採食と食性
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/09 14:13 UTC 版)
「イスティオダクティルス」の記事における「採食と食性」の解説
1913年に自身が描いた長顎型の復元図を基に、フーリーはイスティオダクティルスの口先はサギ類、コウノトリ類、ハサミアジサシ類の口先に似ているとし、イスティオダクティルスは時々口先を水中に入れて獲物を追い、魚を食べていたのだろうと考えた。1991年、ドイツの古生物学者ペーター・ヴェルンホファーはイスティオダクティルスの上下顎先端をアヒルに例えた。ただし、強力な歯を持つことから、一般で呼ばれているような「カモノハシ翼竜」ではないと言及している。その代わりに彼は、噛み合う歯と広い口先は魚食性を示していると述べた。Howse等はその特徴的な歯は特殊な食性か食事法を示していると考え、獲物や死体からクッキー型で押し切るように、または噛みついた後頭を回転させて、肉片を切り取っていたとの説を出した。彼らはまたこの翼竜が大陸性堆積物から産出していることを指摘して、それゆえハゲタカやアフリカハゲコウのようなスカベンジャーだったかもしれないとした。2010年、Attila Ősiはイスティオダクティルスがそのようなやり方で肉を切ることができたことには同意したが、きっちりと咬合する歯では食物を取り扱うことはできなかっただろうと付け加えた。 2012年にWittonは、イスティオダクティルスの歯はランフォリンクス類やオルニトケイルス類が持つ滑りやすい獲物を保持するのに適した大型で反り返った歯とは違うものであることを指摘した。「刃」状の歯は魚を咥えるよりは食物を切り取るのに適していただろう。Wittonはまたドイツの古生物学者Michael Fastnachtの未発表の博士論文についても議論したが、その論文は生物力学的計算によりイスティオダクティルスがカモ類のように濾過食をしていたと予測したものだった。WittonはFastnachtの復元に不正解な点があることを発見した。例えば吻部は実際より広く、顎は実際より長くされており、これによりいかにもカモの頭骨に似ているようになっていた。顎の形が広く平たくスプーン型のカモ類のクチバシとは異なること、歯列が濾過食には不適であることを指摘し、Wittonはイスティオダクティルスがカモのような生活様式をとっていたという考えを退けた。 Wittonは2012年と2013年にイスティオダクティルスがスカベンジャーだという考えを詳細に記述した。腐肉食の鳥類はその頭骨が強固な部分と脆弱な部分のモザイクとなっている。彼等は獲物と格闘する必要はないが、死体から肉を引き千切ることができなくてはならない。これらの鳥類はまた、隠れている動物を探す必要も、注意深く判断して獲物に攻撃を仕掛ける必要もないので、捕食性の鳥類に対して比較的小さな眼を持つ。イスティオダクティルスは大きな顎筋を持っていたと思われ、よって咬む力は強力で、頭骨は幅に対する高さが大きいので肉を引っ張る際の屈曲に対抗できただろう。その代わり頭骨の一つ一つの骨は細くて薄く、歯列は短く、これらの事からイスティオダクティルスは捕食に必要な補強がなされておらず、暴れている獲物を制圧する必要は無かった事が示唆される。これらの特徴を合わせると、イスティオダクティルスは処置に強力な顎を必要とする大型の獲物を食べていたが、その獲物は顎と頭骨にかかる応力が採食中に制御できるほど充分には静止もしていた、と考えられた。イスティオダクティルスの眼も、捕食性と推測される翼竜(オルニトケイルス類のような)に対して相対的に小さい。Wittonは、翼竜類の中でイスティオダクティルスが最も腐肉食の生活様式に適応していたと結論づけた。彼は、より強力な肉食動物が惹きつけられた時には死体から引き退らなければならないが、その肉食動物が腹一杯になったなら食べ残しで食事を終えるために戻って来ただろうと想像した。 歯の微細咬耗構造に基づく現生爬虫類の採餌ギルド(上:"a"が魚食のガビアル、"b"が「硬い」無脊椎動物食のアメリカワニ、"c"が雑食のグレイオオトカゲ)と、翼竜の微細咬耗(下:"d" がイスティオダクティルス、"e"がコロボリンクス、"f"がアウストリアダクティルス) 現生爬虫類の微細咬耗構造データを主成分分析にかけて食性ごとに範囲を示し、そこに翼竜のデータによる点を重ねたプロット図(△がイスティオダクティルス) 2014年にMartillは、イスティオダクティルスの下顎先端のオドントイドは歯がない空隙を埋めるためにあると考えた。オドントイドにより肉を切り取るのに必要な弧状に連続した切断面が完成するのであり、それがなければ切り取った肉塊は細い未切断部で元の死体と繋がったままだっただろう。Martillはイスティオダクティルスと同じような歯を持つ動物はほとんど知られていないと述べたが、種々のサメ類や爬虫類との類似点は指摘し、その中には魚や自身よりはるかに大きな獲物(クジラも含む)に丸い咬み跡を残すダルマザメもいた。イスティオダクティルスも自分より大きい獲物(恐竜やワニ類のような)に丸い咬み跡を残したかもしれないが、おそらく魚類にも例えば水面から背中に咬みつくなどして同様の咬み跡を残しただろう。Martillはイスティオダクティルスの頭骨は現生のスカベンジャーと多くの点で異なり、例えば鋭く尖ったクチバシを持たないことは肉を引き裂きにくくしていたであろうが、長い頚部は引く力が充分に強く、翼にある指は死体を操作するのに使われたかもしれないと述べた。Martillは歯の先端の咬耗面から示されるように、イスティオダクティルスはスカベンジャーらしくその頑丈な歯で骨から肉をこそぎ取っていたと考えた(恐竜の骨に擦過痕を探すべきだとも提案した)。彼は、もしイスティオダクティルスが死体から最後の肉を引き剥がしていたのなら、彼等が死体をあさる順番待ちで後ろの方にいたことになるとも述べた。2010年、Jordan Bestwick等は、歯の微細咬耗構造の分析においてイスティオダクティルスが肉食性爬虫類に最も近くプロットされることから、イスティオダクティルスは偏性脊椎動物消費者、おそらくは肉食動物であるとの結論を発表した。
※この「採食と食性」の解説は、「イスティオダクティルス」の解説の一部です。
「採食と食性」を含む「イスティオダクティルス」の記事については、「イスティオダクティルス」の概要を参照ください。
- 採食と食性のページへのリンク