新聞社と行政との取り決め
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 11:42 UTC 版)
「泡沫候補」の記事における「新聞社と行政との取り決め」の解説
岩瀬達哉が森岡健作名義で発表した「泡沫候補撃退マニュアル!!」(『別冊宝島356 実録! サイコさんからの手紙』宝島社に収録、一部は岩瀬達哉『新聞が面白くない理由』講談社にも加筆修正の上収録)によると、1967年の第31回衆議院議員総選挙を前に、朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の3社は法務省、自治省と共謀の上、泡沫候補を紙面から締め出すための取り決めを行ったという。記事での締め出しだけではなく、選挙広告の拒否も「泡末締め出しで最もやってもらいたい」(〔ママ〕、法務省担当者)とされた。このカルテルは1977年ごろ立ち消えになったが、内容はほぼ引き継がれているという。 なお、自治省がこうした文書を出した経緯は、前回の1963年に行われた第30回衆議院議員総選挙で肥後亨事務所(選挙期間中に「背番号」と改名)という確認団体が大量に候補者を出して、問題となったことがきっかけとなった。 岩瀬が朝日新聞社の内部文書として示した文書によると、朝日は三社の中でも最も泡沫候補の排除に力を入れている。朝日はまず「ホウマツ〔ママ〕取り扱い要領」を作成し、要領に従った泡沫候補締め出しを進めた。1977年第11回参議院議員通常選挙に際して、改訂版となる「特殊候補応対要領」を作成し、まずこの文書が社外秘であることを強調した上で、「柔らかく応対するが、最終的には突っぱねる」「相手の抗議、質問に対しては、慎重に受け答えするが、自分の方から議論することは絶対に避ける」などと門前払いを指示し、「特殊候補」との想定問答も掲載した。また、1989年にさらに改訂した「特殊候補の扱い」を作成した。同文書では候補者を3つに分け、それぞれ報道に格差をつけるよう指示している。 一般候補 政党などに属している候補者、または諸派・無所属でも現職及びその後継の候補者。 準一般候補 当選の可能性は別として、まじめなミニ政党などの候補者。 特殊候補 売名や営利などに利用したり、自己実現的欲求を満足させるために数々の選挙に立候補、あるいは自己の政見を述べるよりも、他の候補に対する妨害や支援を主目的にするなど、候補者としての客観的な評価が認められない候補。 このように区分した上で、「準一般候補」は「スペースなどの制約で、候補者紹介や、政見アンケート類の扱いが小ぶりになるのもやむを得ない」としている。さらに、「特殊候補」に対しては紙面からなるべく排除するように指示している。具体例として 『主要六政党の候補者に聞いた』『立候補した六人のうち有力四候補の意見を紹介』『主な候補の一日を追うと――』などの表現を入れ、ある特定候補があたかも立候補していないかのように扱ったわけではないことを断る などの手法を挙げている。これらは、実際に紙面でしばしば用いられている。 さらに、特定候補の締め出しについての社外からの問い合わせには 『毎日の紙面はニュース価値によって新聞社が扱いを決めている。紙面スペースなどとの兼ね合いで決まる』『届け出一覧などの公報的役割の記事では平等な扱いだ』『インタビューなどの企画ものは、誰にインタビューするかなどは新聞編集権の範囲だ』『これらの扱いは、公選法一四八条の報道・評論の自由として裁判上も定着している』 と説明するよう指示しているという。
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