替玉説と都市伝説
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/10 05:47 UTC 版)
「ルーペ・ヴェレス」の記事における「替玉説と都市伝説」の解説
ヴェレスが私生児を産む恥を避けるために自殺したという検死官の結論にもかかわらず、一部の著作家は公認の報告書が全て真実というわけでは無いと推理した。 「From Bananas to Buttocks: The Latina Body in Popular Film and Culture」という書籍でローサ=リンダ・フレゴソ(英語版)は、ヴェレスは現代の道徳的慣例への抵抗で知られており、彼女が私生児を産む事を受け入れられなかったとは考え難いと書いた。フレゴソはヴェレスが人生最後の年に最大の熱狂と落ち込みの徴候を示したと考えている。続けてヴェレスの死が双極性障害のような精神病を放置した結果という可能性があると推測する。 ジャーナリストのロバート・スレイツァー(後にマリリン・モンローと密かに結婚していたと主張)はヴェレスの死の2、3週前に、彼女の家で面談したと明言し、彼女はゲイリー・クーパー(当時クーパーは名士ヴェロニカ・"ロッキー"・バルフ(英語版)と結婚していた)の子供を身籠っていると彼に打ち明けたと言う。スレイツァーによると、クーパーは子供の父親がハラルド・ラモンドだと信じ込み、子供の認知を拒んだとヴェレスは語った。ヴェレスの死後、スレイツァーはクーパーにこの件について質問し、クーパーが父親であった可能性があると確認したと言う。スレイツァーは更にクララ・ボウ(1920年代にクーパーと交際していた)とも面談したと主張、ボウによればヴェレスの死の直前クーパーがボウに電話をかけ、ヴェレスを妊娠させたハラルド・ラモンドを殺してやりたいと叫んだ事を明かした。スレイツァーは、ボウはラモンドがヴェレスの子供の善き父親になるとは決して思っておらず、クーパーの評判を落とさないためにラモンドと結婚しようとしているのだと確信していた、と自分に語ったと断言した。伝記作家ミシェル・ヴォーゲル(英語版)は、クーパーが父であったとしたら彼の不認知と1人で子供を育てなければならないという思いはヴェレスを「気が違った」ようにしたかも知れないと推測した。 ヴェレスの死はケネス・アンガーが1959年に著した書籍『ハリウッド・バビロン』で取り上げられた。アンガーが語る物語においては、ヴェレスはサテンのベッドの上で美しい自殺のシーンを演じる予定であったが、服用したセコナールが昨晩に食べた「メキシコの香辛料を効かせた最後の晩餐」と相性が悪かった。その結果ヴェレスは気分が非常に悪くなり、予定通りにベッドで死ぬ代わりに酩酊状態で洗面所の方へ嘔吐しながらよろめきつつ向かい、バスルームのタイルで足を滑らせオニキス製のトイレに突っ込んでそのまま溺れ死んだ。メイドのファニータが翌朝女主人を発見したとアンガーは主張した(秘書のビューロ・キンダーは洗面所やトイレに頭を突っ込んだ状態で無く、ベッドの上で雇い主の遺体を発見した)。アンガーの見解は報道や公的な判決を真っ向から否定しているにも関わらず、ちょっとした都市伝説となり何度も事実として繰り返し語られた。ヴェレスの伝記作者ミシェル・ヴォーゲルは、ヴェレスが「洗面所の方へよろめきながら行った」と言うが、大量のセコナールを服用した後にベッドから出て行くことさえ「実質的に不可能だった」と指摘した。セコナールは小量でも効き目が早い事で有名であり、ヴェレスの死は一瞬であったと推測される。死亡診断書は死因として「セコナールの摂取」による「セコナール中毒」を挙げており溺死では無い。更にヴェレスが吐いたことを示す証拠も無かった。そして2012年に出版された書籍で、長年警察署内で行方不明になっていたヴェレスの鮮明な自殺現場写真が掲載されたが、その写真を見ると彼女は大きな花のコサージュの付いた美しいロングワンピースを着用し、大きな衣服の乱れも無く仰向けで足を揃えて眠るが如く穏やかな表情で床の上に横たわっているのが分かる。そして顔面はグラビア撮影時のような完璧なメイクを施し、まるで映画のワンシーンを切り取ったのと勘違いするほど美しい死顔であった事から考察すると、彼女の死因は明らかに溺死ではない事が分かる。
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