救命活動事例
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2006年4月に日本の長野県で雪崩に巻き込まれた20代男性が、発見からは約4時間・心肺停止確認後からは2時間45分後に蘇生、後遺症もなく回復した事例が報じられている。前日午後2時ごろに雪崩に遭い遭難。翌午前9時ごろに捜索隊により発見、低体温による心肺停止のためヘリコプターで地元病院に搬送されたが回復せず、更に同県内の大学病院に搬送されて11時52分に人工心肺に接続、その1時間後に心臓の自力での鼓動を確認した。発見から近隣病院へ搬送、更に人工心肺のある医療施設に搬送されるまでの間、救急隊員が人工呼吸と胸骨圧迫を行っていたということで、男性は2か月ほど入院生活を送った後、歩行や会話を行うといった日常生活に支障のないレベルに回復、2006年6月には近く退院することが報じられた。なお2006年6月9日に読売新聞などが男性の退院に併せ同件を報じており、同記事中治療にあたった信州大医学部付属病院の岡元和文教授の談話として、これは心肺停止後の蘇生としては日本国内の最長記録であるという。同教授は救急隊員の活動と低体温症による代謝の低下で酸欠によるダメージが軽減されたこと、加えて男性が若く体力があったことを回復した理由として示している。 その後、海外に投稿された論文であるが、群馬県でさらに長時間(385 min)の蘇生が報告されている。海外へ投稿された論文で詳細は不明だが独歩で帰宅している。低体温状態からの蘇生は、通常の蘇生よりも回復が期待できる場合がある。 2006年10月7日兵庫県在住の男性(35歳)が兵庫県六甲山中にて遭難、その24日後の10月31日意識不明の状態で発見された。発見時は直腸温度が22℃まで下がり、浅い呼吸と一分間に40 - 50回程度の弱い心拍があった。神戸市消防局のヘリコプターにより神戸市内の病院に搬送された直後に心肺停止状態に陥ったが、治療開始4時間後には心拍が戻り、その後の集中治療の結果50日後の12月19日にほとんど後遺症もなく退院した。発見当時は携帯していた食品並びに水分を摂取し生存していたと考えられていたが、蘇生後従来の常識では考えられない事実があきらかになった。山道を踏みはずし崖下に滑落、腰骨を骨折し身動きの取れない状態となり、遭難初日および2日目に若干の水分摂取をしたのち意識を喪失し、その後発見されるまでの3週間一切の食物および水分の摂取を行わないままに過ごしたと証言した。発見現場周辺には排泄の痕跡もなかった。診察した医師の記者会見によると、低体温症による冬眠状態で生命の維持が可能になったのではないかとの仮説が示されている。(新聞報道による) 従来の仮説では体温30℃以下の生存、並びに10日を超える絶食での生存は不可能とされていたが(値については狭い範囲での幅はある)、本件ではいずれの値を大きく上回るものであり経緯の真偽を含めさらなる検証が必要である。しかしながら低体温による人体代謝の機能が従来の常識を大きく覆した可能性が高い事例である。
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