将来の進化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2018/04/29 10:11 UTC 版)
1993年の論文で、デヴィッド・ウォナコット、バリー・ケレットとデヴィッド・スティックランドは、この連星系をIa型超新星または激変星に変化する途上の候補であるとした。地球からの距離は約150光年であり、地球から最も近い既知の超新星候補となった。しかし、実際に超新星になるまでには、地球から相当の距離離れることになる。 将来のある時点で、ペガスス座IK星Aは核の水素燃料を使い果たし、主系列星を離れて赤色巨星に進化を始める。赤色巨星の外層は、それまでの半径の数百倍もの大きさになる。ペガスス座IK星Aの外層が伴星のロッシュ限界を超えると、白色矮星の周りにガスの降着円盤が形成される。主に水素とヘリウムからなるこのガスは、徐々に伴星の表面に積もり始め、質量転移によって軌道は縮み始める。 白色矮星の表面では、降着ガスは圧縮され加熱される。ある時点で、積もったガスは水素核融合が起きるのに必要な条件に達し、一部で熱暴走反応が発生する。熱暴走反応は、繰り返しの新星爆発(激変星)を誘発し、白色矮星の光度は、数日から数ヶ月の短期間に急激に数等級も明るくなる。このような星系の例としては、赤色巨星と白色矮星からなる連星系のへびつかい座RS星がある。へびつかい座RS星は、熱暴走に必要な水素が降着するたび、少なくとも6回の新星爆発を起こした。 ペガスス座IK星Bは、これと同じような過程を辿る可能性がある。しかし、質量が集積するためには、降着したガスのうち放出されるのは極一部だけである必要があり、そのため、サイクルごとに白色矮星は徐々に質量を増していくことになり、新星爆発が何度も繰り返すとしても、ペガスス座IK星Bの外層は成長し続ける。 白色矮星が新星爆発を起こさずに物質を降着させ続けることができる別のモデルは、近接連星の超軟X線源と呼ばれるものである。このモデルでは、近接する白色矮星への質量転移の速度は、表面で安定的な融合燃焼が維持できる程度で、降着した水素は熱核融合でヘリウムに変化する。このような超軟X線源は、質量が大きく0.5×106から1 × 106Kという高い表面温度を持つ白色矮星である。 白色矮星の質量が1.38太陽質量のチャンドラセカール限界に達すると、電子縮退圧力では支えきれなくなり、崩壊が始まる。核は主に酸素、ネオン、マグネシウムから構成されているため、崩壊した白色矮星は中性子星になる可能性が大きい。このような場合、恒星の質量の極一部が結果として放出される。しかし、核が炭素と酸素から構成されていた場合、チャンドラセカール限界に達する前に、増大する圧力と温度によって炭素燃焼が始まる。その結果、暴走核融合が起こり、短時間の間に恒星のかなりの部分を消費し尽くす。これは恒星中の物質の結合をほどくのに十分であり、Ia型超新星爆発が起こる。 このような超新星爆発は、地球上の生命に危機を及ぼす可能性があると一般に考えられているが、ペガスス座IK星Aは、近い将来に赤色巨星に進化するとは考えられていない。前記の通り、この恒星の太陽に対する空間速度は20.4km/sである。これは、1光年進むのに1万4700年かかる速さである。例えば500万年後には、この恒星は太陽から500光年以上遠ざかる。1000パーセク(3300光年)以内のIa型超新星爆発は地球に対して影響を与えうると考えられているが、地上の生命に深刻な悪影響を与えるのは、10パーセク(30光年)以下の場合である。 超新星爆発後、主星の残った残渣は、連星系だった頃の最後の速度で動き続け、最終的な相対速度は100から200km/sにも達し、高速星になる。伴星も爆発でいくらか質量を失い、その存在は広がる塵に隙間を生じ、その点から、1つの白色矮星に進化を始める。超新星爆発から生じた残差は、最終的に周りの星間物質と融合する。
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