構造と操縦
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/11 04:52 UTC 版)
ファルマンIIIは後に航空史上、または飛行機のデザインの変容の歴史上において、その後の方向性を決定付けた重要な型の一つとして高く評価されている。特に、初めて実用的に補助翼を導入し、降着装置に車輪を取付けた最初の航空機であったとされている。 補助翼 アンリ・ファルマンが補助翼を初めて導入したのは1908年夏、前述のファルマンIの改造の最終過程で試験的に導入し、成功したこの独自のデザインを当機にも採用した。ファルマンIIIの補助翼は、下方向からのケーブルのみ接続されていて駐機時は、つまり飛んでいない時は補助翼は重力に引かれ自然に垂直に垂れ下がった状態となる(写真)。これが飛行時には前方からの風で翼面と平行に持ち上がり、パイロットの右手に配置された長大な操縦桿を左右に倒すことで補助翼が下方に引張られる。補助翼が引かれると補助翼に当たる風の抵抗によって翼下面に圧力が生じ、機体のロール(傾転)が行われる。操縦桿がオフセット配置されたこの形式ではパイロットにとって体の外方へ開く動作(右旋回)よりも体の中側へ引き込む動作(左旋回)の方が楽に行えたとされている。また同操縦桿の前後の傾きは、機体最前部の前翼(大きな1枚の昇降舵)と、機体後尾の尾翼上面に配置された小さな1枚の舵とが(ちょうどプロペラ・操縦席の頭上でX字状に交差して)ワイヤ接続されており、この両者と連動する。 操縦桿を前後に倒して機首の上げ下げを、左右に傾ければバンク(ロール)操作を、また足元の横棒を踏めば尾翼の方向舵が左右に振れて機体の旋回(ヨーイング)を行うというこの方式は、現代の航空機でも標準となっている。 車輪 降着装置としてスキッドの代わりに車輪をメインに使用するというアイデア自体は、ライト兄弟の先例から得たものだった。一方ライト兄弟もそれまでのたわみ翼の代わりに、以降はより優れたファルマン兄弟デザインの補助翼を採用した。この着陸脚は、スキー板状に反った2本の脚と、その両側に取り付けられた車輪との接続部にばね式サスペンションがあり、ハードな着陸の際には車輪およびサスペンションがショックを分散・緩和する。この構造が後述の野外飛行を(充分に整備されていない地表での離着陸を)可能にした要因のひとつとされている。 操縦性能に優れる各翼への動翼配置と離着陸用の車輪、というこの組み合わせは、以降現在に至るまでほとんどの航空機でも採用されている。
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