採集部位
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/21 02:51 UTC 版)
採集する部位は、可能であれば植物体全部である。当然ながら地下部を含む。出来れば根まで全部掘り取る。たとえば匍匐枝を出すかどうかなど、地下部にも重要な特徴があるからである。したがって無理やり引っこ抜くのはよくない。根掘りでしっかり掘り取って、水で洗って土を落として標本とするのが理想である。 ただし、専門家でない場合はこの限りではない。雑草などの場合はともかく、山野草などは数が少なくなっているものも多いから、保護の観点からも地上部の採取のみに止めるべきであろう。もちろん採集が禁止されているものを取ってはいけない。 樹木のように、全部を採集できない場合も多い。そのような場合、枝の一部を採集する。枝分かれの様子、そこから葉の着いている様子が分かるように採集する。枝に葉がどのように着いているか、たとえば互生か対生か、まばらにつくか束生するか、平らに広がるかなどの特徴は重要である。夏休みの宿題などでは葉っぱ一枚の標本が見かけられるが、それだけでは同定に困る場合も多いので、特に理由がなければ避けなければならない。また、一枚の葉が細かな小葉に分かれた複葉という構造を持つものの場合、どこまでが一枚の葉か分かりにくいものがあるが、その場合にも複数の葉を持つ枝を採集しなければならない。葉の付け根には芽があるが複葉の一部である小葉にはそれがないので、それに気をつければ大抵は見分けられる。 硬い枝は剪定バサミがあれば、それで切ればよい。しかし、中にはできるだけ剪定バサミを使わず、折り取るようにする採集家もいる。折れ口の特徴を残すためである。 なお、シダ類の場合、専門的な採集は別として、一般向には保護の観点から全株ではなく葉一枚の採集が奨励されている。ただし、鱗片などに重要な特徴があるから、葉柄の基部から取らなければならない。 植物の分類学上、最も重要な特徴は生殖器官にある。つまり胞子や花、果実などである。しかし、多くの植物ではそれらはごく一部の期間にしか形成されない。したがって、できるだけそれらのどれかを含んだものを標本として採集するように心掛ける。また、時期の違いで形も変化するので、様々な段階のものが含まれるよう配慮し、あるいは複数を手にいれる必要もある。 特に樹木ではその期間であっても、すべての枝につける訳ではないから、できるだけそれらがよく着いている枝を(手の届く範囲で)探さなければならない。もちろんない場合には泣く泣く葉だけで我慢する。しかし、花や果実がなければ決め手にはなりがたい。うまい時期の枝に行き当たった場合には、専門家は沢山標本を作る。後でよそのハーバリウムと交換できるからである。ちなみに、背の高い樹ほど高いところにだけ花や実をつけたがるので、採集はいよいよ困難である。熱帯多雨林で高木に成長し、しかも数年に一度しか花をつけないフタバガキ類などは、最近までほとんど手をつけられない存在であった。 なお、分類群によってはより時期の選定にうるさい場合もある。カヤツリグサ科やセリ科では、成熟した果実の形態が分類上重視され、それがない場合には同定できないことも多い。そういったことも事前に知っておかねばならない。
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