歴史と原因とは? わかりやすく解説

歴史と原因

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/12 02:53 UTC 版)

自己免疫疾患」の記事における「歴史と原因」の解説

20世紀初めには、ドイツパウル・エールリヒにより提唱された、免疫系自分自身攻撃しないとする「自己中毒忌避説(Horror autotoxicus)」を代表とする考え方主流であった。しかし、その後の研究により自分の体の構成成分抗原とする自己抗体発見されるにつれ、自己免疫疾患存在明らかになっていった炎症性腸疾患除き多く自己免疫疾患女性に多い(炎症性腸疾患については男女差ほとんどない)。理由明らかになっていないが、ホルモン関与しているという説がある。また、マイクロキメリズム呼ばれる妊娠中に胎児母体との間に胎盤通して起こる微量細胞やり取り」があり、出産後誕生後)、数十年を経過して他者由来細胞存在していることが明らかになっている。「自己免疫疾患」と呼ばれている疾患中にはマイクロキメリズムにより他者由来細胞影響発生しているものも存在するとの研究結果がある。ブタの脳のエアロゾル粘膜から吸収してしまい、自己免疫疾患発症した例も存在する (en:Progressive inflammatory neuropathy)。 オーストラリアクイーンズランド大学医学部マイケル・P・ペンダーMichael P. Pender)によって2003年・2011年2012年、9割以上の人間が感染しているヘルペスウイルス一種エプスタイン・バール・ウイルスEBウイルス)による自己免疫疾患発症のメカニズム仮説提示された。この仮説は「ペンダー仮説(Pender's hypothesis)」と呼ばれており、様々な自己免疫疾患EBウイルスとの関わり指摘されていることから、多発性硬化症関節リウマチ全身性エリテマトーデスシェーグレン症候群全身性強皮症皮膚筋炎原発性胆汁性肝硬変原発性硬化性胆管炎潰瘍性大腸炎クローン病乾癬尋常性白斑水疱性類天疱瘡円形脱毛症突発性拡張型心筋症1型糖尿病バセドウ病橋本病重症筋無力症IgA腎症膜性腎症悪性貧血、といった自己免疫疾患発症に、どのように細胞傷害性T細胞機能不全ビタミンD欠乏EBウイルスどのように関わってくるかを考察したのである。このペンダー仮説は、遺伝等の原因によってEBウイルス対すCD8+T細胞応答何らかの不全起きEBウイルス感染した自己反応性記憶B細胞抗原提示細胞として働き通常禁止され自己抗原T細胞認識が可能となり、自己免疫応答生ずるというものである。 特に、EBウイルス潜伏感染遺伝子抗原のEBNA1(Epstein-Barr virus-encoded nuclear antigen 1)と全身性エリテマトーデス自己抗原とされているSmとの分子相同性(molecular mimicry)も明らかになっており、EBNA1に対して作られ抗体自己抗原Sm交叉反応(クロスリアクション)し、全身性エリテマトーデス自己抗体の抗Sm抗体となっていることも示唆されている。 最近では、大阪大学微生物病研究所/免疫学フロンティア研究センター研究グループ2015年全身性エリテマトーデス多発性硬化症といった自己免疫疾患との関わり知られているEBウイルスによる自己免疫疾患発症のメカニズム分子生物学的に示した通常胚中心B細胞成熟段階にあるB細胞)の表面に、排除する抗原合わないB細胞受容体や、自分抗原反応するB細胞受容体があれば、そのB細胞アポトーシスにより排除される。しかし、その胚中心B細胞EBウイルス感染すると、EBウイルス潜伏感染Ⅲ型遺伝子のLMP2AがB細胞受容体シグナル模倣し、さらに形質細胞抗体産生細胞)への分化促進する因子(Zbtb20)が出現して、本来はアポトーシスにより排除されるべき自己反応性B細胞生き残りB細胞選択異常)、自己反応性受容体などの抗体出し続け形質細胞になる結果自己免疫疾患発症するということである。 また同様に鳥取大学医学部医学科分子病理学分野研究グループ2017年EBウイルス感染したB細胞から自己免疫性甲状腺機能亢進症であるバセドウ病自己抗体である抗甲状腺刺激ホルモンレセプター抗体(TRAb)が産生されることを分子生物学的に示したEBウイルス感染したB細胞自己反応性か否かによらずEBウイルス潜伏感染Ⅲ型遺伝子LMP1によるT細胞依存性のCD40共刺激シグナル模倣によるNF-κB活性化で、活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)の発現促進されT細胞依存性クラススイッチが可能となり、多クローン性あらゆるアイソタイプ抗体産生し得るEBウイルス感染したB細胞自己反応性抗体可変部持っていた時、自己抗体産生し得るということである。特に、バセドウ病引き起こすのはIgG1アイソタイプ持ったTRAbであり、そのためにはTRAb陽性B細胞免疫グロブリン抗体)のクラススイッチ遺伝子再編成引き起こす活性化誘導シチジンデアミナーゼ(AID)の発現必須となるが、EBウイルス潜伏感染Ⅲ型遺伝子LMP1T細胞依存性にCD40のシグナル模倣しNF-κB活性化させることができ、NF-κBAID遺伝子(AICDA)の転写促進するので、バセドウ病引き起こすIgG1アイソタイプ持ったTRAbの産生可能になるということである。

※この「歴史と原因」の解説は、「自己免疫疾患」の解説の一部です。
「歴史と原因」を含む「自己免疫疾患」の記事については、「自己免疫疾患」の概要を参照ください。

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