心理的プロセス
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/01/18 14:14 UTC 版)
宗教認知心理学は宗教的思考と宗教的習慣の背後にある心理的プロセスを解明しようと試みる新たな研究分野である。この分野の先駆者である認知人類学者ダン・スペルベル、スコット・アトランの研究に基づく。二人は初めて、宗教的認識が(例えば思考や感情のような)実体のない領域について、印象的で記憶に止めるよう働く他の様々な精神的な適応の副産物であり、目的論的に働く人の心の産物ではないかと主張した。またアトランは宗教的概念が、人に生まれつき備わった現実世界を理解するための知識、素朴心理学(心の理論:他者にも意図があることを理解する)、素朴物理学(物理法則を理解する)、素朴生物学(生物と非生物を理解する)の産物であると推測している。 二人の研究に基づいてパスカル・ボイヤーは従来の宗教の起源に対する説明、つまり1.宗教は説明を与える。2.宗教は安らぎを与える。3.宗教は社会を形作る。4.宗教は認知的錯誤である。の4つを検討した。ボイヤーの視点によれば、1.人は必要があって説明するのであって、説明を与えたいという情動に突き動かされて説明するのではない。またどんなことでも説明されるわけではない(例えば何故罰が当たったのかは説明の対象になっても、神は具体的にどのような方法で罰を当てるのかは疑問視されない)2.宗教自身が恐怖を煽ることは珍しくない。3.必要性があることと、制度が作られることは同じではない。4.全ての突飛な概念が受け入れられるわけではなく、受け入れられやすい概念とそうでない概念は区別できる。このような従来の説明は、宗教の理解に役立つが、起源の説明としては十分ではないと指摘した。 宗教的概念はすこしだけ現実世界の通常の法則(特に素朴物理学や素朴心理学)を侵害する。ボイヤーとジャスティン・バレットの実験では、全能の神を説明するよう求められると、祈らなければ思いが通じない、同時に一つの行いしかできないというように、人々は全能の神であっても人間からかけ離れた存在として想像しなかった。そのようなわずかなありえなさが人の心に忘れがたいという印象を与えるのだとボイヤーは考え、神学的妥当性(PCにちなんでTC)と名付けた。宗教概念はミームとして人の心で作り出され、受け継がれていき、その過程でより忘れがたく受け入れられやすい(TCとしてより妥当な)概念は頻度を増してゆく。 ボイヤーは宗教の様々な成分、儀式や超自然的概念、規範の指示、葬儀や死への説明などについて、それぞれが異なる認知能力に根ざしており、異なる起源を持ち、したがって現在見られる宗教の起源を説明する単一の理論は存在しないと述べている。
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