成功と示唆
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/09/29 02:03 UTC 版)
フィッツの法則は非常な成功を収め、またよく研究されたモデルであった。フィッツの結果を再現するような実験、また若干異なる条件でフィッツの法則が適用できることを示す実験は、比較的たやすく実施することができる。そうした実験では、相関係数 0.95 以上、すなわちモデルが非常に正確であるという結果が出ることも多い。 フィッツ自身は法則について二本の論文しか発表しなかったが(1954 年にフィッツ名義、1964年に Peterson と共著)、ヒューマンマシンインタフェース (HCI) の領域で関連する研究は数百、より広い心理学の分野ではおそらく数千の研究結果が発表されている。 HCI にフィッツの法則を適用した最初の例は 1978年の Card、English、Burr (1978)によるもので、1⁄bで定義される性能評価値(IP)を用いて入力装置の性能を比較し、マウスが最も成績が良いとの結果を示している(Stuart Cardの経歴によれば、この結果は「ゼロックスがマウスを実用化した大きな理由の一つだった」 )。フィッツの法則は、入力する方法(手、足、頭の向き、視線など)、操作体(入力装置)、物理的環境(水中を含む)、母集団(若年者、高齢者、障碍者、麻薬摂取者)、といった非常に様々な条件に対しても適用できることがわかってきている。なお定数 a、b、IPはそれぞれの条件で異なる。 グラフィカルユーザインタフェースが発明されて以降、フィッツの法則はユーザーが画面上でマウスカーソルをボタンなどのウィジェットに移動する動作にも適用されるようになった。フィッツの法則はポイント・アンド・クリックにもドラッグ・アンド・ドロップのいずれもモデル化することができるが、ドラッグの場合には、ボタンを押しつつける筋肉の緊張が大きくなるため、移動が難しくなり IP は低下する。 もともとのフィッツの法則の厳密な定義では、 適用される対象は一次元の動作にのみであり、二次元の動作には対象としない(その後エイコット・ツァイの法則により、二次元の場合にも拡張された) 単純な運動反応(たとえば人間の手による)を説明するが、通常マウスカーソルの実装に用いられるソフトウェアによるカーソルの加速は考慮していない 訓練されていない動作が対象であり、数ヶ月、数年といった訓練後に行われる動作を対象としていない(フィッツの法則は、訓練が影響しないような非常に低いレベルから振る舞いをモデル化できると主張する研究者もいる) であったが、もし、一般的に言われるようにフィッツの法則がマウスの移動にも適用できるとすると、ユーザインタフェースの設計に下記の示唆を与える。 ボタンなどの GUI 部品はある程度の大きさがなければならない。小さいとクリックが難しくなる ディスプレイの隅や端にある要素( Windows XP 'Luna'テーマの「スタートボタン」や、 Mac OS X のApple & Spotlightメニュー)は、それ以上マウスを動かしても画面の端でありカーソルは動かない位置にいるため、無限の幅を持っていることになる。このため非常に操作しやすい ポップアップメニューは、ユーザーがマウスの移動させなくてすむため、プルダウンメニューより早く開くことができる。 パイ型に配置したメニューの要素は直線的に配置したメニューの要素よりも早く、ミスが少なく選択することができる。パイメニューは中心からの距離が全て等しく短い位置におかれ、また選択する楔形の領域は非常に大きい(通常画面の端まで拡大する)ためである。 フィッツの法則は、信頼できる人間-コンピュータの予測モデルの数少ない例である。近年、フィッツの法則から派生した Accot-Zhai のステアリング法則に基づくモデルがこれに加わった。
※この「成功と示唆」の解説は、「フィッツの法則」の解説の一部です。
「成功と示唆」を含む「フィッツの法則」の記事については、「フィッツの法則」の概要を参照ください。
- 成功と示唆のページへのリンク