新聞社の反応
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/14 17:27 UTC 版)
否定派 朝日新聞は11月2日付け社説で、「そっとする自衛官の暴走」と題して、「こんなゆがんだ考えの持ち主が、こともあろうに自衛隊組織のトップにいたとは。驚き、あきれ、そして心胆が寒くなるような事件である」の一文から始まる文章で田母神を批判。次に「文民統制の危機」だと警鐘を鳴らした。また、他国への影響についても言及し、「日本の国益は深く傷ついた」と論を進め、さらに麻生首相の認識の不十分さも指摘し、「この事態を生んだ組織や制度の欠陥を徹底的に調べ、その結果と改善策を国会に報告すべきだ」と主張した。 読売新聞社説は、「歴史認識というものは、思想・信条の自由と通底する面があり、昭和戦争に関して、個々人がそれぞれ歴史認識を持つことは自由である」としながらも、「しかし、田母神氏は自衛隊の最高幹部という要職にあった。政府見解と相いれない論文を発表すれば重大な事態を招く、という認識がなかったのなら、その資質に大いに疑問がある」と断じたように、「論文の内容」と言うよりも、村山談話などを引き合いに、「政府の要職という立場の問題」を前面に出した。 毎日新聞社説は、田母神本人への批判もさることながら、「こうした認識を公表して悪びれない人物がなぜ空自の最高幹部に上り詰めたのか。大いに疑問である」「政治家の姿勢や言動が、問題の背景」にあると、主に政府への批判の色が濃いものとなっていた。また同時に、問題の根本的解決策として「文民統制の強化」を訴えた。 翌3日、日本経済新聞では、「解任は当然」との見解を述べ、政府の姿勢に対しては特に批判はせず、一歩引いた立場で田母神や自衛隊についての解説などを行った。終わりには「防衛省史には今回の騒動も守屋時代の負の遺産と書かれるのだろうか」とした。 肯定派 産経新聞は、一貫して田母神擁護の論調をとった。社説『主張』は「氏の論文には、かなり独断的な表現も多い」としながらも、「第一線で国の防衛の指揮に当たる空自トップを一編の論文やその歴史観を理由に、何の弁明の機会も与えぬまま更迭した政府の姿勢も極めて異常である。疑問だと言わざるを得ない」と政府の姿勢を非難した。また、村山談話そのものにも疑問を呈し、さらにはこの談話を「あくまで政府の歴史への「見解」であって「政策」ではない」として、同時に「侵略か否かなどをめぐってさまざまな対立意見がある中で、綿密な史実の検証や論議を経たものではなく、近隣諸国へ配慮を優先した極めて政治的なものだった」と、他紙とは一線を画した独自の論を展開した。加えて、「今、政府がやるべきことは「村山談話」の中身を含め、歴史についての自由闊達な議論を行い、必要があれば見解を見直すということである」と「村山談話」の再検討を訴えた。ただし、自衛官が政治的行動を行ってはならないというシビリアンコントロール(文民統制)については一言も触れていない。 また『正論』2009年2月号では、田母神論文の日本は侵略国家ではないという主題は正しいとする別宮暖朗の論文や、自衛官の言論の自由があるなどとして、これでは毛沢東時代の中華人民共和国の思想統制と変わらないとする石平の論文を掲載したほか、産経新聞客員論説委員の花岡信昭は朝日新聞の日野「君が代」伴奏拒否訴訟に対する否定的な報道を引き合いに出し「ダブルスタンダード」と、自身がかつて肯定する報道をしたことには触れず批判するなど、田母神の論文内容の正当性を主張する姿勢を一貫してとった。ただし、産経新聞も『正論』欄において田母神の行動を批判する森本敏や櫻田淳の原稿を掲載するなど、まったく否定派の意見を掲載しなかったわけではない。 ちなみに『正論』は産経新聞系列誌。またアパグループと産経新聞は関係が深く、客員論説委員の花岡が論文の選考に関与し、元谷外志雄アパグループ代表の著作が産経新聞出版から2008年4月に出版されていることや、更迭後に産経新聞が当該論文の全面広告を掲載している。
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