後期・現代アンサンブル
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/16 09:17 UTC 版)
「ファゴット」の記事における「後期・現代アンサンブル」の解説
古典派後期の近代的な管楽器セクションの形成、特にバセットホルンの代わりにより小型のクラリネットが優勢になったことで、管楽器セクションでは高音木管楽器が優勢となり、バスクラリネットといった低音の補助楽器はまだ含まれていなかった。したがって、管楽器セクションのためのスコアリングは、ファゴットはしばしばベートーヴェンの交響曲のコラールでのように、バスとテナーの両方としての機能を持たせた。このように、ファゴットは古典派時代からロマン派時代にかけて、低音としての機能を維持しながらも、特にソロでは叙情的なテナーとしても使用されるようになった(弦楽器におけるチェロの扱いに幾分沿っている)。この時期にコントラバスーンが導入されたことで、ホルンのより低音部を使った作曲や金管の低音部の拡張とともに、ファゴット(特に首席奏者)が低音としての役割を果たす必要性も緩和された。この頃から楽器の機構がますます洗練されてきたことで、より高い音高をより容易に、より表現力を持って出せるようになり、オーケストラの作曲でもファゴットのソロが頻繁に組込まれるようになった。 ロマン派の時代に完全に確立された現代交響楽団では、通常2本のファゴットが必要とされ、3人目がコントラバスーンを演奏したりあるいはコントラバスーンを重ねたりすることが多い。作品によっては4人以上の奏者が必要な場合もあるが、これは通常、より大きな力と多様性のためである。1人目の奏者は、ソロのパッセージ(走句)を演奏するために頻繁に要求される。ロマン派以降の様式では、ファゴットの幅広い特徴による多用途性によって、作曲家や国の文化、そしてどう使うかという見解に応じて、多様な様式で曲に組み込まれた。ファゴットは、モーリス・ラヴェルの『ボレロ』といった叙情的な役、チャイコフスキーの交響曲といった声楽的(かつしばしば哀調を帯びたあるいは物憂げな)役、ショスタコーヴィチの9番でのような苦悩に満ちた哭声、『ピーターと狼』のおじいさんの主題のようなより滑稽な個性、『幻想交響曲』の後ろの楽章でのような不吉で暗い役などに使われてきた。 その俊敏性から、『フィガロの結婚』序曲の有名なランニングライン(ヴィオラとチェロとの重奏)といったパッセージに適している。オーケストラにおけるファゴットの役割はロマン派時代からほとんど変化していない。バスおよびテナーとしての一般的な役割が主で、20世紀の拡張したテッシトゥーラでは時にはアルト(カウンターテナー)音域も担う。ファゴットはしばしばチェロパートやコントラバスパートと重ねられ、フレンチホルンと一緒に和声を支える。 ウインド・アンサンブルは大抵2本のファゴットと時にはコントラファゴットを含み、それぞれが独立したパートを担う。より大編成のウインド・アンサンブルでは、ファーストファゴットおよびセカンドファゴットをそれぞれ複数の奏者が担当する。より単純な編成では、ファゴットは1パートのみ(複数の奏者のユニゾンで演奏されることもある)で、コントラファゴットパートはない。コンサート・バンドにおけるファゴットの役割はオーケストラにおける役割と似ているが、編曲が厚い時は、音域が重なる金管楽器に隠れて聞き取れないことも多い。ハーバート・オーエン・リードの『メキシコの祭り』はファゴットを目立つ形で取り上げているマルコム・アーノルドの『4つのスコットランド舞曲(英語版)』の吹奏楽編曲版も同様であり、この曲はコンサート・バンドの定番曲となっている。 ファゴットは、フルート、オーボエ、クラリネット、ホルンとともに、標準的な管楽五重奏の一部である。他の木管楽器との様々な組み合わせで演奏されることも多い。リヒャルト・シュトラウスの『二重小協奏曲』では、ファゴットをクラリネットを協奏曲楽器として組み合わせている。また、「リード五重奏」と呼ばれるアンサンブルにもファゴットが使われる。リード五重奏は、オーボエ、クラリネット、サクソフォーン、バスクラリネット、ファゴットで構成される。このような小編成のアンサンブルでは、ファゴットの低音機能がより求められるが、(ファゴットのトップオクターブと低音域のホルン編成がより頻繁に採用されるようになった)20世紀以降のレパートリーでは、ファゴットの編成では、『夏の音楽(英語版)』のような基礎となる作品に見られるように、より小型の木管楽器と同じ俊敏さで(そして多くの場合、同じ音域で)演奏することが求められることがある。 ファゴット四重奏も近年人気を集めてきた。ファゴットは音域が広く、音色のバリエーションが豊富なので、同種楽器とのアンサンブルに適している。ピーター・シックリー(英語版)の『バイロイトの最後のタンゴ』(『トリスタンとイゾルデ』の主題に因む)は人気のある作品である。シックリーの架空の分身であるP. D. Q. バッハの四重奏曲『Lip My Reeds』では、よりユーモラスな側面を利用しており、ある場面ではリードだけで演奏することが要求される。また、第4ファゴットパートの前奏部の最後に低いAが要求される。この曲は、第1ファゴットが演奏しないように書かれている。その代わり、第1ファゴット奏者の役割は第4ファゴットのベルに延長管を付け、その音を演奏できるようにすることである。
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