地

ドクニンジン(Conium maculatum)はヨーロッパ原産で、日本では帰化植物[8]。荒れ地に生え[8]、しばしば水辺やどぶなど、水はけの悪い土地で見られる。かつては日本に自生していなかったが、近年北海道の山野に不法に持ち込まれたものが植生しており、このためシャク(ヤマニンジン)と誤認して採取され、摂取された結果の死亡例も報告されている。北海道のほかに、東日本やアジア各地、北米大陸豪州などでも帰化植物となった例が報告されている。

ドクニンジン(Conium maculatum)の特徴

ヨーロッパ種のドクニンジン (C. maculatum)

ヨーロッパ原産の二年草[7]。草丈は1.5 - 2メートル (m) ほどの高さに育ち、茎は毛がなく緑色で、下半分にたいてい紫紅色の斑紋が入り、生長すると暗紫色になる[8][7]は中空で、傷をつけると不快な匂いがする[8][7]は長さ30センチメートル (cm) にもなり、三回羽状複葉で[7]、きれいにレース状に分かれており、一様に三角形をしている。葉柄の基部は左右にヒレがあり、茎を抱く[7]。とりわけ若葉は、パセリや、山菜シャクと見間違えやすい。また植物全体が、しばしばフェンネルやワイルドキャロット(菜人参の原種)と取り違えられる。

花期は夏[7]花序は傘型で、大花柄は12 - 20個あって、多くの包葉が輪生する[7]。小花柄もほぼ同数で、小さな白いを多数咲かせる[8][7]。花は花序の中で密集しており、全体で直径10 - 15 cmほどになる。花は径3ミリメートル (mm) ほどの5弁花で、花弁の1個は大きく、2個が中型、残り2個は小型で、花弁の頂部は深く凹む[7]雄蕊5個、雌蕊1個に2本の花柱があり、萼片を欠く[7]

果実はほぼ球形で、横径が3.5 mmで、2分果に分かれる[7]。分果の切り口は半円形で5本の波打った脈がある[7]種子ウイキョウ(フェンネルシード)に似ており、肉色をしたは、たいてい枝分かれしておらず、パースニップと取り違えられる。

ドクニンジンは、植物全体が臭気を放っていることが特徴と言われているため、食用植物と区別するには、臭みが手がかりとなりうる。たとえばドクニンジンを潰してやると、葉と根は、腐ったような(あるいはカビ臭い)不快な臭いがするのに対して、フェンネルの葉は、アニスリコリスのような芳香がする。ただし、パースニップも同じくらい臭いといわれるため、どのみち注意は必要である。

全草に猛毒があって家畜を害し、ソクラテスはこれを使って自殺したと伝えられる[7]。日本では薬園で栽培されることもあるが、一部は帰化している[7]。中国名は、毒參[5]

毒性

全草、特に果実に猛毒成分を含み、誤食すると嘔吐下痢が続いて呼吸困難となって、最悪は死に至る場合がある[8]。ドクニンジンは、各種の毒性アルカロイドコニイン、N-メチルコニイン、コンヒドリン、N-プソイドコンヒドリン、γ-コニセインなど)を含む。これらの毒の中でも最も重大なのがコニインである。コニインは神経毒性の成分で、中枢神経の働きをおかし、呼吸筋を麻痺させる。人間や家畜にとって有害である。

ドクニンジンは春に目立つ。春はかいばやまぐさが消えてしまうからである。ドクニンジンは全身に毒を含んでいるが、いったん乾かしてやると、大幅に毒は減る。それでも毒が完全に消滅するわけではない。葉の見た目から、「まだらパセリ ("spotted parsley")」という別名もある。の中には、幼虫の頃にドクニンジンを好んで食べるものがある。

慣習的にこのような混乱が見られるものの、ドクニンジンとドクゼリの違いは、容易に見分けることができる。

Conium maculatum

利用

ドクニンジンは、鎮静剤や、痙攣止めの用途のために使われてきた。古代ギリシアや中世アラビア医学では、関節炎などのさまざまな難病の治療にドクニンジンを用いている。しかしながら、治療法によっては必ずしも効能が期待できるわけでなく、服毒量もごく少なくしなければならない。大量の服用は危険が高く、呼吸困難に続いて麻痺言語障害を引き起こし、にすら至りかねないからである。

脚注

  1. ^ a b 米倉浩司『高等植物分類表』(重版)北隆館、2010年。ISBN 978-4-8326-0838-2 
  2. ^ a b 大場秀章(編著)『植物分類表』(第2刷)アボック社、2010年。ISBN 978-4-900358-61-4 
  3. ^ a b "Conium L.". Tropicos. Missouri Botanical Garden. 40013296. 2025年3月15日閲覧
  4. ^ "Conium L." (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2025年3月15日閲覧
  5. ^ a b 米倉浩司・梶田忠 (2003-). “Conium maculatum L. ドクニンジン(標準)”. BG Plants 和名−学名インデックス(YList). 2025年3月15日閲覧。
  6. ^ a b 瀧井康勝『366日 誕生花の本』日本ヴォーグ社、1990年11月30日、78頁。 
  7. ^ a b c d e f g h i j k l m n o 長田武正 1976, p. 157.
  8. ^ a b c d e f 金田初代 2010, p. 185.

参考文献

  • 長田武正『原色日本帰化植物図鑑』保育社、1976年6月1日。 ISBN 4-586-30053-1 
  • 金田初代、金田洋一郎(写真)『ひと目でわかる! おいしい「山菜・野草」の見分け方・食べ方』PHP研究所、2010年9月24日、185頁。 ISBN 978-4-569-79145-6 

関連項目

  • ソクラテス - 薬殺刑を執行される際に当植物が使われた。
  • Days Gone - ゲームの後半から終盤にかけて、毒薬として幾度か言及される他、主人公と対立するある人物の暗殺にも使用される。

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