植物の色素
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/28 12:05 UTC 版)
植物の色素の主な機能は光合成であり、できるだけ多くの光エネルギーを吸収するために、クロロフィルやいくつかの多彩な色素が使用される。色素は受粉においても役に立つことが知られており、色素の蓄積または喪失により花の色が変化し、花粉媒介者に対して花に価値があり多くの花粉や花蜜を含むことを知らせることができる。 植物の色素にはポルフィリン、カロテノイド、アントシアニン、ベタレインなど多くの分子が含まれる。すべての生物色素は特定の波長の光を選択的に吸収し、他の波長の光を反射する。 主な色素 クロロフィルは植物の主要な色素である。緑を反射し黄色と青の波長の光を吸収するクロリンである。植物にその緑色を与えるのはクロロフィルの存在と相対的な量である。すべての陸上植物と緑藻はこの色素の2つの形態、クロロフィルaとクロロフィルbを持っている。ケルプ、珪藻、その他の光合成不等毛類はクロロフィルbではなくクロロフィルcを持つが、紅藻はクロロフィルaのみを含む。すべてのクロロフィルは植物が光合成を促進する目的で光を捕らえるために使用する主な手段として機能する。 カロテノイドは赤、橙、黄色を呈するテトラテルペンである。光合成の過程で集光(補助色素(英語版)として)、光防護(英語版)(非光化学的消光(英語版)によるエネルギー散逸、及び光酸化的損傷を防ぐための一重項酸素除去)で機能し、タンパク質の構造的要素としても機能する。高等植物では植物ホルモンのアブシジン酸の前駆体としても機能する。 植物は一般的に6つの普遍的なカロテノイド、ネオキサンチン、ビオラキサンチン、アンテラキサンチン、ゼアキサンチン、ルテイン、β-カロテンを含む。ルテインは果物や野菜に見られる黄色の色素で植物に最も豊富なカロテノイドである。リコピンはトマトの色の原因となる赤い色素である。植物のカロテノイドであまり一般的ではないものにはルテインエポキシド(多くの木本植物)、ラクタキサンチン(レタスに含まれる)、アルファカロテン(ニンジンに含まれる)などがある。シアノバクテリアにはカンタキサンチン、ミクソキサントフィル(英語版)、シネコキサンチン、エキネノン(英語版)など他の多くのカロテノイドが存在する。渦鞭毛藻類などの藻類の光栄養生物は集光色素としてペリジニンを使用する。カロテノイドは光合成反応中心や集光性複合体(英語版)などのクロロフィル結合タンパク質内で複合体を形成するが、これらはシアノバクテリアのオレンジカロテノイドタンパク質(英語版)などの専用カロテノイドタンパク質内でも見られる。 アントシアニン(「花の青」を意味する)はpHによって赤色から青色を呈する水溶性フラボノイド色素である。高等植物の全ての組織で生じ、葉、茎、根、花、および果実に色をもたらすが、必ずしも目立つほど十分な量であるわけではない。アントシアニンは多くの種の花の花びらで最もよく目に見える。 ベタレインは赤または黄の色素である。アントシアニンと同様に水溶性であるが、アントシアニンと異なりチロシンから合成される。この種類の色素はナデシコ目(サボテンやアマランサスを含む)にのみ存在し、アントシアニンとともに植物に存在することはない。ベタレインはビートの深紅の原因である。 植物の着色が特に顕著に見られるのは紅葉時である。紅葉は落葉樹や低木の通常は緑色の葉に影響を与える現象で、秋の数週間の間に赤、黄、紫、茶など様々な色となる。クロロフィルは非蛍光クロロフィルカタボライト(NCC)として知られる無色のテトラピロールに分解される。優勢であったクロロフィルが分解されることで、黄色のキサントフィルと橙色のベータカロテンという隠れていた色素による色が表出する。これらの色素は一年中存在するが、赤の色素であるアントシアニンはクロロフィルの約半分が分解された後にde novoに合成される。集光複合体の分解により放出されたアミノ酸は冬の間、根、枝、茎、幹に貯蔵され、翌年の春に再び葉を出す際に再利用される。
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