本来生息していなかった地域への侵略
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/21 07:51 UTC 版)
「アライグマ」の記事における「本来生息していなかった地域への侵略」の解説
ヨーロッパでは、1930年代にドイツで毛皮目的に導入されたのが最初だが、定着が本格化し始めたのは1970年代になってからである。現在ではドイツ周辺の国々(フランス、ベルギー、ルクセンブルク、オランダ、ポーランド、チェコなど)に定着が拡大している。ドイツでは1934年にハンブルクで野生化が確認された。ポーランドでは1990年代初めに野生個体群が確認され、今では西部の大部分でみられる。 北米原産であるアライグマは日本には生息していなかったが、日本国内で初めての野外繁殖が確認されたのは1960年代のことである。始まりは愛知県犬山市にある日本モンキーセンターが1961年に飼育し始めたアライグマのうち12頭が翌年に脱走し、ほとんどが回収されたが2頭のオス(一部ではメスとの報告もある)が未回収となったことで、その翌年の1963年には付近の農家から「尻尾に縞模様のあるタヌキ」の目撃情報があった。その後、しばらく経過した1977年に犬山市と隣接する岐阜県可児市で住民がアライグマを捕獲し、野生化が正式に確認された。そのアライグマを捕獲した住人は、アライグマの繁殖を試み始め、1982年には30-40頭を野外へ放している。北海道でも1979年に恵庭市で飼育個体の約10頭が逃亡し、付近の酪農地帯に定着した。関東では鎌倉市の豊かな自然に一定数の繁殖が見られ、この地域ではタイワンリスに並んで最も見かけることの多い野生化動物であるが、天敵のいない限定的な自然条件が棲息に適しているとも言われ、市の公報でも被害や注意喚起が掲載されることがたびたびある。 こうした飼育個体の逃亡や遺棄は他の地域でも起こっていた可能性が高い。1970年代当時は、テレビアニメ『あらいぐまラスカル』の人気などから、ペットとしてアメリカから多い年では年間1500頭もの個体が輸入されるようになり盛んに飼育されていた。しかし、アライグマは手先が器用で脱走しやすい動物だったこともあり、多くの飼育個体が逃げ出したことが考えられる。また、アニメの最終回と同様に、「動物は自然の中で暮らすのが一番良い」という名目で、意図的に自分勝手な飼い主によって自然へ帰された個体も少なくなかったと思われる。とくに当時は一般人はもちろんのこと、学者も外来種問題に対して危機意識をあまり抱いていなかった。こうして飼い切れなくなった成獣が身勝手な人間によって遺棄されたり、飼い主から逃亡して野生化した個体は各地へ自然分散し、2001年には36都道府県で確認され、2008年には47都道府県でみられるようになった。現在の推定個体数は不明だが、東北地方を除く各地でまとまった個体群の存在が確認されている。日本には天敵や競争種がおらず、繁殖力が高いため、容易に定着できたものと考えられている。
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