植物の細胞壁
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/02 04:37 UTC 版)
植物の細胞壁は、その構成が細胞の生長とともに変化する。細胞壁で分けられるべき細胞の相は以下の2点である。 生長中の柔細胞 生長期終了後の材(ざい) この2つの細胞壁の成分はほぼ同じである。だが、構成成分の比率がそれぞれ異なっている。細胞壁は細胞の形状や大きさを決定しているものであるが、生長を必要としない材に至ると、より強固な構造を必要とするようになる。 生長中の細胞壁は一次細胞壁(いちじ-)という薄い細胞壁からなる。また細胞と細胞の間には中層(ちゅうそう)と呼ばれる層が確認できる。生長終了後の細胞は一次細胞壁の内側に二次細胞壁(にじ-)という2、3層からなる細胞壁を形成する。また一次細胞壁および中層ではリグニンが沈着し、細胞壁を構成する繊維(微繊維、後述する)を強固に密着させて物理化学的強度を向上させる。 一次細胞壁および二次細胞壁の主要な構成成分はセルロースである。セルロースとはd-グルコースがβ(1→4)結合で分枝無くつながっている糖鎖である。グルコースの数はおよそ2000-15000個ほどと言われている。セルロースの構成する細胞壁繊維は以下の構造的段階を示している。 セルロース分子:グルコース約5,000個のポリマー 結晶性ミセル:セルロース分子が約40本、水素結合でまとまっている構造体、直径5nm 微繊維(びせんい):結晶性ミセルが数個集まった構造、直径30nm この微繊維の集合体が細胞壁である。微繊維間には空隙が存在する。 ミセル間隙(-かんげき):幅1nm 微繊維間隙:幅10nm この空隙には非セルロース系多糖類、ヘミセルロースマトリクスが満たされており、微繊維間の構造的強度を高めている。 多くの被子植物の細胞壁はタイプIと呼ばれ、セルロースとキシログルカンが多く、ペクチン、アラビノキシラン、グルコマンナン、ガラクログルコマンナンなどが含まれている。一方で、単子葉類のイネ目の細胞壁はタイプIIと呼ばれ、セルロースとキシラン、1,3-1,4-β-D-グルカンが多く、ペクチンやキシログルカンが少ない。また、タイプIでは様々な糖タンパク質が構造タンパク質として細胞壁の強化などの役割を果たしているが、タイプIIではタンパク質含量が低く、代わりにフェノール酸の架橋がその役割を果たしている。 細胞壁には酵素が含まれている。これらの酵素は細胞膜外にでているために細胞外酵素として扱われる。これらの酵素は主に細胞壁の構築や物質の取り込みに関係していることが知られている。
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