州都の位置
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/12 05:11 UTC 版)
道州制を採用した場合、その域内のどこかの都市に州政府や議会が置かれることになる。この都市が「州都」である。州都をどこに置くかについては、その地域内のいくつかの都市で熾烈な誘致合戦がおこなわれることがありうる。当該地域内の最大都市は自らが州都となることが当然だとみなすのに対して、当該道州の他都市にとっては、最大都市への集中が進むことは自らの地域が衰退することにつながりうるからである。州都をどこにするのかという問題は、州の範囲をどうするかという議論に密接に関わってくる。 上述のように、州都の第一候補としてはその地域の最大都市が挙げられることが多い。しかし、地域の均衡ある発展のためには州都は必ずしもその域内の最大都市でなくてもよいという議論や、むしろまったく新しい都市を州都にすべきであるという議論、人口よりも地理的な中心性を重視すべきであるという議論もでている。アメリカ合衆国の場合、各州の州都は歴史的な事情によって定められているために、必ずしも現時点における当該州の最大都市が州都とはなっていない。たとえば、アメリカ最大の都市であるニューヨーク市はそれが所在するニューヨーク州の州都ではなく、同州の州都は人口10万人足らずのオールバニ市である。カリフォルニア州の州都はロサンゼルス市でもサンフランシスコ市でもなく、それよりも遥かに規模の小さなサクラメント市である。 上記「11道州」案や「13道州」案における「北陸州」では、新潟県、富山県、石川県、福井県がその範囲として想定されているが、その場合の州都の候補としては石川県金沢市(人口約46万人、中核市)や新潟県新潟市(人口約81万人、政令指定都市)や富山県富山市(人口約42万人、中核市)が挙げられている。金沢が歴史的ないし地理的に北陸地方の中心都市であるという自負があるのに対して、新潟は金沢より人口規模が大きい上に北陸地方唯一の政令指定都市である。富山では4県の中心に近くなるが他の2市に比べて都市の規模が小さいという欠点もある。新潟では、もし北陸州の州都が金沢となるのであれば、新潟は北陸州から離脱して単独の「新潟州」という案も提唱されている。 「中国州」または「中国・四国州」の場合、州都の候補としてはまず、その域内の最大都市である広島県広島市(人口約111万人、政令指定都市)が挙げられる。しかし、この地域には広島以外の政令指定都市として岡山県岡山市(人口約72万人、政令指定都市)が存在しており、中国・四国地方を一体としてとらえた場合、岡山の方が交通の拠点性が高い。このため「中国・四国州」の州都としては岡山が相応しい、とする案が提唱されている。 「近畿州(関西州)」の場合、その域内の最大都市は大阪府大阪市(人口約260万人、政令指定都市)であり、たとえば大阪市長橋下徹は「近畿州(関西州)」の州都は大阪市であることを大前提として道州制構想を語っている。しかし、この域内には京都府京都市(人口約147万人、政令指定都市)、兵庫県神戸市(人口約154万人、政令指定都市)、が存在している上に、それぞれが独自の歴史性・文化性 と経済圏を持っている。それらの地域では、大阪が「近畿州(関西州)」の州都となることを大前提とする道州制そのものについての慎重論が根強い。 東北地方の場合、上記「9道州」案と「11道州」案では青森県、岩手県、秋田県、山形県、宮城県、福島県を範囲とする「東北州」が考えられている。その場合の州都の第一候補としては、域内唯一の政令指定都市である宮城県仙台市が挙げられる。しかし、青森県、岩手県・秋田県では仙台一極集中が進むことを警戒し、むしろその3県だけの「北東北州」案を推すべきであるという議論がでている。 九州地方の場合、福岡県、佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県を併せてひとつの州とする考え方が提示されている。現在、有識者等の間で州都の第一候補として話が持ち上がっているのが、地理的に九州のほぼ中心に位置する熊本県熊本市(人口約74万人、政令指定都市)である。これには域内の最大都市であり、九州全体の産業の中心地である福岡県福岡市(人口約150万人、政令指定都市)への一極集中による九州南部の地価下落などを防ぐ役割があり、熊本県知事の蒲島郁夫は「文化や産業の中心である福岡市がニューヨークならば、熊本市は政治的機能の中心地であるワシントンD.C.にしよう」と発言した。しかし、州都は現在の九州の行政・政治・経済の中心地である福岡市にすべきとの議論も出ている。また、九州の交通網において東西軸と南北軸が交わり物流の拠点性が高い佐賀県鳥栖市、福岡県久留米市を中心とした地域や、災害等が少なく、州都としての都市機能が失われにくいとされる大分県大分市を州都にすべきという意見もある。
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